
諏訪さんは、就任前から決まっていた事業、フルサービスのうどん店を倉敷市茶屋町に開店したが、失敗して15カ月後に閉店した。
「赤字の会社が、さらに大欠損を被りました」。会社がつぶれるかもしれない。危機感を持った諏訪さんは、セルフ方式のうどん店でもう一度やり直そうと考えた。
失敗から学んだ経営戦略

2000年3月 親会社に「うどん店フランチャイズチェーン事業計画」が承認されたが、人も資金も余裕はない。オオタプロデュース(株)にFC事業を委託してスタートした。さぬきうどんブームはまだ遠かった。
リベンジだ!
「東京、大阪へ進出するパイロット店を作ろう」。茶屋町店の失敗で泣いた元店長や岡山店を任される社員たちが、必死になって動いた。
「成功するしかないんです。2回目の失敗は許されませんから」。導入する厨房機器のサイズや処理能力を決め、どう配置すれば日商15万円以上、つまり1日350人以上のお客さんに入ってもらえるか。「機器と同じサイズの段ボール箱を何度も置き換えて、従業員とお客さんの動きを研究しました」
一杯190円
さぬきうどんブームが諏訪さんを追いかけてきた。不安視していた親会社も人材と資金を投入した。岡山駅店をモデルに、次は東京進出へ。
「190円は安すぎる」。業務提携先の(株)日本レストランエンタプライズ(JR東日本グループ)が反対した。「価格は譲れません」。2時間以上議論した。100円、200円、300円で同業者のH社が、同じ渋谷区内に出店するからと、説得した。
「讃岐のつゆ」上京
11日後の9月5日、渋谷区役所前にH社も出店した。連日テレビや新聞に取り上げられ、さぬきうどんブームが諏訪さんに追いついた。社長就任のとき3億7千万円の売り上げだった会社は、いま9億8千万円(2008年度見込み)になろうとしている。
梅原さんは、諏訪さんの著書「さぬきうどんや奮戦記」の「推薦のことば」に、こう書いた。「なんと、東京のど真ん中の恵比寿にさぬきうどん店をオープンしました。まさに諏訪君の執念が実った瞬間でした」
有難有楽(うなんうらく)

同僚や上司の何人かが倒れた。諏訪さんも胃潰瘍(かいよう)で血を吐いた。「精神的にやられるか、体がつぶれるか。心身ともに極限の状態でした」。ただ困難に背を向けて逃げたとだけは言われたくない。すこしでも早く退院して職場に戻ろうと思った。
「仕事人生の最下点でした。めりけんやでなんとかやれたのは、あの厳しい試練があったお陰です」
座右の銘は「有難有楽」。諏訪さん自身の言葉だ。「ありがとうは『有難う』と書くでしょう。めったにないことをしてもらったり、困難を乗り越えたりしたところに、喜びや楽しみ、それに感謝があると思っていましたので、それを表現しただけなんです」
諏訪 輝生
株式会社 めりけんや
- 住所
- 香川県綾歌郡宇多津町浜三番丁36-2
- 代表電話番号
- 0877-49-6111
- 社員数
- 183人
- 事業内容
- さぬきうどんの製造・販売(贈答・土産・景品・業務用など)、うどん店の経営・FC事業
- 資本金
- 1億5000万円
- 地図
- URL
- http://merikenya.com
- 確認日
- 2009.03.05
おすすめ記事
-
2023.06.15
自分もまわりの人も“ワクワク”することを
株式会社たまり 代表取締役 山内 麻由さん
-
2023.03.02
共感で広がった新たなファンの輪
さぬきシセイ 代表取締役社長 富田 安加里さん
-
2009.12.03
「さぬき」だけのものではなく日本の年中行事として定着させたい
「年明けうどん」さぬきうどん振興協議会
-
2010.05.20
みんなが元気になるうどん屋です
ウエストフードプランニング 代表取締役社長 小西 啓介さん
-
2013.07.18
「讃岐うどん」の概念打ち破る
こんぴらや販売株式会社 最高顧問 辻田 順一さん
-
2016.04.07
三代続く「日の出」の 看板を守りたい
日の出製麺所 代表取締役 三好 修さん
-
2016.11.03
「ふじめん」の ファンをつくりたい
藤井製麺 代表取締役 藤井 義文さん
-
2018.02.01
讃岐うどんを世界に発信したい
株式会社 さぬきシセイ 代表取締役社長 富田 安加里さん
-
2024.04.18
日本の麺文化を世界へ広げる
コンテンツビジネスの可能性株式会社大和製作所 代表取締役 藤井 薫さん
-
2021.04.30
国産小麦を丸ごと使ったうどん
石丸製麺
-
2021.04.04
光触媒で抗ウイルス・抗菌・消臭
ウエストフードプランニング
最新紙面情報
Vol.402 2025年03月20日号
楽しみながら自分を表現する
かがわ総文祭生徒実行委員会
未来の“きざし”を体感するイベント 「サニピッチ」開催レポート
サニピッチ2025
花あかり
Photo:T.Nakamura