地域とともに車と楽しむ人生

もともとは知由さんの父が自動車整備工場として創業し、徐々に事業を拡大してきた。

知由さんは26歳で入社。そのころ感じていたのは、車を購入した後はディーラーに行きづらいということ。「もっと気軽に行けるショールームを作りたい」と、本社から離れた場所に「フットワークスポーツ」をオープンした。

「息子は親父と同じ店に行くのが嫌でしょう。だから息子世代のために作りました」。店名はフットワークを軽くニーズに応え、車を使った遊び（スポーツ）を提案するという意味。店内はアウトドア用品店のようでもある。「キャンプ、ダイビングなど車を使う遊びはたくさんあります」

知由さん自身もアウトドアを楽しむ。「仕事と遊びは100%力を出し切ってやるもの。遊びの中にヒントがあります。商品やサービスが良ければ、自然とまた行きたいと思えるものです」。自身が遊びの中で感動したことを仕事にも生かす。

知由さんは、ロータスクラブ香川県支部の支部長も務める。ロータスクラブとは自動車整備業のネットワークのこと。全国で1600社以上、県内の26社が加盟している。「ロータスは、整備事業を中心にトータルサービスを強みとして、仲間と共に繁栄していこうと考えている経営者集団です」。加盟店の確かな技術を保証するものでもある。香川県支部では、技術向上と情報共有のため毎月勉強会を行う。

45歳で経営者となった知由さん。業界全体で世代交代を促す必要があると考えている。ロータスクラブでは「スマイル事業部」という活動を展開。スマイル事業部講師が、スマイルファクトリー加盟店の経理を含めた総合チェックと経営者と社員の面談を行い、経営改善に向けたアドバイスをする。知由さんも講師の一員で、業界内での情報共有の大切さや、次世代への引き継ぎの必要性を説く。

「60歳を過ぎたら、違う角度から業界を見てみたい」。2年前には、他社で経験を積んだ息子の雄一さん（30）が入社した。「経営者の背中には、いつも社員と社員の家族がいます。それを活力として、道を切り拓いてほしい」

本社工場では、毎年秋に「お客様感謝祭」を開催している。日中仕事がある人も参加できるよう、土曜日の午前11時から午後8時まで顧客を招待。焼き肉やゲーム大会が行われ、祭りのようににぎわう。感謝祭の歴史は30年を超えた。

「毎月1日は、近隣の河川敷清掃を行っています」と雄一さん。知由さんも「地域に生かされているので恩返しですね。身の丈に合ったことを続けられたら」と話す。受け継がれるのは、技術はもちろん、その心意気なのかもしれない。