着物生地を使用したフォーマルウェアでミラノコレクションへ挑戦

マイモード 代表取締役 タキシードデザイナー 横山 宗生 さん

Interview

2024.08.01

ミラノコレクション2024秋冬=2月、イタリア・ミラノ

ミラノコレクション2024秋冬=2月、イタリア・ミラノ

挑んだ「ミラノ・コレクション」

世界4大コレクションの一つ「ミラノコレクション」。今年2月、世界最大規模のファッションの祭典に挑んだのが、高松市出身のタキシードデザイナー横山宗生さん(51)だ。

「私が考えるカッコイイものが世界に通用するかどうか。それを確かめる場でした」

テーマに掲げたのは「日本発信の新しいフォーマルウェアの提案」と「日本の伝統文化・伝統産業の世界発信」。西陣織などでつくった「着物タキシード」や「着物ドレス」、ファスナー付きで簡単に着られる「着物洋服」など30アイテムを発表した。「ショーの最中は運営に追われ、喜んだり感動したりする余裕はありませんでした。ランウェイ後、会場への挨拶を終えると、じわじわと実感が湧いてきました」

与えられたランウェイの時間はわずか15分だったが、世界中から集まったバイヤーやインフルエンサーに衝撃を与えるには十分だった。列をなして横山さんを取り囲んだ世界的ファッション誌やイギリスBBCなどの各国メディア……父が立ち上げた縫製工場の創立60周年と自身50歳の節目に決意した人生最大の挑戦が成功裏に終わったことを証明する瞬間だった。「どうすればミラノコレクションに参加できるのか、何も分からずに準備を始めたんですが……この2年で8回ミラノに渡り、調べ尽くして臨みました。タキシードの魅力や日本の伝統を世界に発信でき、とても感慨深いですね」

「タキシード日本一」を目指して

ファッションへの興味は皆無だった。父も家業を継ぐことは望んでおらず、「良い大学に入って良い会社に就職して安定した生活を送る。みんながそれを目指していた時代でもありました」

高松西高から国立大学に進み、地元の大手通販会社に入った。「4000人規模の大きな会社。同じフロアに約100人いて、見渡すと課長や部長や事業部長がいる。『私の人生はこのフロアで終わるんだろうな』と思うと同時に、『自分にしかできないことが他にもあるはず』という考えが芽生えたんです」

会社を3年で辞め、実家の縫製工場へ。29歳の時に参加したJC(日本青年会議所)の国際パーティーで転機が訪れた。「海外からの参加者が着こなしていたタキシード。まるでトム・クルーズのようにカッコよかった。これだ!と思いました」

タキシードとは、夜間のフォーマルなパーティーなどで着られる男性向け礼服の一つ。形はスーツと似ているが、「ジャケットの襟が光沢のある拝絹と呼ばれる生地で、パンツのサイドに側章と呼ばれる縦のラインが入っているのがスーツとの主な違いです」

欧米と比べると日本では馴染みが薄く、市場も大きくない。だが、それが逆に横山さんの挑戦意欲を掻き立てた。
「着物ドレス」など新作30点を発表した 「ミラノコレクション2024秋冬」のランウェイ (*オフスケジュールで発表)写真は全て横山さん提供

「着物ドレス」など新作30点を発表した
「ミラノコレクション2024秋冬」のランウェイ
(*オフスケジュールで発表)写真は全て横山さん提供

「タキシードを広め、タキシードで日本一になる」

目標を定め単身上京。2008年、“ファッションの聖地”青山でタキシード専門店「ロッソネロ」を開いた。「これといった勝算があるわけではなかった。ダメなら1年で帰ってこようと思っていました」

ブライダル関連の卸でスタートしたが、自分の理想のタキシードが広まらない。そこで、「自分が創りたいものしか創らない」と思い立ち、小売へとシフトチェンジした。「デザインや縫製を学校で学んだことはないです」。自分なりに最先端のファッションを研究し、デザイン力を磨き、コツコツと市場を開拓していった。「タキシードに目覚めてから20年余りで数千種類のタキシードを創りました。生地やシルエット、襟やポケットの形にボタンの数……デザインのパターンは無限です。いま日本で一番タキシードに詳しいのは、たぶん私だと思います」と笑顔で話す。

横浜と名古屋でも店舗を構え、ザ・リッツ・カールトン東京、ザ・ペニンシュラ東京、シャングリ・ラ東京など有名ラグジュアリーホテルと提携、100人を超える芸能人への衣装提供など、日本を代表するタキシードデザイナーとして横山さんはその名を轟かせている。

タキシードを着る人生か、着ない人生か

「結婚式や授賞式などフォーマルな催しがないと私たちのビジネスは成り立ちません」。東日本大震災やコロナ禍で、会社が立ち行かなくなったこともある。それだけに、タキシードが活躍する“特別な日”が一日でも多い社会になればと願う。
コンセプトは「エレガント&セクシー」

コンセプトは「エレガント&セクシー」

横山さんがつくるタキシードのコンセプトは、「エレガント」で「セクシー」、そして「ラグジュアリー」。「基本的には大人向けで、男性であってもエレガントでセクシーさを感じるような大人シルエット。ですが、若者も憧れるような“大人カッコイイ”を目指しています」

タキシードは特別な日をさらに輝かせてくれる。“タキシード文化”が広まれば、ライフスタイルはもっと豊かになる―。横山さんが貫く信念だ。「カッコイイと思える服を着ていればテンションが上がり、素敵な思い出にもなる。タキシードを着る人生か、着ない人生か……それは『私が頑張るかどうかにかかっている』というくらいの覚悟で、これからも“カッコイイ”タキシードをつくっていこうと思っています」

横山 宗生 | よこやま むねたか

略歴
1972年 高松市出身
1991年 高松西高校 卒業
1995年 富山大学経済学部 卒業
     株式会社セシール 入社
1998年 株式会社マイモード 入社
2008年 代表取締役

株式会社マイモード

住所
香川県高松市木太町1544番地17
代表電話番号
087-837-1771
設立
1963年1月
社員数
10人
事業内容
オーダータキシード・ドレス・スーツの縫製、販売 他
設立
1990年1月
資本金
1000万円
ショップ
タキシードアトリエ ロッソネロ南青山本店
タキシードアトリエ ロッソネロ横浜店
タキシードアトリエ ロッソネロ名古屋店
地図
URL
http://www.my-mode.co.jp/
確認日
2024.08.01

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