
代表取締役の大山育江さん(61)は、結婚を機に酪農の世界に飛び込んだ。結婚前は小学校の教師をしていた。そのとき給食を食べていたからこそ「牛乳は安全でおいしいものでなければ」と、生産者の責任を感じている。
創業は義父の英一さんで、夫の由仁さんが2代目。育江さんが就農後まず取り組んだのは、牛舎の新設だ。自宅の一角で飼っていた牛を、離れた場所に移した。生活と仕事の場を区別し、牛を20頭から40頭に増やして規模を拡大。
「建物の基礎はプロに任せましたが、ほかは父と夫と私の手づくり。今も使っている牛舎は、私の酪農人生のシンボルです」。そして、飼料も自分たちでつくることにした。牛を育てながら牧草も栽培し、文字通り朝から晩まで働いた。飼料を自家製にしたことで、収益はアップ。経営は順調だった。

ジャージーはホルスタインと比べて、体が小さく乳量も少ないが、生乳の乳脂肪やタンパク質の含有量は多く、「うまみ」と「こく」がある。大川・寒川・長尾地区に70軒あった酪農家のうち、9軒がジャージーに挑戦することとなった。
ところが95年、阪神淡路大震災が発生。生乳のほとんどが大阪で加工されていたため、育江さんは販売経路が絶たれてしまうのではと危機感を覚えた。すぐさま「自分たち酪農家で牛乳の販売ができないか」と農協に掛け合った。
間もなく大山牧場は、農協ブランドのジャージー牛乳の県内宅配を開始。育江さんは、東は引田から西は豊浜まで、1週間で400軒を訪問し、サンプルを配布。「人との出会いが財産になりました」と振り返る。消費者と顔を合わせることがなかったため、直接会える宅配はうれしい時間でもあった。
9軒あったジャージー農家は次第に数を減らし、今では大山牧場のみに。「農業が素晴らしい仕事だと知ってほしい。生産から流通まで自分でできますから。牛は小宇宙です。何年育てても不思議。牧草を食べて、栄養たっぷりのミルクをつくってくれる素晴らしい生き物に感謝しています」
うしおじさんの店頭に並ぶ商品は毎日完売する。なぜなら、夕方になると、育江さんが車に商品を積み込み、周辺の施設などを回って売り切るからだ。「牛にも商品にも愛情を持っています。全ておいしく食べてもらいたい」。高松市丸亀町にオープンした2号店でも牧場の心は忘れない。

「自分を信頼して、全てを任せてくれた父の思いに応えたい。『家業』を『企業』に成長させたいですね」。昨年亡くなった英一さんへの思いを語る育江さんの目には、光るものがあった。
大山 育江 | おおやま いくえ
- 1953年1月 岡山県旧山陽町生まれ
1975年3月 ノートルダム清心女子大学児童学部 卒業
1975年4月 聖母被昇天学院小学校 就職
1976年3月 結婚・就農
2013年2月 大山牧場代表取締役 就任
- 写真
有限会社大山牧場
- 所在地
- さぬき市大川町富田西215-2
- TEL
- 0879-43-6134
- 事業の概要
- 農畜産物及び乳製品・菓子の生産・加工・販売
- 資本金
- 1000万円
- 従業員数
- 16名(パートを含む)
- 確認日
- 2018.01.04
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