日本では、不動産投資と言えば、一般的に債券型REIT(リート)を思い浮かべる。海外の現物不動産売買(個人)はまだまだ身近ではない。ところが反対に、外国人は盛んに日本国内の土地、重要な地域の土地でさえも自由に取得している。不動産売買に関する日本のルールは、いったいどうなっているのだろうか?
日本では大正14年4月1日に外国人土地法ができ、勅令により国防上必要な地区を指定して、外国人や外国法人による土地の取得を制限していた。戦後間もなくこの勅令が廃止され、外国人に対する日本国内の土地取得の法制度が止まった状態である。日本の主権を免れるものではないが、外国人にも日本の国内の土地に関する権利、特に所有権は憲法で保護されている。
では、問題ないと思う人も多いと思うが、不動産会社の立場で見ると、話は複雑だ。土地の持ち主が外国にいて連絡がつかないなんてことになると大事だ。書類に署名押印(実印)が必要な隣地との境界確定等は難しい。相続が発生したら、日本で言う相続法、戸籍法のない国もあるから、いったい誰と話をすればいいのか分からない。隣地との境はもはや『国境』になっているのだ。
土地だけではない。今、日本ではメガバンクが、永住者限定との条件を外し、外国人向け融資の住宅ローンを販売している。そこで、東京都心の高級マンションが買われている。ビザ発給要件の緩和もあり、お隣さんとしてのお付き合いが既に始まっている。
世界共通の常識や当たり前はない。日本の慣習や行政上の細かなルールは、外国から来た人たちには理解しがたいこともあるだろう。文化の違いからトラブルになることもあるかもしれない。
今、日本では120年ぶりの民法改正に向けて少しずつ進んでいる。不要なトラブルを招かないためにも、不動産売買に関する新たな仕組みとして、決済保全制度(エスクロー)などを考える時が来ているのかもしれない。
宅地建物取引士 リアル・ピット株式会社 代表取締役 金森 幹子
- 写真
おすすめ記事
-
2017.04.20
人生の決算書
宅地建物取引士 リアル・ピット株式会社 代表取締役 金森 幹子
-
2016.10.20
街を創る
宅地建物取引士 リアル・ピット株式会社 代表取締役 金森 幹子
-
2016.07.21
「家」の運命
リアル・ピット株式会社 代表取締役 金森 幹子
-
2023.08.17
国際交流のすすめ
日本銀行高松支店 支店長 大塚 竜
-
2017.07.20
FLY HIGH!
株式会社菱屋 代表取締役社長 植村 暁美
-
2017.05.18
二十歳のアメリカ一周一人旅
前・四国地方整備局長 名波 義昭
-
2023.07.06
中小企業が今、海外展開を考えるべき理由
経産省の上田氏が基調講演
-
2022.09.01
韓国の変化 日本の選択 -外交官が見た日韓のズレ
著:道上 尚史/筑摩書房
-
2020.11.05
三頭の虎はひとつの山に棲めない
日中韓、英国人が旅して考えた著:マイケル・ブース 訳:永峯 涼/KADOKAWA
-
2019.01.03
アメリカ
著者 橋爪大三郎・大澤真幸/河出書房新社
-
2018.10.04
人手不足解消へ ベトナムと日本の懸け橋に
トクシングループ 代表 小林 有二さん