日本の文献に「胡瓜」が登場するのは十世紀なのですが、江戸時代末期まで重要視されていませんでした。『高松松平家博物図譜 写生画帖 菜蔬』をめくっても、同じウリの仲間として「ウリ」や「フクベ(ヒョウタン)」は数多く描かれているものの、キュウリは「しろきうり」(表38)と「きうり」(表39)の2枚のみ。しかもその姿も、私たちが店頭で見かけるような緑色で細長いキュウリとは異なり、ヘチマのような太い姿で描かれています。
これは当時の食文化が大きく影響しており、ウリやキュウリは、糠漬けや粕漬として加工されていたため、このような大きく熟した状態で利用されていたものと考えられます。
その後、江戸時代末期には収穫期が早いということで栽培が奨励されます。明治時代には、全国各地で地域色豊かな様々な品種のキュウリが栽培されました。
しかし、近年はサラダなどの生食としての利用が増加し、全国で流通するキュウリのほとんどが、前段にもある緑で細長いものとなっています。江戸時代末期から明治時代にかけてキュウリ栽培が奨励されたことは、「加賀太キュウリ(石川県)」に代表されるような伝統的な野菜にその名残が見られます。
野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん
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