企業も学生も「共に育つ」
新しい学びの場を創出

香川県中小企業家同友会 代表理事 林 哲也さん・小西 啓介さん

Interview

2024.08.01

成果発表会のにぎわい

成果発表会のにぎわい

業種の枠を超えて、中小企業の連携と問題解決、地域貢献を目指す中小企業家同友会。2019年から県内高校生を対象に「共育型インターンシップ」事業を進めており、1校から始まって現在は5校が参加するまでに拡大。いわゆる採用を前提とするジョブ型の仕事体験ではなく、企業の採用活動も禁じて「長い目で地域の未来を見すえた学びの場・成長の場」とし、高校生と企業が「共に育ち合う」関係を目指している。

共育型インターンシップは、企業見学を中心に地域産業や伝統の現場を学ぶファクトリーツーリズム「CRASSO」、災害時の企業連携を目指す「災害時ココイコMAP」とともに、同友会が「地域づくり三本の矢」として力を入れる事業の一つ。1社につき受け入れる学生は1人のみ、自分で受け入れ企業に連絡を取るところから始まり、2~3日間のインターンシップ中は企業の担当者や経営者と一緒に動いて中小企業のリアルな現場を「見る」こと、そこから生まれた疑問を積極的に投げかけることに重きを置く。

三木高校の総合学科1年生を対象に夏休みに実施したことを皮切りに、コロナ禍中も出張講話などに形を変えながら継続。少しずつ実施校が増えたが、一方で「最初は理解を得られず、アウェーな状況から始まったこともありますよ」と林さん。「でも、学生たちはたった数日でも社会や仕事に対する解像度が一気に上がり、具体的な未来を描くきっかけをつかみます。彼らの変化を目の当たりにすると、先生方の反応も大きく変わるものです」。インターンシップを経た学生たちは、興味関心や進学意欲の変化とともに中小企業のイメージが明確になる傾向もあり、林さんは「保護者をはじめとする地域の大人たちに向けた情報発信の意味もある」と力を込める。

受け入れ企業には「人間尊重経営」と「明確な経営理念がある」ことを重視し、規模は問わない。学生たちに対応する中で自社の存在価値を見つめ直したり、準備のための社内ワークショップで経営層と社員の交流が深まったりといった活性化につながっている。中には「ずっと一人でやってきたが社員を雇用しようという気になった」と心境の変化を語る経営者も。受け入れ企業の経営者である林さんも「双方にとっていい刺激になっている」と実感する。

インターンシップを終えた学生たちは、受け入れ企業のことを自分なりにまとめて「成果発表会」で一人一人披露する。自身で体験したのは1社でも、全員分なら約70社のことが学べる学習の場であり、校内にとどまらずOBや校長会なども含めた多くの人が集まる一大イベントになりつつある。

取り組みの活況を受けて、2022年には県教育委員会と包括的連携協定を締結。県外の同友会も視察に訪れ、共育型インターンシップは県外へも広がりを見せる中、今後の目標は参加校を増やすこと。小西さんは「行政や県外からも注目されるようになり、実施規模を拡大したい思いはありますが、そのためには我々が『いい企業』でなくてはいけない。理念に共感して学生たちを受け入れるにふさわしい企業づくりを目指してくれる仲間を増やしたいですね」と意気込みを語る。

一般社団法人 香川県中小企業家同友会
TEL:087-869-3770(事務局)
高松市林町2217番地15
香川産業頭脳化センタービル4F
受け入れ先企業での交流の様子。学生から鋭い質問が飛び出すことも

受け入れ先企業での交流の様子。学生から鋭い質問が飛び出すことも

戸塚 愛野

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