非上場の金融・保険業、サービス業他は苦戦続く

リーマン・ショック後の企業業績」調査〔香川県版〕 東京商工リサーチ

Research

2020.12.03

2008年9月のリーマン・ショックで世界は同時不況に巻き込まれた。日本でもこの12年間に東日本大震災、政権交代、超金融緩和など大きな動きがあった。リーマン・ショック前の07年度(07年4月期~08年3月期)から、直近の19年度(19年4月期~20年3月期)まで、13期連続で単体の業績比較が可能な香川県内の企業から3,470社を抽出、分析した。

※本調査は、東京商工リサーチが保有する国内最大級の企業データベースを活用。決算期変更などで12カ月決算以外となった場合や、対象期間のうち1期でも売上高または利益金が入手できていない企業は除外した。上場持株会社も除外。利益は当期純利益を指す。決算年度は07年度を07年4月-08年3月とし、以降の決算期も同様とした。

業績推移 リーマン前を上回る

全企業の売上高合計は、09年度に全国では84.1まで下落。香川は91.5まで下落。18年度に全国では100.0を回復。香川では13年度に101.2まで回復。利益合計は08年度に全国は15.2と極端に落ち込んだ。香川は08年度に49.1まで下落。12年度には上場企業の大幅赤字で23.5となったが、13年度に全国・香川共100.0まで回復。その後も100.0を上回る状況。19年度の売上高は111.7、利益合計は127.0となっている。

農・林・漁・鉱業が高ポイント

売上高合計(非上場)の産業別では、19年度で100.0を上回ったのは金融・保険業、サービス業他を除く8産業だった。最もポイントが高かったのは農・林・漁・鉱業で、リーマン後も一定の需要に支えられ、100.0を割り込まず、19年度は151.2を確保した。企業のIT化、イノベーション活用等で情報通信業が131.8、近年の不動産売買が堅調だった不動産業の127.2と続く。

建設業の復調顕著

利益合計(非上場)を産業別にみると、19年度は10産業全てで100.0を超えた。19年度で最もポイントが高かったのは建設業で607.3だった。東京五輪・パラリンピック特需を東京の拠点で取り込んだほか、官公庁の大型案件や民間の再開発、一般個人邸新築工事などが寄与し大幅に改善した。農・林・漁・鉱業は711.9と高水準だが、相場に影響され、社数が少なく、特定企業が大幅利益を計上すると利益合計が上振れする性質にある。
香川県は自動車製造業、電気製造業等大手企業の下請協力企業が少なく、リーマン・ショックの影響は全国的にも軽微だったため、比較的早期に業績は回復している。

20年に感染拡大した新型コロナウイルスの影響で、企業を取り巻く環境は一変した。こうした時期こそ将来を見据えた業態転換の促進や、事業承継への支援など足腰の強い中小企業を育成する施策が必要になっている。

東京商工リサーチ 四国地区本部長兼高松支社長 立花 正伸 

記事一覧

おすすめ記事

関連タグ

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ