一番身近なスーパーへ
未知の領域に挑む

あなぶきグループ ジョイフルサンアルファ 社長 近藤 陽介さん

Interview

2019.01.03

スーパー「ジョイフルサン」木鉢店で=長崎市木鉢町

不動産大手のあなぶき興産が長崎県でスーパーマーケットの再建に乗り出している。2016年、長崎市の老舗スーパー「ジョイフルサン」から事業を譲り受け、現在10店舗を展開。近藤陽介さん(42)が舵取りを担う。「あなぶきグループは不動産開発や管理などの『住』が柱。将来、『食』を次の柱に育てたいと思っています」

1999年にあなぶき興産に入社。九州地区での不動産開発の責任者だった2014年、経営難に苦しむジョイフルサンの再建計画が持ち上がったのが始まりだった。「我が社は、実は不動産を買うだけの予定だった。でも、スーパーの買い手がなかなか決まらず、『土地だけじゃなく、スーパーの立て直しもお願いしたい』という話になって・・・・・・」

スーパーの運営はグループにとっても未知の領域。不安は大きかった。恩師からは「地域の人に変に期待を持たせるより、ひと思いに店を閉じてしまった方がいいんじゃないか」と忠告された。しかし、近藤さんには勝算があった。「ほぼ全ての店舗が、世帯数が増えている人口集積地のど真ん中にあるなど立地がとても良かったんです」

不動産開発というグループの強みを生かしながら地域の課題を解決する。「『地域社会に生かされ生きる』をビジョンに掲げる我が社にとって大義あるチャレンジになる、と覚悟を決めました」。16年、ジョイフルサンを運営する新会社ジョイフルサンアルファを設立、初代社長に就いた。
従業員たちと=長崎市相生町の大浦店

従業員たちと=長崎市相生町の大浦店

目指すのは「長崎で一番身近なスーパー」。第一歩として「人財づくり」に力を注ぐ。「『笑顔と会話あふれる温かい売り場を創る』『妥協なき鮮度と品質を届ける』など、まずは“お客様との10の約束”を掲げました」。女性社員によるプロジェクトチームをつくり、お客さんから意見を募るモニター制度も始めた。根底にあるのは、あなぶきで培った「利は元にあり」の精神だ。「“元”とはスーパーで言えば商品、不動産だと土地の立地、そして、それらを扱う人財のこと。スーパーも不動産も“元”が大切なのは同じです」

会社を率いて2年半。徐々に従業員の意識も変わってきたと近藤さんは目を細める。「とにかく地域密着。各店舗500m商圏のマーケティングを徹底し、お客さんの期待に応えられるスーパーになりたいと思っています」
住吉店の完成予想図

住吉店の完成予想図

今年、新たな試みに挑む。あなぶきグループとしても画期的な「マンションとスーパー、『住』と『食』の融合」だ。現在閉鎖している長崎市の住吉店を、117世帯17階建てのマンションに再開発、同じ敷地にジョイフルサンが入る。「部屋にダイレクトに商品を届けるなど、スーパーとマンションの住人が常に繋がっている仕組みを作りたい。不動産を扱ってきたからこそできる新たなビジネスモデルになると思う」

3年前、その住吉店が営業を終える場面に立ち会った。閉店後も200人以上の客が押し寄せ、「いつか絶対に再開させて」と涙ながらに叫んでいた。「こんな思いを二度と地元の人にさせてはいけない」。そう心に誓った。

「『食』はお客さんと接する頻度が高くて距離も近いと思うんです。何より、人を一番幸せにできる仕事なんじゃないかな」

篠原 正樹

近藤 陽介 | こんどう ようすけ

1976年 広島県福山市出身
1995年 広島県立福山誠之館高等学校 卒業
1999年 神戸学院大学法学部 卒業
    穴吹興産株式会社 入社
2006年 マンション事業本部 鹿児島営業所長
2013年 あなぶき興産九州株式会社 取締役
2016年 株式会社ジョイフルサンアルファ
    代表取締役社長
2017年 穴吹興産株式会社 取締役

株式会社 ジョイフルサンアルファ

住所
長崎県長崎市滑石3丁目8-10
代表電話番号
095-857-1717
設立
2016年5月6日
社員数
437人(18年7月1日時点)
事業内容
スーパーマーケット事業及び生鮮加工センター運営
資本金
1000万円
株主
穴吹興産株式会社(100%出資)
地図
URL
http://www.joyfulsun.co.jp/
確認日
2019.01.03

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