目指すは “世界一オモロイ” 製袋会社

シコー 社長 白石 忠臣さん

Interview

2022.08.04

大型製袋機の前で=坂出市昭和町のシコー株式会社 西日本事業部 香川製造部・香川営業所

大型製袋機の前で=坂出市昭和町のシコー株式会社 西日本事業部 香川製造部・香川営業所

香川を“一番すごい”工場に

シコーは、米や小麦粉などの食品から、化学薬品や建材まで、あらゆるものを包む紙製やプラスチック製の袋を製造・開発する産業用包装資材メーカーだ。

本社は大阪。「シコー」とは、設立時の社名「大阪紙工」が起源だが、「“思考”する、“試行”錯誤する、“至高”を目指すなど、いろいろな意味が込められています」と40歳の若きリーダー、白石忠臣さんは力強く話す。

「袋」と言っても、そこにはシコーならではの様々な技術が詰まっている。例えば肥料を入れるポリエチレン重袋には、100㎛以下の微細な穴が開けられ、最適な通気性や防湿性を実現。他にも、荷崩れしにくい、中身が漏れにくい、異物が混入しづらいなど、顧客ニーズに合わせた多彩な袋をオーダーメイドで提供している。「爆発的にヒットする袋があるわけではない。でも、“困っているお客さんにピンポイントで刺さる”、そんなモノづくりが私たちの一番の強みだと思っています」
製袋作業の様子

製袋作業の様子

東北から九州まで全国各地に製造部や営業部を持ち、食品会社、化学メーカー、セメント会社など取引先は数百社。アメリカ、中国、イギリスなどへ輸出もする。国内外を舞台に幅広く展開するシコーだが、白石さんが特に注目するのが、坂出にある香川製造部だ。

「何と言っても、この広さが最大の魅力です」

敷地面積は全国のどの拠点よりもダントツに広い約1万9000㎡。瀬戸内海に面した広大な敷地で白石さんは「紙袋の新たな可能性」に挑んでいる。

バブル期の1980年代、産業用紙袋は年間に28億袋の需要があった。だが現在は海外製に押されるなど、10億袋にまで落ち込んでいる。現状を打破しようと目を付けたのは「段ボール箱市場」だ。「紙袋は、段ボール箱よりもコストが抑えられ、在庫もかさばりません」。大型の特殊設備を香川製造部に導入し、「段ボール箱に取って代わる高機能な紙袋をつくれるのは、国内では我が社を含め2社しかなく、大きなシェアを獲得できています」と白石さんは胸を張る。「敷地の広さは、製造や開発のプロセスで大きな武器になる。香川には優秀な人材も多く、みんなで『一番すごい工場をつくろうぜ!』と声をかけ合っているんです」

米袋をかぶってツイート

「人がやらないこと、ちょっとだけ人と違うことをやろうと、いつも心がけてきました」

入社5年目の28歳の時、アメリカの大学院で学ぼうと思い立った。だが、「入試で落ちてしまって……」。それでもへこたれず、持ち前の行動力で教授に直談判。系列の短大に通ってコツコツ単位を取得し、志望する大学院への編入を果たした。

今年2月には白石さんのあるツイッター投稿が話題になった。

―弊社は米袋メーカーです。米の収穫のない閑散期にできる仕事はないか……どなたかお知恵を拝借できませんか―

頭から米袋をかぶった写真とともにつぶやくと大反響。「スーパーや100円ショップで使ってもらうのはどうか」「自転車のタイヤ入れに」「個人に売るのはどうか」……1000件を超えるコメントが殺到し、いわゆる“バズった”状態に。「困っている営業に対して私に何ができるのかと、悩んだ末の苦肉の策だったんですが……本当にありがたい。実現に向けて、頂いた意見を今まとめているところです」。白石さんはうれしそうに話す。

“つくりやすい”商品を

先代の父から39歳の若さで社長を継いで1年余り。「経営者2年生のまだまだ若造です。『みんなでアイデアを出し合って一緒にやろう』というのが私の基本スタンスです」

目指すのは「世界一オモロイ製袋企業」。白石さんが思い描く“オモロイ会社”とは?

「商品や人材の魅力を高め、『シコーから買いたい』と思ってもらえるファンを一人でも多く増やすことですね」
経営ビジョンのコンセプト図。弓を引くのは 社員の小学生の娘さんが原案をつくったキャラクター「シコラ」

経営ビジョンのコンセプト図。弓を引くのは
社員の小学生の娘さんが原案をつくったキャラクター「シコラ」

社長になってすぐにプロジェクトチームを立ち上げ、経営ビジョンをつくった。掲げたのは『包装で創るストレスフリーな世界 ~つかいやすく、かたづけやすく、つくりやすい~』

「お客さんや社会を第一に思うのはもちろんですが、メンバーから『商品をつくる自分たちのことも考えませんか?』という意見が出た。会社のこと、社員のことも大切にしようと、“つくりやすい”を盛り込んだのがポイントですね」

会社を継ぐ際、父から「かっこいい社長になれ」と言葉を贈られた。その時の父の様子は今でも強烈に覚えている。「売上や利益だけにとらわれず、『立ち振る舞いも社長であれ』という意味だと思います」。創業者の祖父の急逝で父は30歳で社長になり、そこから40年間、会社を引っ張ってきた。「大変な苦労をしたので、私には時間をかけて引き継ぎをしてくれた。だから、決して言い訳はできません」。白石さんは口元を引き締め、こう続ける。「私の方が父より“オモロイ”と思うんですが、人間的には到底かなわない。でもいつか、父を超えられるよう成長していきたいと思っています」

篠原 正樹

白石 忠臣 | しらいし ただおみ

略歴
2000年 大阪府立桜塚高校 卒業
2004年 甲南大学経済学部 卒業
     シコー株式会社 入社
2013年 米・ミシガン州立大学大学院パッケージ学科 修了
2014年 取締役西日本事業部長
2016年 常務取締役西日本事業部長
2021年 代表取締役社長

シコー 株式会社

住所
大阪府大阪市北区梅田1-1-3-1500 大阪駅前第3ビル15階
代表電話番号
06-6345-8456
設立
1950年11月2日(大阪紙工株式会社)
社員数
196人
事業内容
大型紙袋、PE重包装袋、プラスチックダンボール、
各種産業用包装資材の製造・販売
西日本事業部 香川製造部・香川営業所
坂出市昭和町2丁目6番12号
TEL. 0877-46-4545(代表)/FAX. 0877-44-0078
グループ
三栄紙工株式会社、ポリタイ化学株式会社、丸倉化成株式会社
シコーホールディング株式会社、株式会社ウエスタン・ペーパーバッグ
地図
URL
http://www.siko.co.jp/
確認日
2022.08.04

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