目的の観光地や食べ物もさることながら、移動中の車窓から眺めた何気ない風景や街並みが印象に残っている人も多いのではないだろうか・・・・・・。目的地に向かうだけの「旅行」よりも、ゆったりと流れる時間を楽しめる「旅」がいい。
「旅」好きの人は非常に多い。しかも、その楽しみ方は人それぞれだ。「そんなお客様に近い存在でありたい」と、「あなぶきトラベル」の取締役営業部長の三浦一也さんは話す。
お客様に喜んでいただける瞬間
1991年に立ち上がった「あなぶきトラベル」の前身の「穴吹トラベルセンター」。最近までは団体旅行や募集ツアー、それに他社のパッケージツアーを販売する「総合旅行会社」だった。
しかし、バブルがはじけると、当たり前のようにあった社員旅行は姿を消し、団体旅行も減った。結果、旅行会社のメインターゲットは個人旅行になった。独自の強みを持たなければ生き残っていけない。旅行会社の激しい競争が始まった。
「お客様の想いでづくり」のためのこだわり
まず、こだわったのはこの「食」だ。一般的に団体旅行では収容人数の多いドライブインなどが主流だった。しかし、最近の旅では「食」の質が求められた。ただ美味しい食事だけでは他社との差別化はできない。そこで三浦さんたちがこだわったのは「想いでに残る美味しい食事」だ。メインストリートからはずれた、県外の客がほとんど来ないような地元の人たちに人気の店を調べ、足を運んだ。そして交渉をして協力を取り付け、ツアーの中に組み入れた。こうした地道な努力の結果、「あなぶきさんの食事は美味しい」という評価が定着していった。
そしてもう一つが「出発保証」だ。現在、あなぶきトラベルで売り出されているツアーの約7割にこの「出発保証」が付いている。つまりこれは、「最少催行人員」の設定がなく、1人でも申し込みがあれば、必ずそのツアーは出発するというものだ。参加者が少なければ旅行会社のリスクは小さくない。実際、申し込み者2人というツアーもあったそうだ。それでも添乗員が同行しツアーは実施された。旅をしたいというお客様一人ひとりの気持ちを大切にしたサービスだ。
旅行会社としての選択
あなぶきトラベルでは、社員が自分で考えたバスツアーの企画を持ち寄って会議をする。この企画がほとんど実施されているという。申込者が少なかったりするリスクがあるのではと尋ねると・・・・・・
「失敗も経験しなければわからないですから、大切なのは経験を生かして自分でお客様が何を求めているか、しっかり考える事です」と三浦さんは言う。事実こうした中からヒット商品が生まれている。去年9月から実施されている「仏像シリーズ」だ。最近の仏像ブームと旅で教養を深めたいというニーズにマッチしたものだ。
「旅」をしたい人たちのために――
これまでは60~70歳代までの人がバスツアーの中心だった。一方で、旅はしたくてもトイレなどが心配で、諦める人も少なくはなかった。この「新・夢紀行号」は、潜在的なお客様にも安心して旅を楽しんでもらうことをコンセプトの一つとして導入したものだ。実施から約1カ月、狙い通りに申込者の約50%が70~80歳代となっている。
「お客様に満足してもらうために、決して手を抜かない集団でありたい」と三浦さんは話す。こうした取り組みがリピート率7~8割という結果につながっている。
新・夢紀行号
最大の特徴は、何といっても化粧室付のトイレ。通常45席のバスの最後列5席を取り外しトイレスペースとした。
広さは従来の3.4倍もある。4月29日から運行開始。
三浦 一也
株式会社穴吹トラベル
- 住所
- 香川県高松市兵庫町11-6 カーニープレイス高松兵庫町ビル4F
- 代表電話番号
- 087-823-1666
- 設立
- 2005年
- 社員数
- 17人
- 事業内容
- オリジナルツアー・個人旅行・団体旅行の企画と運営
- 沿革
- 1991年 穴吹トラベルセンター設立
1995年 自社企画 香川発着「穴吹ツアー」販売開始
2005年 株式会社 穴吹トラベル設立
2006年 自社企画 徳島発着「穴吹ツアー」販売開始
2007年 オリジナルバス 「夢紀行」号運行開始(香川)
2009年 オリジナルバス 「夢紀行」号運行開始(徳島)
2010年 オリジナルバス 化粧室付「新・夢紀行」号
運行開始(香川) - 資本金
- 1000万円
- 地図
- URL
- http://www.anabukitravel.jp
- 確認日
- 2010.06.03
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