「讃岐うどん」の概念打ち破る

こんぴらや販売株式会社 最高顧問 辻田 順一さん

Interview

2013.07.18

昨年5月、タイガースカラーのうどんを携え阪神タイガース本社に単身、乗りこんだ。その日のうちに仮契約まで漕ぎつけ、黒粉とウコンを練り込んだ「猛虎うどん」は阪神甲子園球場や阪神百貨店、阪神電車の主要駅の店頭に並ぶことになった。

「麺そのものをタイガースカラーにした商品は、それまでなかったようです。出だしの売上は順調で、甲子園球場だけで1日に190個売れました」。こんぴらや販売の辻田順一さん(47)は振り返る。奇抜なアイデアで次々に新商品を生み出している辻田さんの経歴がユニークだ。

高校生のころから住み込みで新聞配達をし、一人暮らしに憧れて賞金目当てに映画のオーディションに応募。4000人の中から選ばれて「家族ゲーム」に準主役級で出演した。その後、メキシコやイギリスなどを旅した。23歳で東京の広告代理店に就職し、結婚を機に妻の地元である香川のゴルフ用品メーカーに転職。そこで知り合った「こんぴらや」のオーナーから、新装創業するのに伴い社長として招かれた。

香川に来て10年。県外出身者だからこそできることがあるという。「香川に住んでいたら『うどんを作ってみたい』という衝動に駆られますよ。そして、もっと面白いことができないかと、常に考えています」。自社工場で製造したうどんを、直営店舗や土産物店、インターネットで販売している。購入客のほとんどが県外だ。
2011年の社長就任後、初めて手掛けたのは「逆打ち」という四国遍路をテーマにした商品。オリジナルキャラクターをパッケージに掲載し、中にポストカードを封入。88枚あるカードの「コンプリート」を目当てに購入するファンもいる。同年12月には、遍路の接待所のようなイメージで、工場横に店舗を構えた。

「県外から来た人に『こんな店もあるんだ』と思ってもらいたい。おいしいのは当然。香川で勝負するなら商品力が重要でしょう。うどんの未開拓分野を攻めたいんです」。こんぴらや販売が使うのは、国産小麦のみ。理由は単純においしいから。

一番人気は「塩なき子」。塩を一切使わずに、食感など極限まで讃岐うどんに近いものを作ってみたいとの思いから始まった。しかし、塩が入っていないと麺にコシが出ない。小麦粉の配合や生地の熟成・乾燥時間を何度も調整し1年半かけて完成した。「引き算の開発なので難しかったですね。塩分の摂取を制限されている方に、食べていただきたい」。「塩なき子」は、病院食としても注目され始めた。辻田さんの手にかかれば、うどんがエンターテインメントになる。
今年4月から最高顧問となった。現在、開発を進めているのは片手で食べられるうどん。その名も「さぬきかぶりつき」。「麺そのものに味付けをしていて、パッケージからにゅるっと出して、かぶりつく。『パンなしの焼きそばパン』といった雰囲気でしょうか」。スタンダードなだし味のほか、甘いデザートうどんも試作。9月発売を目指している。「原宿のクレープのように、うどんをかじりながらまちを歩くようになれば面白いですね」

「さぬきかぶりつき」の商品化が終われば、形にしたかった商品がひととおり完成する。「武器がそろったという感じ。商品を大きな流通に乗せていきたい」

「キワモノ」として地元では抵抗感もありそうなアイデアだが、辻田さんは自信たっぷりにこう断言する。「ターゲットは原宿を歩く若者です」

辻田 順一 | つじた じゅんいち

1965年11月25日 福岡県生まれ
1981年3月 東京都杉並区立松ノ木中学校 卒業
1989年4月 株式会社自由企画社 入社
2004年6月 キャスコ株式会社 入社
2011年5月 こんぴらや販売株式会社 代表取締役就任
2013年4月 同社 最高顧問就任
写真
辻田 順一 | つじた じゅんいち

こんぴらや販売株式会社

所在地
仲多度郡まんのう町東高篠1140
TEL
0877-73-5701
資本金
550万円
社員数
14人
事業内容
製麺、讃岐うどん企画・販売
確認日
2018.01.04

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