「ケ」の郷土料理

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸

column

2016.08.18

収穫を待つ三豊ナス

収穫を待つ三豊ナス

讃岐の食文化では、日常的な食材を使い簡素に手早く仕上げる「ケ」の料理と、貴重な食材をふんだんに使い手間暇かけて仕上げる「ハレ」の料理を明確に区別することができます。今回は、讃岐の食文化の「ケ」の存在に注目してみましょう。

香川県は古来より人口密度が高く、耕地面積も狭いため、主食である米の生産に限界がありました。そのため、狭い土地を高効率に活用し一年を通じて様々な食材を収穫することで、安定的に食材を確保してきました。

讃岐の食文化を代表する料理としてあげられる「押しぬきずし」や「手打ちうどん」は、特別な日に米や麦などをふんだんに使い手間暇かけて仕上げる「ハレ」の料理です。一方で、豆や芋、季節の野菜をメインに使い、主食である米をいかに少なく食べつないでいくかという基本的なコンセプトのもとに進化したのが、日常的な「ケ」の料理です。

季節ごとの「ケ」の郷土料理とその材料を連想すると、春の「しょうゆ豆」にはソラマメが、秋の「イモタコ煮」にはセレベスが、冬の「マンバのけんちゃん(おせっか)」にはマンバが、「ワケギ和え」にはワケギと、季節を代表する食材の存在が見えてきます。

そして、夏場で特に重要視された食材がナスです。ナスは、夏場の暑さにも耐えて夏から秋の終わりにかけて次々と実りをもたらします。実際、「ナスの木を年越し(冬が深まるまでナスを畑に放置)してはいけない」という言葉が残っており、天候さえよければ12月まで収穫が可能な野菜です。

ナスを使った特徴的な伝統料理が「ナスそうめん」。鍋一つで手軽に作れ、塩味の効いたナスそうめんは、暑く厳しい讃岐の夏にもってこいの料理です。夏場にたくさん収穫されるナスを美味しくいただくために進化した、ナスを使った「ケ」の料理の代表と言えましょう。

その季節にたくさんある食材を、手早く、簡単に、大量にそして美味しく調理するために進化した料理が「ケ」の郷土料理です。郷土料理は煩わしそうに思われ敬遠されがちですが、実は現代の調理器具を持って取り組むと、いとも簡単に作ることができる料理であることに気づくでしょう。そうそう失敗する料理でもありませんので、是非一度挑戦してみてください。

ナスそうめん

【材料(4人分)】
・三豊ナス:中2個
・そうめん:100g
・だし汁(いりこ):700cc
・薄口しょうゆ:50cc
・砂糖:30g
・しょうが汁:1片
・油、ごま油:少々

【作り方】
(1)ナスは縦8等分に切り、斜めに切り目を入れて水につける。
(2)厚手の鍋に油を入れてよく熱し、水気を切ったナスを加えて軽く炒める。
(3)(2)にだし汁、しょうゆ、砂糖を加える。
(4)煮えてきたら、そうめんを入れて、ごま油としょうが汁を加える。
(このとき煮えすぎないよう注意する)
※ゆでたそうめんをいれるようにしてもよい。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

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