「さぬき」だけのものではなく日本の年中行事として定着させたい
「年明けうどん」

さぬきうどん振興協議会

Interview

2009.12.03

今年も暮れる。12月は何かと気ぜわしい。クリスマスに、年賀状の準備、大掃除が終わったかと思うと年越しそばを食べながら除夜の鐘。そして初詣の後にはおせちと餡入り雑煮。1年を締めくくり新しい年を迎える新鮮な喜び、そしてそこには日本人が楽しみにしている食べ物がある。この中に「うどん」が新たに加わろうとしている。「年明けうどん」だ。正月に縁起のいい「うどん」を食べようというもの。これが一気に全国に広がりつつある。「年明けうどん」はブームではなく「さぬき」発の日本の年中行事を目指している。

2010年の正月も「年明けうどん」

白いうどんの上に、梅干、人参、かまぼこなど紅い食材をのせる。紅白に彩られたうどんを元旦から15 日までの間に食べるのが「年明けうどん」だ。昔から讃岐では祝い事には必ずうどんを食べる。「年明けうどん」は、こうした風習からスタートしている。

「バレンタインデーのように日本の年中行事にしたいんですよ」

株式会社おおみねの代表取締役社長で、さぬきうどん協同組合理事長の大峯茂樹さん(61)はその想いを話す。その「年明けうどん」が来年正月に向けて一気に盛り上がりを見せている。大手カップ麺メーカーが「年明けうどん」の名前をつけた商品を年末から全国発売する。さらに冷凍食品メーカーと、コンビニエンスストアの調理麺にも「年明けうどん」が登場する予定だ。わずか1年の間に、香川県内にとどまらず全国的な広がりを見せている。

「流通や食品メーカーにとって、これまで正月に売り出す強力な商材がなかったんですよ。ここに年明けうどんがはまったんです」と大峯さんは分析する。ただ、その背景には全国製麺協同組合連合会副会長でもある大峯さんや、「さぬきうどん振興協議会」の地道な活動があった。

「さぬき」だけのものにしない

2008年5月に開かれた「世界麺フェスタ2008inさぬき」。世界5つの国と地域に国内12道県の麺料理が集まり、高松市や善通寺市で開かれたイベントには、7日間の期間中に全国から23万人が訪れた。これをきっかけに香川県製粉製麺協同組合と、さぬきうどん協同組合、そして小豆島手延素麺協同組合が中心となって、うどんとそうめんを全国に広めていこうと世界麺フェスタの直後、2008年7月に「さぬきうどん振興協議会」を立ち上げた。この会議の中で「年明けうどん」が誕生する。それはメンバーの何気ない一言だった。

「年越しそばがあるのに、その次がないよね」

年越しそばがあるなら年明けうどんがあってもいいじゃないか。年末年始を麺で過ごしてもらおうという発想だ。そして協議会のメンバーの意見が一致したのが「年明けうどんを讃岐だけのものにしない」。つまり、香川県の地域限定のものにはしないということだった。日本全国の年中行事になることを目指す。このため、「年明けうどん」の定義は極めてシンプルだ。第一に「年明けうどん」の決まったロゴを使うこと、そして第2に冒頭に紹介した通り、白いうどんの上に紅い食材をのせる。この2つだ。こうして一つにまとまった想いは2009年の正月に向けて一気に盛り上がった。大峯さんたちは「年明けうどん」のロゴの制作からポスターに幟、県内にある900を超えるうどん店をはじめ、メーカーや流通への告知を急ピッチで行った。

そして迎えた正月、うどんの伝来者とされる空海ゆかりの総本山善通寺で「年明けうどん」2000食が振る舞われた。この取り組みがNHKの「ゆく年くる年」で取り上げられ、一気に全国に広まった。

3年のうちに全国に定着させたい

テレビに取り上げられた反響は大きかった。全国各地からの問い合わせが相次ぎ、中には沖縄県の製麺会社から「やってみたい」と問い合わせがあった。今年4月には全国製麺協同組合連合会に「年明けうどん普及委員会」が設置され、大峯さんは委員長に就任。さらに「年明けうどん」は、9月に開かれた第50回全国製麺業者北海道大会において、麺食の振興事例として優秀賞を受賞した。

こうした中、来年の正月に向け大手食品メーカーや流通が素早い動きをみせた。国民行事として定着するための理想的な流れとも言える。また、県内や県外からも「来年はやってみたい」といううどん店が大幅に増えている。「3年のうちに全国に定着させたいと思っていたが、この分だと来年にも定着するかもしれない」と大峯さんは言う。

一方で、課題もある。県内のうどん店937店舗のうち、さぬきうどん協同組合と香川県製粉製麺協同組合に入っている店はわずかで、圧倒的に組合に所属していない店舗の方が多い。つまり、「年明けうどん」の取り組みができているかどうか県全体の把握ができないのが現状なのだ。

「地元香川で始まった事を県全体でやっていきたいんです」と大峯さんは話す。
さぬきうどん振興協議会では「年明けうどん」に取り組む店舗に事前の登録と実施後のアンケート調査を行う事にしている。その結果が出るのは来年の1月15日以降だ。

今年も残すところ1カ月を切った。さぬきうどん振興協議会では2010年元旦に、総本山善通寺と小豆島の土庄八幡宮で午前0時から「年明けうどん」を振る舞い、栗林公園では午前10時から半生麺1000袋を配布する予定だ。

株式会社おおみね

住所
香川県小豆郡土庄町甲5164
代表電話番号
0879-62-1147
社員数
18人
事業内容
さぬきうどん、冷凍うどん、うどんのトッピングや調味料の製造・販売
資本金
1600万円
地図
URL
http://www.toshiakeudon.jp/
確認日
2009.12.03

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