~中小企業の業績回復は鈍い~
第22回「香川県新型コロナウイルスに関するアンケート」調査

東京商工リサーチ

Research

2022.09.01

新型コロナウイルスの企業活動への影響について、「すでに収束した」と答えた企業は12.9%で、前回調査(4月・11.3%)から1.6ポイント増加した。調査時には新規感染者が減少、感染防止と経済再活性化への動きが進んで企業活動への影響が緩和された様子が窺われた。

ただ、今年5月の売上高(単月)がコロナ前(2019年5月)を上回った(横這い含む)企業は31.9%にとどまった。業績の回復度合いは企業間で乖離が大きく、経済活動の波に乗り切れない業種を中心に休廃業や倒産、私的整理に向かうケースが出てきそうだ。

在宅勤務を「現在、実施している」企業は16.1%。「実施したが取りやめた」と回答した企業は19.4%で、コロナ禍で広がった在宅勤務だが、業績や労務管理、効率化などの評価が難しく、浸透しきれない実状を反映している。コロナ禍で隠れていた「人手不足」が顕在化するにつれ、労働環境の整備が遅れた企業は採用難に直結する恐れも出ている。
【調査概要】
※本調査は6月1日~9日にインターネットによるアンケート調査を実施。有効回答62社を集計分析した。
※前回(第21回)調査は、2022年4月20日公表(調査期間:2022年4月1日~11日)。
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満や個人企業等を中小企業と定義した。

「減収企業率」、中小企業は46.8%に及ぶ 7割近くがコロナ前に戻らず

22年5月の売上高(単月)が、昨年5月と比べた規模別の「減収企業率」は、大企業が0.0%なのに対し、中小企業は46.8%(47社中、22社)。前回調査では、それぞれ100.0%、54.1%であり、回復基調にあるものの、中小企業の回復は鈍い。コロナ前の2019年5月と比較すると、大企業の100.0%(1社中、1社)、中小企業の67.4%(46社中、31社)が減収であり、業績の回復までには、かなりの時間が必要であろう。

「在宅取りやめ」が19.4%

在宅勤務を「現在、実施している」は、16.1%(62社中、10社)だった。一方、「実施したが取りやめた」は19.4%(12社)だった。規模別では、大企業で「現在、実施している」は66.7%(3社中、2社)に対し、中小企業は13.6%(59社中、8社)だった。

「廃業検討率」は3.5% 「事業再生検討率」は5.6%にとどまる

廃業を検討する可能性が「ある」と答えた企業は3.5%(57社中、2社)だった。前回調査(4月・6.3%)から2.8ポイント改善した。規模別では、大企業で「ある」と回答した企業はなく、中小企業は3.7%(54社中、2社)だった。

コロナ禍の収束が長引いた場合、再生支援協議会や事業再生ADR、民事再生法などを活用して「事業再生」を検討する可能性は、「ある」は5.6%(54社中、3社)。規模別でみると、大企業で「ある」と答えた企業はなく、中小企業は5.9%(51社中、3社)だった。
ワクチン接種の浸透や感染防止策が進むなか、コロナ禍に追い打ちをかけるように円安、資源高が加速し、業績回復のスピードは規模や業種で格差が生じている。円安やウクライナ情勢など、コロナ以外の外的要因で経済が冷え込むと、「廃業検討率」や「抜本再生検討率」が更に悪化する懸念もある。

東京商工リサーチ 四国地区本部長兼高松支社長 有馬知樹

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