
250頭の乳牛を飼育する三木町の有限会社広野牧場は、代表取締役の広野正則さんが一代で築き上げた。年間を通して常時200頭から搾乳。生乳は四国内や京阪神へ出荷される。現在、息子の豊さんも経営に携わり、県内に約120戸ある酪農家の中で1、2といわれるまで規模を拡大している。
農業がしたい
農業短期大学校に進学、サラリーマン生活の後に1979年に創業。新しい命に次々と触れることに、子どもを育てるような魅力を感じて酪農の道へ。「始めるに当たっての不安は全くありませんでした。失敗するかもしれないと考えたこともなかったですね」と笑顔で当時を振り返る正則さん。しかし、創業してから17年間は1日の休みもなかった。生乳出荷枠の関係で、思うように牛の数を増やせない時代も。
96年、取引先会社と協力して食物残渣(ざんさ)を使った飼料を開発。参考にしたのは、技術水準が高いイスラエルの農業だ。牛乳の質や牛の繁殖状況などデータを基に改良を重ね、安定した品質で、栄養価の高い飼料を作り出した。それまでは配合飼料と牧草を使用していたが、一本化することで課題となっていた飼料の合理化と経費削減もクリアできた。
転換期の訪れ
軌道に乗っていた経営だったが、「広野牧場」の名前を長く残したいという正則さんの思いから、規模拡大に踏み切った。当時飼育していた乳牛は65頭。目標を200頭に設定し、スタッフの確保と売上を伸ばすため、再び奔走する日々へ。豊さんも就農を決意した。
「子ども心にも、父のことをよく働く人だなと思っていました。今でもそう思います。父の存在はプレッシャーです。どう越えていくか…」と豊さん。正則さんは「意欲のある人であれば、跡を継ぐのは誰でもいいと思っていました。でも、息子がやってくれていることで、精神的に随分楽になりました」と話す。親子の信頼関係が経営に良い影響を与えているようだ。
生きている実感

最初は「臭い」、「汚れる」などマイナスのイメージを抱いていた子どもも、最後には牛をなでて「また来るね」と言って帰っていく。「子牛が飲むためのものを人間が分けてもらっていることを知ってほしい。生きている牛と触れ合い、命を感じてもらえたら」と豊さん。
多いときでは年間1000人が訪れる。このほか、インターンシップの高校生や大学生も受け入れる。外部から多くの人がやって来ることは、スタッフにとっても良い刺激。言葉にして伝えることで自分の仕事を見つめ直し、誇りに感じるように。
将来は酪農家

ゼロから酪農を始めた正則さんは、これから就農する人を支援したいと考えている。いろいろな立場の人からアドバイスをもらえたり、情報を仕入れたりできるシンクタンクのような場を提供するのが目標だ。
来年の夏に向けて、生乳を使ったソフトクリームやジェラートの販売開始も目指している。いずれは独立した事業にすることが狙い。マーケティングや商品開発は本来の仕事と違う難しさもあるが、農業の新しいモデルを提案し、就農しやすい雰囲気作りに努める。
「『将来なりたい職業ランキング』に農業が入る時代が来れば」と笑い合う正則さんと豊さん。明確な経営プランと熱意があれば農業の未来は明るい。
広野 正則
広野 豊
有限会社広野牧場
- 住所
- 香川県木田郡三木町鹿庭215
- 代表電話番号
- 087-899-0555
- 設立
- 1979年
- 社員数
- 8人
- 事業内容
- 【酪農部門】
乳用牛(ホルスタイン)300頭、黒毛和種雄1頭、
子牛約50頭 年間出荷乳量2800t 堆肥販売
【和牛繁殖部門】
黒毛和種雌20頭
【交流部門】
農産物収穫、酪農・農産物加工体験、宿泊研修等
【飲食部門】
森の石窯パン屋さん leche(れーちぇ) パン製造・販売
森のジェラテリアMUCCA(ムッカ) ジェラート製造・販売 - 沿革
- 1979年/創業
1996年/施設整備など規模拡大
2001年/酪農教育ファームの認証を受ける
2010年/森の石窯パン屋さんle cheをオープン - 地図
- URL
- http://www.hirono-farm.com/
- 確認日
- 2011.09.15
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