笑顔の奥に光る強さ

デザイナー 平原 彩美さん

Interview

2015.07.16

シンプルな段ボールのパッケージに、水玉とストライプの包丁が収まる。かわいらしいデザインだが、高知県の伝統的工芸品「土佐打刃物」で切れ味は抜群。いの町の笹岡鋏製作所が作る包丁に、デザイナーの平原彩美さん(30)が新しい命を吹き込んだ。

「プロダクトデザインをしたことがなかったので、不安はありましたね」。普段は高松市の扶桑建材工業でイベントの企画やパンフレットの制作など広報活動を担う平原さん。2年前、デザイナーと商品にデザインを活用したい事業者を結び付ける四国経済産業局のマッチング事業に参加した。自分の世界だけでは出会えない人とつながれることに魅力を感じたからだ。

初めて製作所を訪れた時、昔ながらの作業場で職人の笹岡悟さんが鉄をたたいて一本一本作り上げる様子を見た。その技術とものづくりに対する姿勢をかっこいいと素直に思った。笹岡さんの作る刃物は男性からの人気が高かったため、ターゲットを女性に絞り、手に取ってもらいやすい包丁を作ることを提案した。

土佐打刃物は、切れ味は良いが鉄なのでさびやすい。洗った後はきちんと拭き取り、定期的に研ぐ必要がある。その手間さえも楽しむような、日々を丁寧に暮らす人のためのものを作ろうと考えた。

包丁の柄は、刃と同じく丁寧な扱いが必要な木材を使うことにこだわった。木そのものの色を生かせるデザインを考え、木工職人の知人に形にしてもらった。価格は1丁16,200円で、従来品の約2倍だ。それでも、これがほしいと選んでくれる人がいる。プレゼントにぴったりだとも喜ばれている。受注生産で、これまで100丁ほど売れた。

今まで土佐打刃物の良さを知らなかった人にも、笹岡さんの包丁を届けることが出来た。それがとてもうれしかった。製作所の看板のリニューアルも手掛け、今はハサミの新しいデザインを考えている。
「子どもの頃からものづくりに興味があり、何かを作る職業に就きたいと思っていました」。高松工芸高校で漆芸を専攻したのは、他県にはない香川の伝統工芸を学びたいという気持ちから。幼い時から親しんだ茶道と華道の影響もあった。「短大ではスペースデザイン科に進みました。もっと大きなものも手掛けてみたいと思ったからです」。グラフィックデザインの基礎を学び、照明器具や段ボールの家具を作るなど創作活動に励んだ。

卒業後、デザイナーとして香川県内の印刷会社に就職。自分がデザインした印刷物、作品を全国の人に届けたい。それが一つの目標だった。コンペで勝ち取ったポスターを制作し、それが全国各地の駅や空港に貼り出されると、大きな目標を達成したと思えた。「もう一度ゼロから新たなチャレンジをしてみたくなり、転職を考えました」

扶桑建材工業に入社し、広報部門である営業推進課の立ち上げに携わることに。「イベントなどでお客様と直接会えるのがうれしいですね」。3年前まで社外の会場で商品展示と工作教室を中心に開催していた「ココイチ夏まつり」を、会社の敷地内で行うことを提案。地域の人が気軽に集まれるイベントにしようと、ステージイベントやマルシェを取り入れ、内容もがらりと変えた。今年の夏まつりは7月19日に開催予定だ。

「そこまでデザイン能力に長けているとは思っていません。人と人を結び付けて、力が発揮出来る場をつくる。コミュニケーションをデザインするような、そんな力を伸ばしたい」。会社に貢献するのはもちろんだが、やれと言われたことだけするのは嫌なのだと言う。優しい笑顔の奥に、芯の強さが見える。挑戦をいとわない、その気持ちから人を引き付けるデザインが生まれているように思えた。

平原 彩美 | ひらはら あやみ

1984年11月 高松市生まれ
2005年3月 大阪芸術大学短期大学部 卒業
2005年4月 印刷会社 入社
2009年3月 印刷会社 退社
2010年8月 扶桑建材工業株式会社 入社
写真
平原 彩美 | ひらはら あやみ

扶桑建材工業株式会社

所在地
高松市郷東町216
TEL
087-882-5711
事業の概要
建築資材の卸販売業及び工事業
資本金
6,000万円
社員数
41人(2015年7月現在)
確認日
2018.01.04

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