アレルギー対応菓子で みんな笑顔に

禾 代表取締役 中條 淳子さん

Interview

2015.04.16

米粉のお菓子を届ける禾の皆さん。前列が中條さん

米粉のお菓子を届ける禾の皆さん。前列が中條さん

「禾(のぎ)」は穀物の総称を意味する。体調が悪い時、穀物に助けられたという感謝の気持ちから、中條淳子さん(44)は社名にそう付けた。

以前は東京や香川で総合商社の貿易業務や営業活動に携わっていたが、仕事に追われて体調がすぐれないことが多かった。

「カロリーのあるものさえ取っていれば大丈夫だと思っていました」。今思えば食事をおろそかにしていた。病院で過労だと言われ、仕事をしては体調が悪くなり・・・を何度も繰り返した。

『粗食のすすめ』という本との出合いが生活を一変させた。本にならって玄米を1カ月間食べると、体が軽くなったように感じた。「食べ物ってこんなに体に影響するんだ、食べ物にはそれぞれ何か機能があるんじゃないかと思いました」

東京のクッキングスクールで、玄米菜食を中心として、肉類、卵、乳製品を控える食事法「マクロビオティック」を学び始めた。
会社勤務の傍らお菓子作りをしていると、いつの間にかそれが仕事に。2009年にマクロビオティックの食事を提供するカフェをオープンした。「しばらくすると、お客さんにアレルギーのある人が多いことに気が付いたんです。禾では気にせず何でも食べられると言う人もいました」

アレルギーがあると食べるものが制限される。みんなと同じものを分け合って食べることができない。その気付きが、アレルギーに関心を持つきっかけとなった。

ある時、サイズや飾り付け、材料に細かい指定のあるケーキの注文を受けた。なぜここまで詳細なのだろうと思っていると、後日「息子が初めて、友達と一緒にクリスマスケーキを食べられました」とお礼の連絡があった。アレルギー体質の息子は、幼稚園で配られるケーキが食べられず、毎年寂しい思いをしていたとのことだった。

みんなと一緒に同じようなケーキを食べたい。一見ささやかにも思える願いだが、その実現は一組の親子にとって大きな喜びとなった。それは中條さんにとっても同じだった。「待っている人がいると思うと頑張れます。嘘をつかず実直に。人の思いに反するものは作りたくありません」

11年3月に東日本大震災が起きた後、何かできればと焼き菓子を被災地に送った。すると、小麦アレルギーの子どもが食べられるものはないかと問い合わせがあった。子どもたちが分け合えるお菓子を作ろうと、アレルギー対応の菓子製造に取り掛かった。

お菓子作りに専念するためカフェは休業。わずかでもアレルゲンの混入があってはならないと、細心の注意を払う。「日本人の主食は昔からお米。体に合うはずだし、私自身がお米に力があると信じているので、米粉のお菓子を作りたいと思いました」

「SWEETS AID(スイーツエイド)」が禾のお菓子ブランド。香川県産の米粉を使い、小麦粉、卵、乳製品は不使用だ。クッキーやパウンドケーキを販売しており、禾のオンラインストアや百貨店、土産物店で購入できる。

3月にはかがわ物産館「栗林庵」とコラボレーションしたクッキー「つまんでみまい」が誕生したばかり。4月からの新商品は「おこめケット」という、おいでまいで作ったビスケットだ。どこか懐かしいような素朴な味わいで、また食べたくなる。さらに高松市内で新工場を稼働し、生産能力のアップを図る。

「笑顔の輪の中心に、お米のお菓子があったらうれしい」。厳選した材料で作ったおいしいお菓子を、アレルギーのある子もない子もみんなで分け合って食べる。それが中條さんの理想だ。

中條 淳子 | ちゅうじょう じゅんこ

1970年5月 高松市生まれ
2008年6月 リマ・クッキングスクール師範科 修了
2009年10月 家庭菜食料理「禾 nogi cafe」オープン
     (2011年よりカフェ休業)
2010年1月 株式会社 禾 設立
写真
中條 淳子 | ちゅうじょう じゅんこ

株式会社 禾

住所
香川県高松市磨屋町10-4
代表電話番号
087-802-3431
設立
2010年
社員数
5人
事業内容
小麦粉・卵・乳製品を使わない米粉を主原料とした植物性原料のみ使用のアレルギー対応菓子製造
地図
URL
https://www.nogi-info.com/
確認日
2015.04.16

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