三代続く「日の出」の 看板を守りたい

日の出製麺所 代表取締役 三好 修さん

Interview

2016.04.07

製麺所の朝は早い。午前2時から麺をゆで始め、6時にうどんを載せたトラックが出発し、午前中には配達を終える。届け先はスーパーマーケットや企業の社員食堂、駅、空港など。麺の卸売りとお土産品としての販売が日の出製麺所の柱だ。

一方で昼間の1時間しか食べられないうどん店としても人気となっている。昼前にスーパー向けのうどんを追加でゆでる。この追加分と併せて作業することで、店頭で「できだち」のうどんを提供出来るのだ。お客さんにおいしいうどんを食べてもらうことを考えると、11時30分から12時30分までの営業が限界だ。

うどん店としての営業を終えると生地を練り、お土産品の包装と発送を行う。卸売りとお土産品、店頭での提供を合わせると、1日に1万食以上を扱っている。

日の出製麺所の代表取締役を務める三好修さん(51)は、祖父、父に続く三代目だ。子どもの頃から粘土代わりにうどん生地をこね、中学生で握力が60キロを超えて友人たちを驚かせたと言う。「うどんは空気や水と一緒。あって当たり前のものですね」

それを実感したのは大学生の時だ。就職活動を始めると、両親から「継がないなら製麺所は廃業する」と言われた。身の回りからうどんがなくなることは考えられなかった。何より祖父の代から掲げてきた「日の出」の看板を下ろすわけにはいかないと思った。

1987年に入社。当時は卸売りがメインで、自社ブランドのうどんはほとんど世に出ていなかった。「88年に瀬戸大橋が開通してがらっと変わりました。坂出に人があふれ、お土産が売れるようになったんです」

ちょうど冷凍麺の普及で、スーパーや社食への卸売りは苦戦を強いられていた。三好さんはお土産用のうどんと名刺を持って営業に回った。坂出のお土産品には坂出で作ったうどんが必要だと頼み込んだ。そんな姿を見て協力してくれる人もいた。少しずつ販路を開拓していった。

祖父の代から製麺所として麺の卸売りを続けてきたが、店頭で食べられるうどんの提供はしてこなかった。それは父が「お客さんである小売り店の商売を邪魔することになる」と拒み続けてきたからだ。

しかし、讃岐うどんブームもあって店頭でうどんを食べたいとの要望が増えて断りきれなくなった。2001年の年末に店頭での提供を開始。02年のゴールデンウィークには、店舗横の駐車場から人があふれるほどの行列が出来た。

有名店となっても三好さんは気を緩めることはない。「私が入社した頃は坂出市内に製麺所が10軒以上はありました。それがだんだんと減って。次はうちの店だと怖くなることもあります。何とか続けてこられたという気持ちです」

02年、代表に就任。祖父、父と同じで本業は製麺所だと考える。「自分がおいしいと思ううどんが、たくさんの人と共有出来る味であればいいなと思う」。小麦にこだわり、国産小麦粉を自社でブレンドしている。しょうゆだけでおいしく食べられる麺を目指し、日々うどんを打つ。

日本中に似たような店が並び、風景がどこも同じだと感じることがある。「香川にはここにしかないうどん屋さんがたくさん並んでいます。『日の出』の看板を守ることが、香川の風景を守ることにもなると思っています」

三好 修 | みよし おさむ

1964年 9月 坂出市生まれ
1987年11月 有限会社 日の出製麺所 入社
写真
三好 修 | みよし おさむ

有限会社日の出製麺所

住所
坂出市富士見町1-8-5
TEL:0877-46-3882
創業
1930年
従業員
40人(パート、アルバイト含む)
地図
URL
http://www.hinode.net/
確認日
2018.01.04

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