二十歳のアメリカ一周一人旅

前・四国地方整備局長 名波 義昭

column

2017.05.18

十代のころ、私にとってアメリカ合衆国は憧れの国であり、いつか行ってみたいと思っていた。1980年、二十歳の夏に生まれて初めて飛行機に乗り、アメリカに向かった。北米大陸を40日間バスで一人旅するためである。Tシャツ、ジーンズにバックパックで、宿の予約もなく、ガイドブック「地球の歩き方」だけが頼りであった。北米に路線網を有するグレイハウンドバスで、時計回りに一周することだけを決めていた。

最初の到着地サンフランシスコでは、ゴールデンゲートブリッジの構造美に感動した。そこから北上し、シアトルを経てカナダに入り、バンクーバーから氷河やエメラルドグリーンの氷河湖を見ながらカナディアンロッキーを横断した。デンバーからシカゴへ向かう車中からの眺めは、地平線まで一面トウモロコシ畑であった。ニューヨークでは、ワールドトレードセンターの屋上から摩天楼を見渡した。落書きだらけの地下鉄でヤンキースタジアムに行き、大リーグの試合も観戦した。

後半は、夜行バスに3連泊して安ホテルに1泊という強行軍を続けた。グランドキャニオンでは谷を途中まで下り、へとへとになって戻ってきた。峡谷の向こうに日が沈み、静寂の中で美しい夕焼けとなった。

途中、国境付近のメキシコの街にも二度入った。最終目的地はロサンゼルスであったが、そこからサンフランシスコまで往復し、完全に閉じた一周とした。

この40日間の旅は、今でも脳裏に焼き付いていて鮮明に思い出される。前を向いて進んでいけば何とかなるという大きな自信にもなった。

1997年には、英国の水管理を担う政府機関に半年間派遣の機会を得た。到着の翌日がダイアナ元妃の葬儀であった。当時、英国内ではdevolution(権限委譲)ということでスコットランド議会の設立が議論されていた。

2008年には、国土交通省の国際担当となり、国際協力や本邦企業の海外展開支援にあたった。国連本部で日本の水政策についてスピーチしたこともある。アジアを中心に世界各国を訪問し、これまでに訪れた国は5大陸54カ国になる。

今後、アメリカはどうなっていくのだろうか。英国では、EU離脱に向けた交渉が始まろうとしている。世界の動きは激しいが、その動きを見極めていく必要がある。また、これからの時代を担う人には、若いうちに海外を肌で感じ、世界でも活躍することを期待する。

前・四国地方整備局長 名波 義昭

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前・四国地方整備局長 名波 義昭

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