従業員と家族が幸せを感じる会社に

ビッグ・エス 社長 岡田 達也さん

Interview

2018.12.20

ケーズデンキ高松本店の売り場で(高松市多肥上町)

ケーズデンキ高松本店の売り場で(高松市多肥上町)

自分で決めた“3年ルール”

全国に家電量販店を展開するケーズホールディングスのグループ会社で、中四国でケーズデンキを運営する「ビッグ・エス」は、長尾町で大坂無線電機製作所として創業。2代目社長は、全国に塾生をもつ経営塾「大坂塾」塾長でカリスマ経営者といわれる大坂靖彦さん。3代目社長は現在ケーズホールディングス常務取締役として、ビッグ・エスを後方支援している大坂尚登さんと、創業家が代々社長に就いてきた。
働きやすい職場をつくるのが私の使命

働きやすい職場をつくるのが私の使命

岡田達也さん(45)は、創業家以外から初めて4代目の社長に就任した。「私の書いた人生設計に『社長』の文字はありませんでした。ただ、当社は人材育成に力を入れていますから、従業員たちが店長、役員、社長とキャリアアップを目指すのに励みになればと思いました」

社長までは考えていなかったが、自身の新入社員歓迎会の時、靖彦社長の前で「3年で結果を出せなければ会社を辞めます」と宣言してしまった。だから、3年間は何があっても不平不満をいわず、すべてを受け入れてやってみようと決めた。どうしても納得できないことは、手帳に書き留めて1年の終わりに新しい手帳に書き写していく。「書き写す時に読み返すと、何に矛盾を感じていたのか頭の中が整理でき、自分の視野が狭かったから納得できなかったと気づくことが多いんです。その後も役割や役職、部署が変わるたびに最初の3年間を意識してきました」

ほかに心掛けていたのは、店舗のトイレ掃除や窓ふきなど手を抜きがちな仕事ほど一生懸命やることと、先輩がたくさんのことを教えたいと思うような後輩になること。「先輩は商品知識も経験も圧倒的に多い。話をするときは熱心に耳を傾けるような姿勢を心掛け、メモを取るようにしていました。だから、こいつには何を言っても大丈夫だと思って“余分に”いろんなことを教えてくれたと思います」

そんな日々を積み重ね、入社3年たつころには副店長になっていた。「今思うと若気の至りで生意気な宣言をしたと思います。結果が出たから辞めなくてすみました」

隣で働く仲間を大切に

社長として目指しているのは、歴代社長が話していた「従業員を大切にする会社」だ。「何も特別なことをするわけではありません。上司や仲間が自分に関心をもってくれていると感じると、人は大切にされたと思うでしょう?だから、積極的にコミュニケーションを取り、相手を知る努力をしてください。隣で働く人を大事にしてくださいと、従業員には何度も話をしています」

そう思えるのは、自身が販売員、店長、管理部門とキャリアを重ねる中で、先輩や仲間に助けられた経験があるから。初めてブライダル用家電一式という大きな契約を担当した時は、なかなか話がまとまらず、様子をみていた上司がかけつけてくれた。社長になった現在は、長年役員をしている先輩たちが経験をすべて教えてくれ、成功するよう助けてくれている。「取締役経験のない自分が何とか社長ができるのも、周りの人たちのおかげ。働く仲間を大切にする風土は、創業家や先輩が築いてきた財産だと思います」
プラチナくるみん認定式で

プラチナくるみん認定式で

2015年には、自身が管理部長の時から取り組んでいたことが実り、男女ともに育児休業取得を推進するなど、仕事と子育ての両立をサポートする企業として「くるみんマーク」を取得した。18年には、支援を継続的に行っている実績が認められ、県内3社目の「プラチナくるみんマーク」を取得した。

「働き方改革や女性活躍が求められている時代に、会社が取り組んできたことが評価されたことは非常にうれしい。今後も、従業員が働きやすい職場づくりに取り組みたいですね」

「また来たい」と思えるお店に

売り場での様子

売り場での様子

店長時代は売り場に入ると展示位置や価格、在庫のことなどが気になって商品を楽しむ余裕がなかった。社長になった今は、純粋に大好きな家電を見て「こんなのが出たんだ」とワクワクできるようになった。「モノからコト消費へ」といわれている今、そんな“ワクワク”を伝えられる売り場づくりに力を入れている。

「尚登社長がいつも話をしていたように、売り場にあるものは基本的にすべて電源を入れて体感できるようにしています。携帯ケースも自分の携帯を入れた時の雰囲気が見られるよう全種類パッケージから出しています」。自社でネット通販も手掛けているが、やっぱり実店舗で触ったり比べたりしたいというニーズは多いと考えている。

そんな人達がケーズデンキに「また来たい」と思ってもらえるために―。人材育成のほか、ケーズデンキ専用アプリ「あんしんパスポート」登録者へのサービス充実といったファンづくりにも取り組んでいる。

入社14年目のころ、何のために自分が店長をやっているのか考えたことがあった。このお店がなくなれば従業員もその家族も不幸になる。だから、お客さんに家電を購入してもらうことでお店を存続させていくことが自分の役割だと思った。社長になった今も、会社が永久的に続くために必要な売り上げは確保していく。「ただ、私が社長の間に売り上げがすごく伸びました、でも従業員と家族はあまり幸せではありませんでした、というのでは会社があっても意味がありません。ケーズデンキに関わるすべての人が幸せを感じる会社をみんなでつくっていきたいと思います」

石川 恭子

岡田 達也 | おかだ たつや

1973年 東かがわ市生まれ
1991年 香川県立三本松高校 卒業
1996年 芝浦工業大学 卒業
    (株)ビッグ・エス 入社
2011年 執行役員高知駅前店長
2013年 執行役員管理部長
2016年 代表取締役社長
2017年 代表取締役社長
    (ケーズホールディングス上席執行役員)

株式会社ビッグ・エス

住所
香川県高松市多肥上町1210
代表電話番号
087-888-7733
設立
1946年7月7日
社員数
1186人(うち臨時従業員663人)
事業内容
一般家庭用電化製品、パソコン、携帯情報機器等の販売、および付帯工事、修理、パソコン教室の運営
店舗数
ケーズデンキ40店舗、楽2(ラクラク)パソコン教室19店舗
資本金
2億5300万円
売上高
524億円
地図
URL
https://www.ksdenki.co.jp/big-s/
確認日
2018.12.20

株式会社ケーズホールディングス

住所
茨城県水戸市桜川1丁目1-1
代表電話番号
029-224-9600
設立
1947年3月
社員数
1万3893人(うち臨時従業員7257人)
事業内容
家庭電化製品並びに関連商品販売及び付帯工事・修理
資本金
165億4800万円
売上高
6791億円
店舗数
496店舗(直営:492店舗/FC:4店舗)
※ 2018年3月期連結情報
地図
URL
https://www.ksdenki.co.jp
確認日
2018.12.20

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