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ワケギ和(あ)えに見る讃岐の旬

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸

column

2017.02.16

讃岐の食文化では、料理や季節に応じて同じ野菜でも品種を使い分けることがあります。例えばゴボウでは、秋から冬にかけての一般的なゴボウ、春の葉ゴボウ、初夏の新ゴボウと、季節を変えて異なるゴボウが活躍します。そして、もう一つ特徴的な素材がネギです。

讃岐うどんの薬味として活躍し、讃岐の食卓に欠かすことのできないネギ。しかし、シーンによって活躍するネギは少しずつ異なります。まず、うどんの薬味としてなくてはならないのは細ネギです。また、冬場には鍋物や煮込み料理に使う白ネギ(太ネギ)が活躍します。そしてもう一つ、早春の和え物になくてはならない食材がワケギです。

ワケギは主に西日本で栽培されているのですが、香川県のワケギ消費は意外と高く、西日本の中央卸売市場におけるワケギの取り扱いを比較すると、広島県に次ぐ大消費地であると考えられます。2月から3月にかけての早春に、高松市中央卸売市場で取り扱う野菜の中でワケギは独特の存在感を放っています。

ではなぜ早春にワケギが活躍するのでしょうか?大根、キャベツ、白菜、カブなどの冬野菜は、冬場にはしっかりと栄養を蓄えますが、春分が近づくと、春を感じ、花を咲かせる準備に入ります。しかし、その中で花を咲かせず、美味しさを蓄える野菜があります。それがワケギです。

また、ワケギを使った郷土料理では、下ゆでしたワケギとマテ貝などの貝類とを酢みそで和えた「ワケギ和え(ぬた)」が有名です。一昔前、瀬戸内海でも冬場は海が荒れるので禁漁期でした。春が近づくにつれ海は穏やかになり、沿岸の岩場や砂浜ではマテ貝などの貝類を採ることができました。また、白みそは、秋に収穫したお米を正月のために仕込んだ冬場の調味料です。早春に味の深みが増すワケギ、早春の貝類、そして白みそと、ワケギ和えとは早春の身の回りにある食材で構成されたこの季節を代表する郷土料理と感じて止みません。

青果物や魚介類は季節の影響を色濃く受け、季節ごとに流通する素材は変化します。これがまさしく食材の旬であり、季節により食材が変化することにより作り上げられる料理も旬が存在します。旬の食材により構成された、郷土料理の旬に思いをはせると、新鮮な味わいを感じられるのではないでしょうか。

ワケギ和え

【材料】
・ワケギ:1束
・長天:1本
・からし酢みそ
  白みそ:60g
  酢:大さじ2
  砂糖:30g
  練がらし:小さじ1/4

【作り方】
(1)沸騰した湯でワケギをゆがく。
(2)長天を5mmくらいに切る。
(3)ボウルにからし酢みその材料を入れてよく混ぜ合わせ、(1)(2)を和える。

ワケギは外見が青ネギによく似ていますが、食味的には生では強い辛さがあり、加熱すると甘く柔らかくなるという玉ねぎに近い食感があります。ワケギは、ネギと玉ねぎの一種であるエシャロットの雑種であることがわかっています。ネギと玉ねぎは種で増えていくのですが、ワケギは花が咲かず種ができません。根元が球根のようになっており、冬場に株が次々と分かれていきます。春の終わりに株を掘り上げて乾燥させ、その株を秋に植えるという方法で栽培されています。

(写真提供・レシピ参照:香川県農業経営課)

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

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