
高松市サンポートの日本総険本社
“顧客目線”の保険仲立人
だが保険商品を扱う日本総険は、保険代理店ではない。葛石智社長(77)の名刺には、“保険仲立人”とある。「『保険仲立人』も保険代理店と同様に、保険商品を流通させる業者です。しかし根本が違う。保険代理店は“セラーズエージェント”と呼ばれ、顧客に商品を“売り”ますが、保険仲立人は“バイヤーズエージェント”。顧客から委託を受けて保険会社に商品を“買い”に行く。つまり私たちは『顧客側』にいるんです」
日本総険が手掛けるのは、法人向けの損害保険。北海道から沖縄まで、製造、流通、サービスなどあらゆる業種の法人約1000社の損害保険を取り扱う。「顧客の要望通りの商品を保険会社から買うには相当の技術が必要。その技術力こそ、私たちの一番の強み」と葛石さんは胸を張る。
保険仲立人の『技術』とは何なのか。「顧客が望むのは、リスクをカバーする“良い条件”の商品を、“より安く”購入すること。でも、ただ腕まくりをして保険会社に『保険を買いたい』と持ち掛けたところで、安く買えるわけではありません」
たとえば、ある部品工場が火事になれば、機械設備は壊れ、製造ラインが止まる。社員の給料は払えなくなり、部品供給もできないため、取引先のラインも止めてしまう。

東証「TOKYO PRO Market」に上場
「あらゆる角度から顧客を見つめて分析し、正確な情報を材料に、保険会社と交渉するのが保険仲立人です。技術とは『分析力』と『交渉力』。高度な技術で企業が抱える様々なリスクを掌握し、私たちが掲げるミッション『リスクあるところに保険を届ける』を実践していきたいと思っています」
最近では、車の自動運転、サイバー攻撃など、いわゆる「ニューリスク」が次々と生まれている。企業を取り巻くリスク環境が日々変化しているからこそ、「やりがいも大きい」と葛石さんは力強く語る。
保険をクラウドで“共同利用”
「保険難民」という言葉がある。保険に入りたくても入れない、中小零細企業の経営者や個人事業主を指す。「保険商品を買えたとしても割高だったり、カバーしているリスクの条件が良くなかったり…。事業があるところにはリスクがあり、事業者は皆リスクを抱えている。会社の大小は関係ありません」

上場通知書
日本総険では「みんホケ」のビジネス特許も取得。「たとえ規模は小さくても、頑張っている経営者の力になりたい」。葛石さんは何度も繰り返す。
上場で知名度アップ目指す
だが、保険代理店を営む父の影響で保険業界へ。いわゆる“保険会社側”に身を投じたものの、「『保険は絶対に顧客本位であるべきだ』と強く感じていました」
1994年10月、当時まだ日本にはなかった「保険ブローカー(保険仲立人)制度」の導入を目指す国の審議会にも委員として参加。96年4月に制度ができるや否や、50歳で独立。日本総険を立ち上げた。

小規模事業者を守り、事業の発展に貢献したい
創業後、着実に業績を伸ばす中で、ずっと考えていたことがある。「もっと多くの人に保険仲立人の存在や価値を知ってもらいたい」。今年8月、日本総険は「東京証券取引所TOKYO PRO Market」へ、業界初の上場を果たした。「これを機に業界の知名度アップにつなげ、会社の価値、社員の価値を上げていきたいと思っています」
リスクに遭わないのに越したことはない。だが、万が一その時が来たとしても「事業を止めることなく、さらに発展できるよう貢献したい。そのためにも私たちは、これからもリスクの探究を続けていきます」
篠原 正樹
葛石 智 | かっせき さとし
- 略歴
- 1946年 多度津町出身
1965年 大手前丸亀高校 卒業
1969年 同志社大学工学部機械工学科 卒業
保険代理業を経て
1996年 株式会社日本総険 設立
代表取締役社長
株式会社日本総険
- 住所
- 香川県高松市サンポート2-1 高松シンボルタワー9F
- 代表電話番号
- 087-823-2850
- 設立
- 1996年12月3日
- 社員数
- 46人(関連会社含む)
- 事業内容
- 損害保険契約・生命保険契約・少額短期保険契約
などを行う保険仲立人(保険ブローカー) - 資本金
- 7000万円(2023年4月1日)
- 所在地
- 本社:香川県高松市サンポート2-1 高松シンボルタワー9F
東京支社:東京都千代田区内幸町1-3-1 幸ビルディング9F
CSセンター:香川県丸亀市飯野町東二844-1 - 関連会社
- 株式会社日本総険inカスタマー
株式会社日本総険トラストテクノロジーズ - 地図
- URL
- https://www.iba-ns.com
- 確認日
- 2023.10.19
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