仲間と飯間さんと新婚の妻。若い3人が始めためがね屋が、自分の欲しいものだけを売って、売り場面積や扱いブランド数では日本有数の時計屋になった。
なぜ地方の店が、販売条件の厳しい一流ブランドをこれだけ扱えるのか。なぜ高価な時計が、高松でこれだけ売れるのか。飯間さんの売るものとは何か。
誰も知らなかったからやれた
20数年前、飯間さんが始めた頃はブランドが知られていなかった。誰も知らないから誰でもやれた。実績を積み重ねて、ブランド側から扱って欲しいといわれる立場になった。
風が吹く日は休業
「メガネを中心に、時計を少しだけ扱っていました。入学シーズンには高校生向けの腕時計が売れました」。商売は順調で優雅だった。朝6時に福島さんと2人で海へ出かけて、ウィンドサーフィンをしてから店を開けた。風が吹く日はサーフィンが最優先、店を閉めることもたびたびあった。年商は3千万円ほど。若い3人だからそれで十分だった。仕事と遊びに熱中していたとき幸運な転機が訪れた。
仕事と趣味がリンクし始めた
その頃クオーツに押されていたスイスの時計業界が、機械式時計の巻き返しを図っていた。「愛用の、大学時代に手に入れたアンティークのブライトリングが、復活したという記事が雑誌に載ったんです。代理店に電話で掛け合うと、ホイヤーの実績が信用されて扱えるようになりました」
ホイヤーやブライトリングはまだ知られていなかった。大手の時計屋はオメガやロンジン、ラドーやウオルサムは扱っても、ニッチなブランドに注目しなかった。飯間さんの趣味が商売とリンクし始め高級時計が主力商品になった。1993年「メガネのイスズ」を「アイアイ イスズ」に社名を変えて登記した。
※(タグ・ホイヤー)
スポーツウオッチが人気のスイスの時計メーカー。
※(ブライトリング)
多くの航空会社や空軍にオフィシャルウオッチとして採用されているスイスの時計メーカー。
人より少し早く、美しいモノを見つける
自分が欲しい時計を集めて品ぞろえをした。店では、友達に見せて触らせて自慢するような接客をやってきた。お客の友達がまたお客になった。「40人のスタッフの半分以上は、僕から時計を買っていただいたお客さんです。時計が好きで仲間になった人達です」
趣味が事業になった。「自分が欲しい時計を見つけて紹介したら、いつの間にかブランドが100以上になりました」。必要なのは、お金や力ではなかった。必要なのは、人より少しだけ早く美しいものを見つける感性と、若さの気楽さだった。
値段より値打ちのある時計を売る
カシオの幹部が、アイアイ イスズで扱われるブランドにしたいというので、限定モデルを主に扱うGショック専門店「エッジ」を、2004年、サンポートにオープンした。
※(G gravitational acceleration)
重力加速度の単位
※(G-SHOCK)
特徴は堅牢性で「アイスホッケーのスティックで打たれても壊れない」の宣伝文句が、プロのアイスホッケー選手によるシュートでも機能を喪失しないことが証明された。
いつか来る限界に備える
この壁をどうするか。他の地域に進出して、店舗数を増やすしかない。そのために資本を他から入れると自分の育てた事業ではなくなる。
「ブランドにノーと言われても、自分たちの方向へ進みます。ビジネス理論の逆ですが、楽しくなければやる意味がありません。これからの方向はスモール化です。スモールでも自分がほしいものが、扱いたくなるものが出てきますから」。頑張らないと何もできない。でも頑張りが壊れるほど無理はしない。しなやかでしたたかで堅実。飯間さんのモットーは行雲流水だ。雲や流れる水のように自然にまかせて、やがて来るピークの折り返しに備えてソフトランディングしていく。
大学時代に大津の西武デパートでアルバイトをした。舶来雑貨や香水売り場に配属されて社員も含めた売り上げでナンバーワンになった。「接客で、物を売るのが楽しいということを始めて知りました」。卒業したら是非入社してくれと誘われた。
就職は銀行を志望していたが、実家の時計屋をやるほうが時間も自由になるし、アルバイトの経験を生かして月給分ぐらいは稼げると思って仏生山に戻った。
理想と現実のギャップは大きかった。仏生山ではお客様が来ない。デパート仕込みの接客をしようと白衣を着て意気込んでいるのに、1日に1人か2人しか来ない。
「親父は100万円あれば全部商品を買うんです。それは違う。50万円仕入れに使って、50万円は商品を知らせるために広告しようと言っても、職人気質で理解が得られません」
帰省後しばらくして、親の店から数十メートルのマルナカセンター横に、15坪ほどの「メガネのイスズ」を開業した。資金は銀行から、商品はメーカーから借りた。
大学で学んだマーケティング理論のとおり「知らしめる・いい物をそろえる・適正価格」を実行して繁盛した。
セイコー社の販促用の掛け時計を使った“限定マーケティング”・・・メガネを買うと、限定50個、掛け時計を進呈・・・も効果があった。
飯間 康行 | いいま やすゆき
- 略歴
- 1955年 高松市仏生山町生まれ
1977年 同志社大学卒業、父の時計店の仕事に従事
1980年 「メガネのイスズ」創業
1990年 「アイアイ イスズ」に店名変更
1998年 「アイアイ イスズ 高松レインボーロード
(本店)」開設
2002年 高松丸亀町に「アイアイ イスズ ヴアン・
キャトル」開設
2004年 サンポートシンボルタワーに「アイアイ イスズ
サンポート店」開設
宇多津ビブレに「アイアイ イスズ 宇多津ビブレ」
開設
2007年 (株)アイアイ イスズホールディングス設立
株式会社アイアイ イスズホールディングス
- 住所
- 香川県高松市伏石町75
- 代表電話番号
- 087-864-5225
- 設立
- 1980年
- 社員数
- 40人(関連会社含む)
- 事業内容
- 主に高級機械式時計、ブライダル/ジュエリー、眼鏡/サングラス等販売
- 資本金
- 1000万円
- 地図
- URL
- http://www.eye-eye-isuzu.co.jp
- 確認日
- 2021.08.30
おすすめ記事
-
2009.10.01
あこがれとコンプレックス、笑顔が夢をかなえた
エヌ・ディー・シー・ジャパン 代表取締役社長 石井 浩一さん
-
2010.05.20
「問屋無用論」返上!
小売店と共に、日本一の地方問屋に中商事 代表取締役社長 中 博史さん
-
2023.06.14
体験型店舗が空港通りにオープン
Shimadaya plus(シマダヤプラス)高松店
-
2019.04.04
昔ながらの「手甲(てっこう)」を現代版UV対策商品に
わがまま女優のUVセット 福崎手袋
-
2009.07.02
総合衣料店の強みは?全国展開チェーン店と共存するための方策とは。
ヨネザワ 代表取締役 高畑 保さん
-
2019.03.21
「考える縫製」で世界を狙う
川北縫製 代表取締役 川北繁伸さん
-
2014.11.20
シンプル、便利、美しい革製品
ヴィンテージ リバイバル プロダクションズ 代表 塩田 裕基さん
-
2024.12.05
もっと面白い未来へ プラスチック製品メーカーの挑戦
川崎化工 社長 川崎 功雄さん
-
2024.11.07
地域とともに25年 苦しい時こそ“攻め”の姿勢で
遊食房屋 社長 宮下 昌典 さん
-
2024.10.17
繋がるヒト・コト・モノ… 駅から始まるまちづくり
JR四国 社長 四之宮 和幸 さん
-
2024.10.03
足元の不安を取り除き “歩く喜び”を届ける
徳武産業 社長 德武 聖子 さん