職人育成と若者の自立支援を両輪で

匠の学び舎技心館 理事長 白川 勝さん

Interview

2022.11.03

建設会社の経営者として、業界の人材不足、特に職人層の減少を痛感してきた白川さん。「親方に弟子入りして学ぶ職人文化の崩壊と、建設業界そのものの縮小による、全国規模の問題です。海外からの労働力にも頼ってきましたが、日本の伝統技術の継承には国内できちんと取り組む必要がある」と指摘し、若手技術者の育成を目指す学校を立ち上げたのが2016年のことだ。

その当時、生徒のほとんどは、中学卒業後も不登校や引きこもりで高校生活を送っていない子どもたち。里親としても長年活動してきた白川さんには、彼らに社会で自立する道を開きたい思いもある。
現場研修風景

現場研修風景

カリキュラムは3年制。9割の生徒が所属する「建設職人育成コース」は、理念に賛同する地元建設企業の協力の下、1年次は16業種を2週間ずつ経験するインターンシップから始まる。2年次は実習先を1つに絞って専門性を高め、3年次にはある程度仕事を任されるレベルを目指す。協力企業からの寄付を奨学金として学費に補填し、実習が進むほど自己負担が軽くなるシステムだ。もう一つ、不登校・引きこもり支援の「SOLコース」があり、いずれも3年間で高校卒業資格が取得できる。

当初は「何となく…」で入学した子も、進級するにつれて顔つきが変わる。「毎日違うことが学べて楽しい、と目を輝かせます。社会人の中で日々揉まれて、技術だけでなく社会勉強も積んで、もう半ば社会に出ているようなものですよ」。発足当初は手探りで苦労もあったが、3期生から2名が協力企業へ就職したことを弾みに、在学中の5~7期生33人にも期待をかけている。
協力企業にとっては「現場の若手が増える」「卒業後に社員となる可能性がある」点が魅力で、賛同者も増加中。各地域の中学校に直接アプローチしているほか、オープンスクールで実際に見てもらう機会を設け、メディアを通じた知名度向上にも取り組む。香川県・香川県建設業協会をはじめ(一財)建設業振興基金や大手建設会社からの助成も受けるようになり、サポートが整ってきた手応えを感じている。

四国だけでなく岡山や広島でも認知度が向上し、「このまま関西まで広げたい」と意欲的。まず建設業界でモデルルートを確立して、将来的には他の分野にも選択肢を広げていきたい構えだ。女性職人の育成も今後の課題の一つだという。「誰もが社会で生きる力をつけ、才能を生かせる、そんな場所になりたいですね」

戸塚 愛野

白川 勝 | しらかわ まさる

略歴
1954年 善通寺市生まれ
1973年 多度津工業高校卒業
1989年 大企建設株式会社を設立
    代表取締役に就任
2012年 同相談役に就任
2015年 NPO法人こんぴら鞘橋荘設立
    同理事長に就任
2016年 (一社)匠の学舎設立、理事長に就任

一般社団法人匠の学び舎技心館

住所
香川県仲多度郡琴平町45番地
代表電話番号
0877・89・1676
事業内容
建設職人育成・自立支援
香川県認定職業訓練校
地図
確認日
2022.11.03

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