リスクあるところに保険を届ける

日本総険 社長 葛石 智さん

Interview

2023.10.19

高松市サンポートの日本総険本社

高松市サンポートの日本総険本社

“顧客目線”の保険仲立人

損害保険や生命保険などの保険商品は、商品を開発する保険会社に代わって、保険代理店が顧客に販売するのが一般的だ。

だが保険商品を扱う日本総険は、保険代理店ではない。葛石智社長(77)の名刺には、“保険仲立人”とある。「『保険仲立人』も保険代理店と同様に、保険商品を流通させる業者です。しかし根本が違う。保険代理店は“セラーズエージェント”と呼ばれ、顧客に商品を“売り”ますが、保険仲立人は“バイヤーズエージェント”。顧客から委託を受けて保険会社に商品を“買い”に行く。つまり私たちは『顧客側』にいるんです」

日本総険が手掛けるのは、法人向けの損害保険。北海道から沖縄まで、製造、流通、サービスなどあらゆる業種の法人約1000社の損害保険を取り扱う。「顧客の要望通りの商品を保険会社から買うには相当の技術が必要。その技術力こそ、私たちの一番の強み」と葛石さんは胸を張る。

保険仲立人の『技術』とは何なのか。「顧客が望むのは、リスクをカバーする“良い条件”の商品を、“より安く”購入すること。でも、ただ腕まくりをして保険会社に『保険を買いたい』と持ち掛けたところで、安く買えるわけではありません」

たとえば、ある部品工場が火事になれば、機械設備は壊れ、製造ラインが止まる。社員の給料は払えなくなり、部品供給もできないため、取引先のラインも止めてしまう。
東証「TOKYO PRO Market」に上場

東証「TOKYO PRO Market」に上場

企業はどんなリスクを抱えていて、その頻度はどの程度なのか。万が一リスクが発生した場合、どのくらいの損害が出るのか―

「あらゆる角度から顧客を見つめて分析し、正確な情報を材料に、保険会社と交渉するのが保険仲立人です。技術とは『分析力』と『交渉力』。高度な技術で企業が抱える様々なリスクを掌握し、私たちが掲げるミッション『リスクあるところに保険を届ける』を実践していきたいと思っています」

最近では、車の自動運転、サイバー攻撃など、いわゆる「ニューリスク」が次々と生まれている。企業を取り巻くリスク環境が日々変化しているからこそ、「やりがいも大きい」と葛石さんは力強く語る。

保険をクラウドで“共同利用”

「一定規模以上の会社は、保険を選べます。でも、そうじゃない会社もあります」

「保険難民」という言葉がある。保険に入りたくても入れない、中小零細企業の経営者や個人事業主を指す。「保険商品を買えたとしても割高だったり、カバーしているリスクの条件が良くなかったり…。事業があるところにはリスクがあり、事業者は皆リスクを抱えている。会社の大小は関係ありません」
上場通知書

上場通知書

保険加入が会社の足かせにならないよう、日本総険が新たにつくったのが、少額から加入できる保険サイト『みんホケ』。全国で初めての“クラウド型”の保険の仕組みだ。「同一業種、同一規模の小規模事業者でまとめて掛け金を支払います。保険料をできるだけ抑え、保険を『共同利用』するやり方です」

日本総険では「みんホケ」のビジネス特許も取得。「たとえ規模は小さくても、頑張っている経営者の力になりたい」。葛石さんは何度も繰り返す。

上場で知名度アップ目指す

大学で学んだのは機械工学。エンジニアを目指し、キャリア官僚につながる国家公務員上級試験の一次試験にも合格した。「種子島でロケットを打ち上げたいという夢もありました」

だが、保険代理店を営む父の影響で保険業界へ。いわゆる“保険会社側”に身を投じたものの、「『保険は絶対に顧客本位であるべきだ』と強く感じていました」

1994年10月、当時まだ日本にはなかった「保険ブローカー(保険仲立人)制度」の導入を目指す国の審議会にも委員として参加。96年4月に制度ができるや否や、50歳で独立。日本総険を立ち上げた。
小規模事業者を守り、事業の発展に貢献したい

小規模事業者を守り、事業の発展に貢献したい

現在、保険代理店は全国に約15万社。一方、保険仲立人は55社程度しかない。「保険ブローカーは欧米では一般的。ですが、日本では制度ができて30年足らず。まだまだこれからです」

創業後、着実に業績を伸ばす中で、ずっと考えていたことがある。「もっと多くの人に保険仲立人の存在や価値を知ってもらいたい」。今年8月、日本総険は「東京証券取引所TOKYO PRO Market」へ、業界初の上場を果たした。「これを機に業界の知名度アップにつなげ、会社の価値、社員の価値を上げていきたいと思っています」

リスクに遭わないのに越したことはない。だが、万が一その時が来たとしても「事業を止めることなく、さらに発展できるよう貢献したい。そのためにも私たちは、これからもリスクの探究を続けていきます」

篠原 正樹

葛石 智 | かっせき さとし

略歴
1946年 多度津町出身
1965年 大手前丸亀高校 卒業
1969年 同志社大学工学部機械工学科 卒業
     保険代理業を経て
1996年 株式会社日本総険 設立
     代表取締役社長

株式会社日本総険

住所
香川県高松市サンポート2-1 高松シンボルタワー9F
代表電話番号
087-823-2850
設立
1996年12月3日
社員数
46人(関連会社含む)
事業内容
損害保険契約・生命保険契約・少額短期保険契約
などを行う保険仲立人(保険ブローカー)
資本金
7000万円(2023年4月1日)
所在地
本社:香川県高松市サンポート2-1 高松シンボルタワー9F
東京支社:東京都千代田区内幸町1-3-1 幸ビルディング9F
CSセンター:香川県丸亀市飯野町東二844-1
関連会社
株式会社日本総険inカスタマー
株式会社日本総険トラストテクノロジーズ
地図
URL
https://www.iba-ns.com
確認日
2023.10.19

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ