感性磨く「ドラマ教育」
文学部、社会福祉学部、社会学部の3学科1149人の学生に向けて、末吉高明学長(72)はメッセージを送る。「デジタル、AI、SNS……。これからの社会の中で、考えることのできない人間は、気づかないうちにシステムの一部に組み込まれていく。そんな時代がやってきています」
考える人間を育てる。そのために掲げているのが「リベラル・アーツ教育」だ。欧米の大学で多く取り入れられている教育プログラムで、“自由学芸”と訳される。日本で一般的な「学部」「学科」「ゼミ」という枠組みの中で専門知識を深めていくのではなく、様々な分野を横断的に自由に学んでいくというもの。「高校卒業後、半数以上が大学へ行く時代、今や大学は一握りの研究者やエリート官僚を育てる場ではない。専門に縛られることなく、創発的な教育を提供していくべきだと思います」
講義一つ一つも独自色が強い。演劇を活用したカリキュラム「ドラマ教育」では、演出家や振付師など一流の演劇人を講師に招いて演技や舞台技術を学び、学内の劇場などで定期的に公演を行う。履修することでプロの役者への道も開ける本格的な内容だが、末吉さんの狙いはそれだけではない。「最大の目的はコミュニケーションです。社会に出ると様々な人と関わっていく。言葉だけでなく、『言葉にならないもの』をいかに汲み取り表現していくか。感性を養うことは極めて重要です」
10年程前、日本を代表する演出家の平田オリザさんが演劇のワークショップを行っていることを知り、すぐさま連絡を取った。「『ぜひ協力したい』と二つ返事で受けていただき、授業内容まで熱心に考えてくれました」。末吉さんは嬉しそうに話す。
大学教育ができること
アメリカでは、社会ですぐに通用する実践的な教育が主流。「授業について行けずドロップアウトする学生も多く、入学したと言っても喜んでいられません」。一方、日本は「一番大変なのは大学に入ること。社会へ出ると、学んだことよりも学歴や偏差値、大学ブランドが重視されます」
大学教育ができることは何なのか、人づくりをどう考えていくのか。「システムは一筋縄では変わらないが、真剣に考えないといけない時期に来ていると思う」と末吉さんは警鐘を鳴らす。
心から人と関われているか
大学は淘汰の時代と言われる。18歳人口は1992年の200万人超のピーク後、減少の一途をたどり、10年後には100万人を割り込む見通しだ。「人口減少は、ある意味プラスに捉えてもいいのかも知れない」と末吉さんは言う。「この大学に存在価値はあるのか、社会に貢献できているのか。それらがなければ続ける意味はない。そういう覚悟でやっていますから」
学生たちに望むことがある。「資格を取るため、経済的な安定を得るため、生活を良くするため……自分のためだけの学びで終わってほしくない。本当に心から人と関われているか、地域社会と繋がっているか。しっかり考え、学んでほしいです」
篠原 正樹
末吉 高明 | すえよし たかあき
- 1949年 奈良県御所市出身
68年 米ミネソタ州マデリア高校 卒業
73年 国際基督教大学教養学部人文学科 卒業
75年 奈良県立生駒高校教諭
78年 米ジョージア州アトランタ大学センター
Interdenominational Theological Center
神学修士号(M.Div.)取得
79年 私立大阪女学院高校教諭
86年 四国学院大学 勤務
87年 助教授
96年 教授
2003年 社会学部カルチュラル・マネジメント学科長
学長
四国学院大学
- 住所
- 香川県善通寺市文京町3-2-1
- 代表電話番号
- 0877-62-2111
- 設立
- 1949年10月20日(財団法人 四国基督教学園)
- 学部
- 文学部、社会福祉学部、社会学部
- 大学院
- 文学研究科、社会福祉学研究科、社会学研究科
- 地図
- URL
- https://www.sg-u.ac.jp/
- 確認日
- 2023.05.18
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