自社一貫体制で挑む商品の「顔」作り

北四国グラビア印刷 代表取締役社長 奥田 拓己さん

Interview

2011.02.17

買い物をする際、包装しているパッケージを見比べて商品を買った、という経験は恐らく誰にでもあるだろう。例えばおいしそうなうどんがデザインされた「冷凍讃岐うどん」のパッケージ。実は奥が深い。
「温かい釜あげと、冷たいざるでは麺の色が違うんですよ」
食品などの商品パッケージを製造している北四国グラビア印刷の社長、奥田拓己さんはこう語る。「パッケージはあくまで裏方です。しかし商品の『顔』でもあるんです」

最高の状態を表現

スーパーなどで日々無数に目にする商品パッケージ。奥田さんは「裏方」と話すが、消費行動を左右する重要な要素のひとつであることは間違いない。

「常に考えているのは、商品の最高の状態を表現すること。『これを買いたい』と思ってもらうことです」

観音寺市の北四国グラビア印刷。食品や工業製品、日用雑貨など多岐にわたる商品のパッケージを製造している。4年前には東京に営業所を設置。取引業者は全国で150社を超える。

手強い「うどん」

グラビア印刷―。金属板を彫刻し、その凹んだ部分にインキを入れてフィルムなどに転写する。微細な濃淡の表現などに優れ、紙幣印刷にも使われている手法だ。食品のシズル感や柔らかさを実物に近く再現できるその精巧さを生かし、北四国グラビア印刷でも製品の約7割を食品関連が占める。

「お客様からは『もっとおいしそうに』とか『サクサク感を出して』という漠然とした要望が多いんですが、打ち合わせを重ねて狙いを絞り、忠実に印刷に反映させていきます。それが私たちの使命です」

印刷技術は日々進化しているが、この地域ならではの苦悩もある。「うどんの『白』や『コシ』を出すのって難しいんですよね。ハイライト部分をしっかり表現しないといけないし、かと言って色をつけ過ぎると黒ずんだりします・・・・・・奥が深いですね」

全工程を自社で

パッケージ製造には企画、デザイン、製版、印刷、加工、製袋など様々な工程がある。印刷業界、特に中小企業では、それぞれの工程ごとに専門の業者が請け負うのが一般的だ。北四国グラビア印刷も元々は印刷分野が専門だった。しかし奥田さんは約10年前、会社の舵を大きく切った。企画から納品までの全工程を自社で完結させる「一貫製造体制」の構築を目指したのだ。

「今はどの企業も『多品種少量生産』の方向に進んでいて、それに伴って納期も大幅に短くなっています。全工程を一括コントロールすることで納期の短縮や業務の効率化、そして何よりお客様の多様な要望に応えることが可能になったんです」

しかし同時に課題も生まれた。それぞれの部門が、専門業者以上の技術レベルを身につけないと顧客からの信頼は得られない。そして部門間の連携・コミュニケーション。これが欠けると「一貫体制」が意味をなさなくなる。

課題をクリアするため、奥田さんはあるものを取り入れた。「正規社員雇用」だ。

正社員とレクリエーション

従業員は現在85人。そのほとんどが正社員だ。「安心して働ける環境を整えて、一人ひとりがレベルを上げていく。それが、自社製品を作る喜びにも繋がっていくと思うんです」

そしてもうひとつの課題「連携強化」についても奥田さんはユニークな試みに出た。「事業計画や目的、予算もしっかり議論して・・・・・・けっこう真面目にやってるんですよ」

社員同士の交流を図ろうと、「レクリエーション委員会」を設置。花見やハイキングなど、定期的に社内行事を企画・運営している。「でも運動会は大失敗でした・・・・・・」。去年11月に行った運動会。会社の繁忙期と重なってしまい、参加できない人や途中で仕事に戻った人が相次いだという。「逆に負担をかけてしまいました・・・・・・」申し訳なさそうに話す奥田さんの表情から、社内の温かい雰囲気が伝わってくる。

攻めの姿勢を前面に

パッケージ製造は決してデザイン印刷だけではない。食の安全安心が叫ばれる今、包装した商品自体を守るという重要な役割もある。また地元海産物の商品ではパッケージを開けた瞬間、瀬戸内の香りが心地よく広がる・・・・・・「お客さんがパッケージを開いている姿をよく想像するんです。お店で買って持ち帰って食べるまで、パッケージには大きな責任があると思うんです」

父親の跡を継いで社長に就いて丸5年。去年は創業40周年と、大きな節目を乗り切った。今年、奥田さんは様々な、新たな試みに挑もうと計画を進めている。企画力強化のためのソフト開発拠点の設置、そして・・・・・・

「作業効率や納期順守率を上げるため、製造の仕組みをゼロベースから作り直す予定です。改善や改革ではなく・・・・・・『革命』ですね」。さらに力強くこう加えた。「50周年を目指すスタートの年として、今年1年は攻めの姿勢を前面に出していきます」

奥田 拓己 | おくだ たくみ

1963年 観音寺市生まれ
1987年 立命館大学 卒業
    東洋インキ製造株式会社 入社
1991年 株式会社北四国グラビア印刷 入社
2006年 代表取締役社長 就任
写真
奥田 拓己 | おくだ たくみ

株式会社 北四国グラビア印刷

住所
香川県観音寺市粟井町755
代表電話番号
0875-27-9280
設立
1976年
社員数
95人
事業内容
グラビア印刷による軟包装資材の企画、設計、および製造
沿革
1970年 観音寺市八幡町に北四国グラビア印刷 創業
1976年 株式会社北四国グラビア印刷 設立
1992年 観音寺市粟井町に本社、工場を新築移転
2007年 東京営業所 設置
資本金
4500万円
地図
URL
http://www.kitashikoku-g.co.jp/
確認日
2018.01.04

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