広く深い知識で ニーズに応える建築士

アイディール設計集団 会長 大北 和則さん

Interview

2015.02.05

意匠や法令順守など技術・知識の面で建築士への要望は多岐にわたる。顧客も多くの情報を自ら収集できる時代になり、専門家としてより広く深い知識が必要とされている。しかし、建築士により専門分野は異なる。例えば住宅は得意だが、商店や病院の経験は少ないなど。

そこで、各分野から講師を招いて定期的に勉強会を開こうと集まったのが、アイディール設計集団だ。会長は大北和則さん(58)。「建築士同士、抱えている悩みや勉強したい気持ちは同じ」と話す。

メンバーは5人の建築士。それぞれ住宅、福祉施設、デザイン、法的手続きなど得意とするところは違う。「人が集まると勢いや渦のようなものが生まれます。知識や経験などいろいろなものを巻き込みながら、その輪を広げたい」。2014年4月から活動を開始した。
人口減少に伴い、住宅や商業施設など建築物の新築も減っていく。新築住宅の着工棟数は、全国で年間90万棟と言われているが、数年で60万棟まで減少するとの予測もある。これには人口減少だけでなく、リノベーションやリフォームによる中古住宅の人気も影響しているそう。

人気の中古住宅だが、売買には注意が必要だ。柱のひび割れや埋設されている水道管の劣化など「瑕疵[かし](欠陥)」が購入後に分かった場合、修繕費は購入者の負担になってしまう。

新築住宅には、欠陥があった場合の修繕費を補償する「瑕疵担保責任保険」の付与が義務付けられている。需要の高まりにより、今後は中古住宅でも広まっていくと考えられる。

中古住宅に同保険を付与する際は、建築士による検査制度が設けられている。建築士が検査した中古住宅に保険が適用され、その住宅を購入後、一定期間内に雨漏りや構造材の不具合が起きた場合、修繕費が補償される。

アイディール設計集団はこの制度に着目。「検査制度を普及、定着させることも活動目的の一つです。家は大きな買い物。予想もしないようなトラブルから購入者を守り、安心して中古住宅の売買ができるようにしたい」

アイディール設計集団は「高田まちづくり推進協議会」の活動に参加。高松市の高田団地で中古住宅の検査を行っている。現状を外回りと内装でチェック。梁や柱にひびはないか、白アリの被害はないか、耐震強度はどうか。作業は専門的な知識を基に進められる。

高田団地は1970年代に入居が始まった。今は住民の高齢化が進み、空き家が目立つように。アイディール設計集団は、空き家のうち14軒の検査を行う。「中古住宅にどんな付加価値を付けるか。空き家の処理をどうしていくのか。誰にとっても身近な問題であり、地方に限らず全国的な課題でしょう」
「おいしいパンを食べていたら、パン職人になっていたかもしれませんね」と笑う大北さん。建築学部で学んでいた大学生の時、イタリアへ旅行した。

ミラノ、フィレンツェ、ローマとイタリアを縦断。建築物や景色の美しさ、色彩に魅了された。「この風景と同じ絵を描きたい」。その思いを胸に帰国、建築士となった。「感動を形にしたい。それを見た人が、また自分と同じように感じてくれたら」

好きな言葉は「ベストを尽くせ」。一人ではできないことも集団になれば挑戦できる。「集団として走り始めたばかり。中古住宅の検査制度について勉強会を開催したい。住宅に関する金融支援や税制度についても学びたいですね。いずれはアイディールで一つの建築物を造れたら」

学生時代に眺め、魅了された美しい景色。それを形にする時が来たのかもしれない。

大北 和則 | おおきた かずのり

1956年9月 高松市生まれ
1979年3月 大阪工業大学 卒業
1979年4月 株式会社大北建築事務所 入社
1999年12月 住空間設計 設立
2014年4月 アイディール設計集団 会長
写真
大北 和則 | おおきた かずのり

アイディール設計集団

所在地
高松市国分寺町福家甲2770-5
TEL
090-3189-6091
事業の概要
建築設計コンサルタント業務に関連する勉強会・講演会・セミナーなどの企画・開催、住宅の調査・企画・設計・監理業務など
会員数
5人(石尾 健司、大北 和則、山口 悦代、山口 美芳、山本 透)
確認日
2018.01.04

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ