時は7世紀、飛鳥時代。藤原京は西暦694年に完成した日本初の中国式の都だ。藤原宮とよばれる宮殿や塀が初めて瓦葺になった。建設には数年間のうちに200万枚以上の瓦が必要になり、和泉や淡路、近江とならび遠く海を隔てた讃岐でも瓦が生産された。大和朝廷は、地方豪族を介して必要物資の調達を行ったが、藤原宮から約200kmも離れたここ吉津宗吉の地に白羽の矢が立ったのだ。背景には既に大量生産が可能な体制が整っていたこと、朝廷とつながりの深い有力な豪族である丸部臣氏がいたためと考えられている。
現在、この地は宗吉瓦窯跡史跡公園として整備されている。初めてこの地に立ったとき胸が躍った。丘の斜面に24基もの瓦窯が並び、17号窯は全長約13mで日本最大級、中央の16号窯は実物大で復元されている。工人たちの息遣いが聞こえるようだ。大規模瓦製造団地や高い技術者集団の在り様もすごいが、瀬戸内海を摂津の難波津へ、そして大和川、飛鳥川を遡り藤原京まで舟で大量の瓦を運んだことも驚きだ。わが国初の本格的な都の建設に我々の先人も参画していたことは讃岐人としての矜持を掻き立てられる。
元文化庁長官の青柳正規氏はかつて講演で、「過去は未来を映す投影機の光源である」とおっしゃった。地域の過去を学び、現在を考え、未来を描くことの大切さをお教えいただいた。今、三豊市立吉津小学校では「宗吉学習」に取り組んでいる。郷土の歴史を学ぶことで、子どもたちはどのような未来を描いていくのだろう。文化遺産には実に多くの事を教えられる。
香川県教育委員会 教育長 工代 祐司
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