
高松市内の蜂場で生産者と
岡本裕介さん(38)は、2018年4月に「食の劇場」を立ち上げた。事業は財務分析や営農計画作成など農家の経営支援をメインに、農産物の販売、生産者と消費者が交流するイベントの開催を手掛ける。生産者と消費者をつなぎ、ステージの役割となって、食材を輝かせたいという。食卓を劇場のように楽しいものにしたいとの思いも、屋号に込めた。

さぬき市津田のふるさと海岸で開く「讃岐朝市」は、生産者に声をかけ銀行員時代に始めた
2008年、高松支店に赴任。11年3月の東日本大震災では職場のビルも揺れた。大きな地震だったため、テレビで被害状況を確認した。「春野菜の準備をしている畑やビニールハウスが次々と津波に飲み込まれて、見ているのがつらかった」。農家の人たちのことを思うと、涙が止まらなかった。「大変なことが起きたとき、転勤族の自分は継続的な支援ができない。そう思うと寂しかったですね」。妻の地元が香川だったこともあり、退職してとどまることを決めた。
転職した百十四銀行でも、農業者が生産から加工・販売まで手掛ける6次産業化や農商工連携など農家の経営支援に携わった。自分も農家の人たちもお互いに納得のいくところまで、組織ではなく自分の判断基準で仕事がしたいと、昨年独立した。

昨年のミカン狩りイベント
アドバイスする農業者には生産にかかる原価を理解してもらい、赤字にならないようきちんと価格交渉できる経営者を目指してもらう。決算や人事労務、企業法務などを学ぶサポートをし、販売価格や数量などの売り方を提案。販路開拓など岡本さんも実際に販売を手伝い、売上に貢献する。「僕が必要とされなくなることが、仕事のゴールですね」。経営におけるプロデューサ一のような役割を果たすため、親しい経営者のすすめもあり肩書は「農業プロデューサ一」に。
「農家に生まれたわけじゃないのに、自分はこれだけ農業に魅了された。だから、現場を見てもらえれば必ず伝わるという確信があります」。親子などを対象に畑で農業者の仕事を体験し、野菜や果物を味わってもらうイベントを定期的に開催している。
鎌田 佳子
岡本 裕介|おかもと ゆうすけ
- 略歴
- 1981年 岡山県岡山市生まれ
1999年 岡山県立岡山芳泉高校 卒業
2003年 香川大学 卒業
農林漁業金融公庫(当時) 入庫
2012年 百十四銀行 入行
2018年 食の劇場 立ち上げ
食の劇場
- 設立
- 2018年
- 事業内容
- 農家の経営支援、商品開発、イベント開催など
- URL
- https://www.facebook.com/shoku.theater/
- 確認日
- 2019.11.02
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