10年間手を付けられなかった家に、やっと重い腰を上げたお客様にアドバイスをすることになった。公認不動産コンサルティングマスターは不動産の相続対策だけでなく、ありとあらゆる相談に乗り提案をする。同じケースは一つとしてない。共通の悩みは「家」。そこには思い出という荷物が詰まっている。だから簡単には決められないし、片付かない。作業を始めても、畳の下の古新聞を見つけただけで家族の手が止まる。お客様が思い出にふけっている間は待つしかないのだ。その家族にとっての良き決断を待つのも仕事である。
「家」はいろんな名前で呼ばれてきた。人が住むまでは「建物」。住めば「住宅」「マイホーム」。法務局の登記は「居宅」である。長年使ってきた「家」も、家族が巣立っていくたびに「空家」に近づいてくる。空き家も財産に変わりないと思っている方も多いが、2014年11月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が成立し、高松市では翌年10月に条例が施行された。
確かに空き家は個人の財産だが、公益上必要な措置等を行政が講じることができるようになった。そのまま放置しておくと倒壊や衛生上有害となるおそれから「特定空家」と呼ばれるようになり、最悪の場合は固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外され、行政執行までされうる。
高松市には約5,800戸の「空家等」と約935戸の「特定空家」がある。香川県全体でみると、総住宅数47万戸のうち8万戸が空き家で、空き家率は全国5位と高い。これはもう他人事ではない。
人に「人生」があるように、「家」にも"一生"がある。それを決めるのは住んだ人、持主以外の誰でもない。思い出が詰まった「家」の"終活"を、家族が元気なうちに話し合って決めることが、「空家等」「特定空家」にしない唯一の方法だ。家族(子どもたち)に範囲を決めて権限を託す「家族信託・民事信託」も一案だと思う。借家・民泊・シェアハウス・ゲストハウスなどの選択肢もある。県や市町では空き家バンクや移住ナビで空き家活用を呼び掛けている。
家族で考え、行動すれば「家」の運命はいくらでも変えられるのだ。
リアル・ピット株式会社
宅地建物取引士 リアル・ピット株式会社 代表取締役 金森 幹子
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