目的に向かっていくプロセスがおもしろい

日本政策投資銀行四国支店長 岡井覚一郎さん

Interview

2019.09.19

大学時代の先生の影響で、日本の政治史に興味をもった。戦後復興と高度成長についての本を読んでいたら、日本政策投資銀行の前身である「日本開発銀行」が出てきた。「こんな面白い銀行があるんだと。ここなら政策と民間の経済活動をつなぐような仕事ができるんじゃないかと思って志望したら、運良く入行できました」

キャリアの中で、「瀬戸内」に縁があるという。2007年に一度、調査役という立場で四国支店に赴任した。本店の金融法人部にいたときは「瀬戸内DMO」の立ち上げにかかわった。瀬戸内DMOは瀬戸内を囲む7つの県、地銀等が合同で、地域の観光資源の付加価値を高めてブランド化、地域を活性化していくために創設された組織。立ち上げ前から7つの県を毎週のように訪問し、行政や地元の地銀と連携しながら「自分たちのエリアのメリットだけではなく地域全体でどう取り組むか、そのために何をするべきか話し合いました」

紆余曲折はあったがDMOとファンドができ、ようやく組織が動き始めた時は感慨深かったと振り返る。「最終的にこうなればいいというイメージがあり、それに向かってみんなと一歩一歩進んでいくプロセスがおもしろい」。当時、ともに仕事をした人たちが、2度目の四国赴任となって挨拶に行ったとき「支店長として戻ってきてくれてよかった」と言われたことが一番うれしかったという。

原点は高校の運動会

休日は半日以上書いていても苦にならないという

休日は半日以上書いていても苦にならないという

仕事をする上で、うまくいかない時は一歩引いてみる。自分がやっていることは全体から見るとどういう意味があるのか、どうすれば目標に到達できるか。その考え方の原点は、高校の運動会。母校・松山東高校の運動会は地元で有名で、全学年が4つのグループに分かれて応援の拠点となる「櫓」と高さ5mほどのマスコット、幅20mほどの巨大なパネル画や応援・小劇のための様々な舞台道具を約3週間で準備する。

櫓やマスコット等に使う竹を学校近くの山から200本ぐらい切ってきて加工する、グラウンドに穴を掘って櫓の土台を組む、手作りのエプロンを販売して準備資金を作る、パネル画を描く…。膨大な作業を前に「もうできない」と泣き出す生徒も出てくる。「私はパネル画の責任者を任されましたが、絵が苦手で」。そこで得意な人に描いてもらい、ほかにも得意分野が生かせるよう役割分担して、自分は作業が効率的にはかどるよう考えて動いた。「今思うとあれは『プロジェクトマネジメント』そのもの。タイトなスケジュールで授業も受け、3年生は受験勉強もしながらやり遂げられた経験は大きい。みんな何かしら発見や成長があったはずです」

また、小学校から続けている書道に最近、再び取り組み始めた。「何回書いても、これでいいと思うことがない。完成しないところが魅力ですね」

いろんな経験をしてほしい

作品の一つ

作品の一つ

支店長という立場で赴任した今回、支店の若手には失敗も含めていろいろな経験をしてほしいという。「本店では若手がお話をする相手はお取引先の担当者が中心ですが、エリアでは経営者とも直接お話しできる機会がある。経営者の視点や考え方を肌身で知ることができるのは、大きな財産だと思うんです」

人口が減っていく中で、どうやって地域を盛り上げていくか。「お客様が今悩んでいることだけではなく、将来課題になりそうなことは何かを見極めてできることを提案する。そのために若手の育成もしていきたいですね」

石川恭子

岡井 覚一郎 | おかい かくいちろう

略歴
1972年 愛媛県生まれ
1991年 愛媛県立松山東高等学校 卒業
1995年 東北大学法学部 卒業
     日本開発銀行(現、(株)日本政策投資銀行) 入行
2001年 日本政策投資銀行 総務部 副調査役
2003年 交通・生活部 調査役
2006年 経営戦略部 調査役
2007年 四国支店 調査役
2008年 株式会社日本政策投資銀行 四国支店 調査役
2010年 経営企画部 調査役
2011年 同 課長
2014年 金融法人部 課長
2017年 企業金融第2部 課長
2019年 四国支店長

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