讃岐の食と酢

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸

column

2016.07.21

キュウリの酢の物

キュウリの酢の物

半夏生(7月1日頃)が過ぎ、讃岐路の田植えが終わり、本格的な夏がやってまいりました。毎日が非常に暑くなり、キュウリ、スイカ、メロンなど、水分が多く、暑さの中に涼を感じさせるさっぱりとした食べ物が欲しくなります。そして、素材だけでなく食卓も夏のものへと変化します。

讃岐を代表する寿司料理が非常に甘いため、讃岐の料理は甘いという印象がありますが、実は統計的には高松市の「砂糖」「酢」「しょうゆ」の購入額が突出しており(総務省統計局の家計調査)、甘さだけでなく、酸味、塩味のバランスがとれた深い味わいであることが分かります。季節ごとに収穫される大量の食材を飽きずに食べ続けるため、地元の豊かな調味料を使いこなす文化が発達したのでしょう。現代においても、ケチャップやマヨネーズ、ドレッシングなどの調味料の購入額は少ないことがそれを物語っています。

さて、この季節の郷土料理である「三杯酢」や「キュウリもみ」には、「酢」の存在を忘れてはなりません。酢は讃岐の食卓において重要な位置を占める調味料で、冬から夏にかけて活躍します。しかし、季節により味の調合は変わり、夏場の料理は酸味を効かせた味、一方冬場の「ワケギ和え」「てっぱい」などは白みそを多用するため酸味と甘みとのバランスがとれた味になります。また、一般流通している米酢だけでなく、夏場の梅干しを漬けた時にできる梅酢、そして、冬場の柑橘酢、特にダイダイの活用など、酸味を持つ食材を使いこなします。食材だけでなく、料理に使う調味料のバランスや風味からも、季節感を強く感じることができます。

香川県は、調味料に恵まれた県で、昔ながらの方法で作られた調味料を、日常的に購入することができます。酢についても、高松市仏生山町と三豊市仁尾町に200年を超す醸造蔵があり、江戸時代から変わらぬ方法で生産がおこなわれています。

古来より、酸味の効いた料理は、夏を乗り切るために必要不可欠なもの。その代表である「三杯酢」「キュウリもみ」に、夏の薬味である大葉、ミョウガ、新生姜等を合わせるなど、讃岐の夏の素材を凝縮した食卓で夏を乗り切ってください。

小魚の三杯酢

夏になると豊富に水揚げされるアジなど瀬戸内の小魚を使った三杯酢は、夏を代表する郷土料理。油で揚げるのではなく、焼いた魚を使うのも讃岐の料理の特徴です。焼きたての小魚を三杯酢に浸すだけで、保存性に優れた夏の味覚となります。

■三杯酢の配合
・酢:1/2カップ
・砂糖:50g
・しょうゆ:70cc
・だし汁:50cc(酸味がやわらぐ)
・塩:少々
(配合は「香川県HP」より)

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