
印刷そのものや印刷物が好きなのだという。学生のころからレコードジャケットや切手など美しい印刷物を集めていた。自分が好きなものを扱う店にしようと、全国各地や海外からレターセットやコースターなど紙の雑貨を仕入れている。興味を持った商品や作家を訪ねて、東京や京都など各地へ足を運ぶこともしばしば。「皆さんが欲しいと思っているものや、まだ見たことがないようなものを集めたい」

現在、印刷の主流となっているのはオフセット印刷と呼ばれる方法。それ以前、長く主流を占めていたのが活版印刷だ。活字を組み合わせて作った活版や、亜鉛で作った金属板など凹凸のある版を紙に押し当てるため、文字や絵柄のある箇所がくぼんだようになる。
活版の製造と印刷は、市内の印刷所に依頼。飯田さんは印刷物のデザイン作成や、印刷作業に立ち会って仕上がりの調整を行う。「活版を作るには職人の技術が必要。ほんのわずかな隙間があるだけで、印刷できないんです。伝統ある技術を残すことに貢献できれば」
かつては、活版印刷だと分からないように押すのが、職人の腕の見せ所だったそうだ。今は、あえて活版と分かるように押してもらう。「手触りも楽しいし、インクのかすれやムラも味わい深いですね」

オープンから1年あまり。「こんなものが作れないか」という相談も受けるようになり、だんだんと「かみをり」の存在が知られてきたと感じている。商店街に店を設けたことも良い作用があるようだ。
店の入り口にさりげなく生けられたテッセン。花をきっかけに、足を止めてくれる人もいる。自分に足りないものを補いたいと思い、通い始めた生け花は、6年ほど続けている。
「ゆくゆくは、店内で活版印刷を体験できるようにしたい。活版や印刷物の魅力を感じてもらえたら。ほかではできないことを提供する、プロフェッショナルでありたいですね」
飯田 博 | いいだ ひろし
- 1970年1月 高松市生まれ
1988年3月 高松工芸高校 卒業
ジュエリーのデザイン・制作会社に3年間勤務後、出版社を経て、印刷会社に勤務
2013年4月 「かみをり」オープン
- 写真
かみをり
- 所在地
- 高松市田町7−1
- TEL
- 087-861-0875
- 事業の概要
- デザイン・各種印刷(名刺・ハガキ・招待状・大判ポスターなど)、雑貨販売
- 確認日
- 2018.01.04
おすすめ記事
-
2020.10.01
アンティークの魅力を建築を通して伝えたい
アールデザインYOSHIE 建築デザイナー・村上良枝さん
-
2015.07.16
笑顔の奥に光る強さ
デザイナー 平原 彩美さん
-
2025.01.03
質のいい睡眠を提案し
本当にいいものを「知る」空間西岡家具店 代表取締役 西岡政憲さん・満井美佳子さん
-
2023.12.07
超インテリアの思考
著:山本 想太郎/晶文社
-
2020.01.03
なぜ香川には美しいものがたくさんあるのか (後編)
中條亜希子
-
2019.12.05
なぜ香川には美しいものがたくさんあるのか (前編)
中條亜希子
-
2019.04.04
邦坊が手掛けた鴨尽くしの銀波亭
灸まん美術館 西谷美紀
-
2017.04.20
デザインで面白く
瀬ト内工芸ズ。 部長 村上 モリローさん
-
2018.10.04
面白い発想を思いつくためには?
株式会社 新閃力 代表取締役社長 尾崎 えり子
-
2018.07.05
小さな円が世界への縁に
ハッピーサークル 松浦産業
-
2018.05.03
水平、垂直方向にかみ合うから強い
車道対応型舗装ブロック「ストロングペイブ」 日本興業
最新紙面情報
Vol.402 2025年03月20日号
楽しみながら自分を表現する
かがわ総文祭生徒実行委員会
未来の“きざし”を体感するイベント 「サニピッチ」開催レポート
サニピッチ2025
花あかり
Photo:T.Nakamura