カーネーション愛で「喜び」を咲かせる

香花園 代表理事 真鍋 佳亮さん

Interview

2022.04.07

高松市香南町の香花園・香南農場。自身で開発したオリジナル品種「レアレア」を手に

高松市香南町の香花園・香南農場。自身で開発したオリジナル品種「レアレア」を手に

小さくて可愛い「レアレア」

赤、白、ピンク、オレンジ……。色とりどりのカーネーションが一面に広がる。昨年3月、農事組合法人香花園が高松市香南町に建てた香南農場だ。カーネーションを専門に、新しい品種を開発する育種や、苗や切り花を生産する香花園。これまでは塩江町の農場などで年間100万本の切り花をつくっていたが、「コロナ禍で不安はあったが、地域の協力のおかげで農場建設に踏み切れた。今後は140万本まで増やしていきたい」と、代表理事の真鍋佳亮さん(40)は意気込む。

カーネーションには、1本の茎に1輪の花をつける「スタンダード」と、茎から枝分かれして複数の花をつける「スプレー」の2つのタイプがある。真鍋さんが得意とするのは「スプレーカーネーション」。様々な花の中でも、カーネーションは丈夫で日持ちするのが特徴の一つだが、「時間差で花を開いていくスプレータイプは、より長く楽しめて、その時その時でいろんな表情を見せてくれます」

中でもお気に入りは、自身で初めて開発したオリジナル品種「レアレア」。どんな花なのかを尋ねると、「色はピンク、濃いピンク、薄いピンクの3種類。丸くて小さくて、とっても可愛いんです」。うれしそうに説明する。「レアレアとはハワイの言葉で、『幸せ』『喜び』『take it easy』といった意味がある。懇意にしている花屋さんが名付けてくれました。最後の蕾まできちんと咲いてくれるので、とても愛おしいですね」。また、真鍋さんの頬が緩む。

自由に楽しく触れてほしい

祖父、父から続く三代目。幼い頃からいつも身近にカーネーションがあった。「とにかく父は家族より自分より、カーネーションを愛している人。父以上にカーネーション愛が強い人を見たことがありません」

父・光裕さんは数年前、大病を患い入院したことがあった。手術を終え、退院したその日にビニールハウスのボイラーを掃除していたそう。「何しよん?」と尋ねると、「いや、汚れていたから……」。父ほどのカーネーション愛が持てるかどうかは分からないが、「いつか追いつき追い越せればいいですね」と笑う。
香川県のオリジナルカーネーション 「ミニティアラ」を使用して行った「花育」。 塩江小の5年生が卒業生に贈るコサージュをつくった=3月15日

香川県のオリジナルカーネーション
「ミニティアラ」を使用して行った「花育」。
塩江小の5年生が卒業生に贈るコサージュをつくった=3月15日

市場は決して伸びているわけではない。ここ数年は、栽培に適した気候のコロンビア産やエクアドル産など輸入品も増えている。そこで真鍋さんは、バレンタインデーやホワイトデー、11月22日の「いい夫婦の日」や1月31日の「愛妻の日」などでPR。「お菓子や宝飾品を買うのと同じように、『花を買う』というシーンがもっと増えればと思っています」

特に力を注ぐのが、子どもたちに花や緑に親しんでもらう「花育」だ。精力的に小学校などを訪ね、フラワーアレンジメントなどを体験してもらっている。

この「花育」、父の代に始めた取り組みだが、実は真鍋さんは当初、あまり乗り気ではなかった。「子どもたちにPRしても、花の売上に直接つながるわけではない。どうしてそんなに力を入れるのだろうと……」

だが、ある時、東日本大震災の被災地で花育を手伝う機会があった。その光景を見て、思わず口から漏れた。

「花ってすごい」
家庭でフラワーアレンジメントが楽しめる「わくわくボックス」

家庭でフラワーアレンジメントが楽しめる「わくわくボックス」

ただ花を用意しているだけだった。アレンジのやり方を教えることもなければ、親が手伝うわけでもない。子どもたちが自由に手に取り、自由に生けていく。「みんなニコニコしていて、とても元気で、瞳をキラキラさせて。花っていいものだなあと改めて気づかされました」。花とともに育ち、自然と花が好きになった自分自身と重なった気がした。「大人になった時、『昔、友達と花を生けたなあ』『楽しかったなあ』『故郷が懐かしいなあ』と、そんな気持ちになってもらえれば、ただそれでいい。そう思えたんです」

昨年、家庭でフラワーアレンジメントが楽しめるキット「わくわくボックス」の販売を始めた。花、生ける土台やケースがセットになったもの。「カーネーションはトゲも無くて扱いやすい。ケースからはみ出してもいい。バランスが悪くてもいい。自由に楽しく、花に触れてもらえればうれしいですね」

振り返ればそこにある

現在育てているのは50品種以上。「無い色が無い」と言われるほど色が豊富なのもカーネーションの特徴だ。「個性にあふれていて、同じように見えても違う。人と一緒です」

大学時代、ポルトガルやスペインに留学し、現地の生産者のもとでカーネーションづくりを学んだ。当時、街で目にした忘れられない光景がある。「男性が大きな花束を肩に担いで電車に乗り込んでいった。その姿が映画のワンシーンのようにかっこよくて。しかも、とても自然で周りに溶け込んでいたんです」

決して非日常ではない。振り返ればいつもそこにあり、人や風景に寄り添っている。「花をそんな当たり前の存在にしたい」と真鍋さんは強い口調で語る。「目指すのは『品質が良くて長持ちする、お客さんに喜んでもらえるカーネーション』。スタッフと一緒に、愛情を込めて育てていきたいと思っています」

篠原 正樹

真鍋 佳亮 | まなべ よしあき

略歴
1981年 高松市出身
2000年 高松高校 卒業
2006年 香川大学農学部生物生産学科 卒業
      就農(香花園)
2015年 理事
2021年 代表理事

農事組合法人 香花園

住所
香川県高松市塩江町安原下1-558(香南農場:高松市香南町由佐堂所2116)
代表電話番号
087-897-0478
設立
1974年
社員数
31人
事業内容
カーネーションの育種、苗生産、切り花生産 他
地図
確認日
2022.04.07

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