グローバル・ワンチームでオリジナリティを追求

協和化学工業 社長 木下 幸治さん

Interview

2021.10.21

9月1日に開設した本社・高松事業所=高松市磨屋町

9月1日に開設した本社・高松事業所=高松市磨屋町

「アグリバイオ」に挑む

10月1日、協和化学工業の社長に、副社長だった木下幸治さん(61)が就いた。「今は数百年レベルでの変化が起きているまさにその大きな潮目ではないか。そういう時に任された重要なポジション。緊張しながらも大きなやりがいを感じています」

海水からマグネシウムを取り出し、工業用のマグネシウム化合物をつくる。合成ゴム、スマートフォンや自動車の部品、胃酸を中和する医薬品など応用範囲は広く、国内はもとより海外でもシェアをほぼ独占している商品もある。様々な産業を支える協和化学工業は、香川が誇る世界的企業だ。

「重圧はある。でも、リーダーが変わるからといって方針を180度変えていたんじゃダメ。社会の変化に応じて微調整しながら、社員を引っ張っていきたいと思っています」
イチゴ栽培の様子

イチゴ栽培の様子

木下さんはさっそく様々な試みにチャレンジしている。その一つが「アグリバイオ事業」。“アグリ事業”(=新品種開発)と“バイオ事業”(=微生物)のハイブリッド型事業だ。アグリ事業では北海道の種苗会社と共同で、四国でも栽培可能な夏イチゴの新品種開発を進めている。

バイオ事業では土壌に生息する無数の微生物の中から、作物に良い影響を与える微生物を探し出し、独自の手法で培養していく。「微生物の働きを生かして新品種の成長をさらに早め、収穫量を増やし、ビタミンや糖度などの機能性も高めていきます」。今年から試験栽培を開始しているが、微生物を与えた夏イチゴは与えなかったものより収穫量が3割増、糖度は2度ほど上がった。

「アスパラガスやスイートコーンなど他の作物への応用も可能。できるだけ早く微生物資材を実用化させたい」と意気込む。「将来は夏イチゴ以外の新品種も開発できる農業技術も習得したい。日本の農業は狭い耕作地に苦しんできた歴史がある。付加価値の高い品種が生まれれば、日本の農業をもっと元気づけられるのではと思っています」

商社マンから転身

海水中のマグネシウムを濃縮するシックナー(沈殿槽) =坂出市林田町の坂出工場

海水中のマグネシウムを濃縮するシックナー(沈殿槽)
=坂出市林田町の坂出工場

バリバリの商社マンだった。京都大学を卒業後、三井物産に入社。世界各地を飛び回る中で、運命の出会いがあった。1991年、ニューヨーク勤務の時だった。「当時、協和化学工業の海外展開は全て三井物産がマーケティングを担当していました」。プラスチックに配合される樹脂添加剤など、協和化学工業の商品をお客さんのところへ持っていくと「明らかに目の色が変わるんです。私自身、『面白い商品だなあ』『この会社はもっと伸びそうだなあ』とワクワクしながら仕事をしていました」

その後もオランダでのプロジェクトに携わるなど「結局、三井物産にいた28年のうち16年、協和化学工業を担当しました」

深い縁がもととなり、2012年、52歳で協和化学工業に入った。招いてくれた当時の社長、故・松島慶三さんは今でも木下さんにとって特別な存在だ。「お酒を飲みながら、よく議論を戦わせたものです」。語り合った思い出深いテーマがある。“会社にとって一番のステークホルダー(利害関係者)は何か”

「アメリカナイズされた企業は株主優先。でも、(松島)慶三さんは『一番は社員だ』と、私は『社員も大事だが、その前にお客さんじゃないですか』と。いつもやりあっていましたね」。もう一つ、松島さんが繰り返した言葉がある。“オリジナルじゃなきゃダメだ”

「他のマネをして金儲けをしようとすれば会社は終わる。常にオリジナリティを追求するために、社員は自分の頭で考え、悩んで、壁にぶち当たりながら乗り越えていかなきゃならない。これについては『そうだ、そうだ』と意気投合しました」。木下さんは懐かしそうに語る。

社員にワクワク感を

今年9月、高松事業所を開設した。総務、人事、経営企画などの部署が入り、フリーアドレスで、観葉植物が点在する。自由度が高く、まるでIT企業のようなおしゃれな空間だ。「“新しい協和”のイメージを体感できるようビジュアルにもこだわりました」。ルールもいくつかつくった。「会議で紙を配らない」「ゴミ箱を置かない」「社内会議は立ってやる」……。「坂出や屋島の工場の担当者も気軽に行き来できる、風通しの良い、会社がさらに成長していくためのシンボリックな場所にしたいと思っています」

社員を大事にした松島さんの思いはいつも胸にある。「『大事に』と言っても、いたれりつくせりで、という意味ではない。社員が会社を動かしていく“主役”だ、という考え方です」

掲げる信条は「グローバル・ワンチーム」。部署単位でまとまるのも大切だが、アメリカや中国など海外4カ国の拠点も合わせて、会社全体でチーム意識を持たなければならない。「国内外1000人の社員たちのモチベーションを高め、ワクワク感を持たせ、より創造的な仕事ができるような環境をつくっていく。それが私が果たすべき一番の使命だと思っています」

篠原 正樹

木下 幸治 | きのした こうじ

1960年 京都府生まれ
1979年 京都府立桃山高校 卒業
1985年 京都大学工学部石油化学科 卒業
     三井物産株式会社 入社
2012年 三井物産株式会社 退職
     協和化学工業株式会社 入社
2018年 取締役副社長 就任
2021年 代表取締役社長 就任

協和化学工業株式会社

事業内容
医薬用制酸剤、水酸化マグネシウム、合成ハイドロタルサイト、その他無機化学工業薬品、医療用医薬品の製造・販売 、アグリバイオ事業 他
本社・高松事務所
高松市磨屋町8番地1 あなぶき磨屋町ビル2F
TEL.087・826・6610
FAX.087・826・6616
本社・坂出工場
坂出市林田町4035
TEL.0877・47・0011
FAX.0877・47・4721
設立
1952年9月
資本金
1億4400万円
従業員数
608人(国内・2021年3月末現在、海外約400人)
URL
http://www.kyowa-chem.jp
確認日
2021.10.15

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