飲食と福祉の掛け合わせで、新しい働き方

特定非営利活動法人 BIGスマイル/理事長 野口純一さん

Interview

2021.07.15

今年6月、ランチとスイーツが楽しめるお店「STORY」が高松市松縄町にオープンした。味とボリューム、「コスパ」の良さが売りだ。

運営するのは、特定非営利活動法人 BIGスマイル。高松市楠上町でうどん店「麺匠くすがみ」も運営しており、「つけうどん」など独自のメニューで人気だ。STORY、くすがみともに就労継続支援A型事業所で、「就労継続支援A型」とは、障がいのある人が事業所と雇用契約を結び、支援を受けながら働ける福祉サービスのこと。2店舗合わせて18人の利用者がいる。作業工程を細かく分けたり、調理器具に目印をつけたりして、働きやすい環境をつくっている。

BIGスマイル理事長の野口純一さん(50)は、うどん店と福祉施設の両方で働いた経験をもち「自分のスキルが人の役に立つのはうれしい。飲食店なので『おいしいから行きたい』と思われる場所でありたい」と話す。
高松市楠上町の「麺匠くすがみ」

高松市楠上町の「麺匠くすがみ」

高松工芸高校を卒業後、大阪の建設会社で働いていたが、バブル景気崩壊のあおりを受け、起業を考えた。大好きなさぬきうどんを大阪でも食べられるようにしようと、香川に帰って人気店「五右衛門」で3年修業した。念願かなって大阪でうどん店を出したが、1年半で閉店。「味には自信がありましたが、経営はうまくいかなかった」

それから、流行っている店を研究するため、日本各地で派遣社員として働きながら、休日にはご当地の飲食店を回った。「人気店は、おいしさ以外にも雰囲気がいい、車が止めやすい・・・などいくつもの理由がありました。味だけの一本勝負ではなく、見せ方を考えなければならないと分かりましたね」

34歳で再び香川に帰って来た。飲食店への再挑戦を目標に、資金を集めるために働いた。その中で取得したのが、ホームヘルパー2級の資格。ヘルパーの資格があるならと、知人に紹介されたのが、社会福祉法人 竜雲学園だった。竜雲学園は、学園の利用者が働く「竜雲うどん」を運営。野口さんは経験をかわれ、うどん店担当として働くことになった。しばらくすると、就労継続支援A型の制度ができ、お店をリニューアルすることに。野口さんはレシピや店内の雰囲気など、これまでの経験をもとに、店づくりに尽力した。
高松市松縄町の「STORY」

高松市松縄町の「STORY」

一緒に働いていた、竜雲学園の利用者とのエピソードが心に残っている。部屋へ遊びに行くと、その人が好きな電車や飛行機をダンボールで手作りしていた。A型事業所になったことで収入が増えると、電車や飛行機がプラスチック製のものにだんだんと変わっていった。うれしそうな姿を見て、野口さんは福祉を一生の仕事にすると決めたという。

独立して、2016年に麺匠くすがみを開店。今年開店したSTORYは、「ここから新しい物語を作っていく」という意味から付けた。自店舗の運営は2つまでにし、今後は後継者不足や経営難の飲食店を「福祉的M&A」していきたいと考えている。「障がいのある人の働く場所を増やし、収入も増やす。飲食店は働き手を得ることができます。私たちが持つ、働き手の支援や飲食店経営のノウハウを生かせたら」

鎌田 佳子

野口 純一|のぐち じゅんいち

略歴
1970年 高松市生まれ
1989年 高松工芸高校 卒業
2016年 麺匠くすがみ 開店
2020年 特定非営利活動法人BIGスマイル 設立
2021年 Lunch&Sweets STORY 開店

特定非営利活動法人BIGスマイル

住所
香川県高松市楠上町2丁目6-36
代表電話番号
087・880・5496
地図
確認日
2021.07.15

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