年末年始点描 令和2年へ

香川県教育委員会 教育長 工代 祐司

column

2020.01.16

年末29日。友人のシンゴ君の誘いで何年かぶりに映画館に足を運んだ。「男はつらいよ50 お帰り寅さん」。令和元年は「男はつらいよ」シリーズが始まって50年、そしてこの作品が50作目。甥の満(吉岡秀隆)とかつての恋人イズミ(後藤久美子)との再会の物語だが、そこに寅さん(渥美清)の映像が絶妙に挿入される。違和感なく物語は進む。俳優の演技力、脚本の妙、高い編集力に脱帽。

シンゴ君はずうっと鼻をすすっていたし、私も胸が小刻みに震え、止めるのに苦労した。人を思うことの切なさや温かさ。昭和から平成にかけての風景風俗。時代が変わっても忘れてはいけないものがあるのだ。

元旦。穏やかな日和。初詣。幼なじみのヨシヒコ君が神主を務める神社に。彼は定年退職後、東京で神官の勉強をし、昨年から親父さんの後を継いだ。慎み深い面持ちに烏帽子装束がよく似合う。毎朝5時過ぎから2時間、境内の掃除をするという。「妻はそんなに時間をかけなくてもと言うが、やはり丁寧にやりたい」と笑う。木立に囲まれた境内で竹箒を使う彼の姿を想像する。こんな暮らし方、素晴らしい転身だ。

三日。観音寺に。稲積山の山頂にある高屋神社へ。「天空の鳥居」として今人気のスポットだ。登り道に入る直前のところで、愛媛ナンバーの車の女性が、向かってくる車一台一台に「上で脱輪した車が道をふさいでいる。私たちもやっとのこと降りてこられた。今から登ると日が暮れると思う」と声をかけてくれた。有り難かった。お蔭さまで有明浜から燧灘に沈む夕日を堪能することができた。

五日。サンポートホールの市民ギャラリーでの書道展。松明先生書「急速は事を破り、寧耐は事を成す」にしばし見入る。今年の座右の銘はこの西郷隆盛の言葉にしよう。多忙の中、静かに書に向かう松明先生の姿にあこがれる。

いろんな人とのちょっとした語らい、ひたむきな生き方や親切に出合えた令和初の年末年始だった。今年も地に足をつけて一歩一歩進んでいきたい。

香川県教育委員会 教育長 工代 祐司

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