コミュニケーションの拠点に

琴平文具店 店長 伊藤陽香さん

Interview

2021.05.07

琴平文具店は琴平町の新町商店街で、オリジナルノート「kotonote(コトノート)」を販売している。お客さんが好みの表紙と用紙、留め具を選び、スタッフが20分程度でノートを作る。新町商店街は金刀比羅宮参道の手前にあり、お客さんは先に注文を済ませて、周辺の散策や「こんぴらさん」への参拝を楽しんだ後に、ノートを受け取ることもできる。ノート以外にスタッフがセレクトした文具を販売。ワークショップスペースでは、展示やイベントも開催する。

2020年4月のオープンから1年が経ち、店長の伊藤陽香さん(26)は「昨年はコロナ禍でできなかったことも多い」と話すが、感染防止に努めつつ様々な取り組みをしてきた。夏から秋にかけては県内の専門学校との産学連携で、学生のフィールドワークを実施。商店街のお店への取材をもとに、魅力を発信するポストカードを作ってもらった。完成したカードは、店内で展示会を開催。取材と展示会を通して、地域住民と学生の間に、これまでになかったコミュニケーションが生まれた。

今年は金丸座の耐震補強工事で「四国こんぴら歌舞伎大芝居」が開催中止になった。「琴平を訪れる人にせめて絵で楽しんでもらいたい」と、町出身のイラストレーター・田岡和也さんから連絡があり、4月の2週間、春の金丸座を描いた切り絵が飾られた。

同店は、シティプロモーションを手掛ける株式会社 地方創生(東京都)が運営する。琴平町商工会と業務提携し、商店街の空き店舗を活用した取り組みだ。新しいお土産を作ること、若者にたくさん来てもらうこと、地域住民と協力した店づくりができることを目的に、文具店にしたという。四国には紙の産地があることも、ノートを販売するヒントになった。kotonoteの用紙は、香川県内の印刷会社と協力してオリジナルのものを作っている。

「地方創生」は、人材総合サービスのパソナなどで広報を手掛けた近江淳さん(50)が、広報戦略を専門として2008年に創業。14年にパソナグループの一員になった。これまで、宮城・石川・愛知各県のUIJターンWebプロモーションや、鳥取市のWebメディア、長崎県のアンテナショップ広報など自治体のプロモーションを手掛けてきた。企業と共同で特産品を生かした商品開発もするが、自社で小売りまで行うのは琴平文具店が初めて。

当初は3年をめどに、文具店を起点としてカフェやゲストハウスなどの事業展開を予定していた。「観光客をメインのターゲットに考えていたが、今は地元の人にどれだけ来てもらえるかが大切」と近江さん。軌道修正しながらも、展開のスピードを緩めることはない。コロナ禍によって予定は変わったが、琴平町内で新しいお店を始める人は少なくなく、連携した取り組みをしていきたいと考えている。昨年11月には県内企業や自治体と協力して「香川ワーケーション協議会」を設立。観光だけではない、香川・琴平の魅力を発信していく。

東京生まれの伊藤さんは、2017年にパソナへ入社。琴平文具店の開店にあたって「地方創生」に転職し、香川へやって来た。「琴平は、地元の人とのコミュニケーションが取りやすい。東京にいたときよりも、生活が豊かになったように感じます」と話す。学生時代から地方都市や地域活性化に興味があり、専攻していた農業の知識を生かして、6次産業化の支援などをしてきた。「今年は地元企業のみなさんと協力して、新しいオリジナル商品を作りたいですね」

鎌田 佳子

伊藤 陽香|いとう はるか

略歴
1994年 東京都生まれ
2017年 明治大学卒業
     株式会社パソナ入社
2020年 株式会社地方創生入社
     琴平文具店 店長就任

琴平文具店

住所
香川県仲多度郡琴平町183
代表電話番号
0877-58-8188
営業時間
13~17時(定休日:火・水曜日)
地図
URL
https://kotohira-bungu.com/
確認日
2021.05.07

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ