一つの酒蔵の終焉と誕生
このとき、先代から譲られた社長の座にあったのが、後に森國酒造を興すことになる森國幸広さんだった。
まだまだ酒造りを諦めていなかった先代の池田好輝さん(08年没)と森國さんが選んだのが、小豆島の地だったという。そこには酒造りには欠かすことのできない、名水と呼ばれる地元・星ケ城山の湧き水があった。醤油醸造を営む親類からの助言もあり、小豆島の地で新たな酒蔵を始めることにした。蔵の名を森國酒造として誕生、同年9月に清酒製造免許を取得し、酒造りが本格的に始まった。タンクや蒸米機など、池田酒造から持ち込んだ機材は、手作業で良質な酒造りを目指す新しい蔵にちょうどいい大きさ。そして翌年春、森國ブランドの日本酒がデビューした。
誰に向けてのメッセージか。新しい日本酒ファンを作る
森國酒造には大きく分けて、「島シリーズ」、「森シリーズ」の2つのシリーズと、特別な酒として「磯松」と「酒翁」のブランドがある。なかでも特徴的なのが、島シリーズの「ふわふわ(純米吟醸酒)」「ふふふ(吟醸酒辛口)」「うとうと(純米酒普通)」「びびび(本醸造辛口)」。軽やかで印象的な名前と、高松市のデザイン事務所と共にラベルやカタログなどをトータルにデザインした島シリーズは、若者や女性層からの支持を得て、島内土産物店の人気商品に育った。今年3月から前任の森國さんから代表取締役社長を引き継いだ池田亜紀さんは、「昔からの日本酒ファンはもちろんですが、日本酒は苦手だ、飲んだことがないなどと距離を置いてきた年齢層や女性層に響くものを作りたい。創業以来のその考えは間違ってはいなかったと自負しています」。
2007年7月に、築70年の佃煮工場をリノベーションして開いたカフェも、新しい日本酒ファンの開拓に一役買っている。フォレストギャラリーと名付けられたカフェは、試飲や販売はもちろん、食事やお茶ができる店として、またアーティストのライブなどさまざまな催しのスペースとして、島に息づく文化を伝える場所としての顔を持つ。住民や観光客が足を運ぶスポットとしても定着しようとしている。「新しい蔵だからこそできたことかもしれません。今後も蔵の拠点として、ニュースを発信していきたいですね」
美味なる酒を追い求める
実は、池田亜紀さんは、池田酒造4代目池田好輝さんの娘(長女)であり、森國さんは妹の夫という間柄でもある。4年間で築いたものをベースに、池田さんは女性ならでは視点で、新しい商品作りを提案している。「たとえば、少量瓶のお酒。同じ200mlでも、ワンカップ系には抵抗があっても、かわいらしい小瓶であれば買いたいと感じる。いかにお客様の感性に近づけるか、です」。すでに発売された180mlの小瓶は、女性の旅行客から特に好評だ。
今後、池田さんは杜氏とともに、味を追求したいと考えている。「もっとおいしいお酒を造りたい。たとえば、島の食事にあう味。醤油や佃煮など、辛口の食にあった酒。地元に根付いた日本酒を造っていきたいですね」
亡き父がいつも願っていたこと・・・「多くの人に日本酒の良さを再認識してほしい」。忘れることのできない父の思いをくみ取り、酒造りに挑もうとしている。今年1年は勉強の年と決めた池田さん。その成果は今年の秋に始まる仕込み作業を経て、来年の新酒に表れるに違いない。
池田 亜紀
株式会社 森國酒造
- 住所
- 香川県小豆郡小豆島町馬木甲1010番地1
- 代表電話番号
- 0879-61-2077
- 設立
- 2005年
- 社員数
- 4人
- 事業内容
- 日本酒の製造・販売、カフェ営業
- 沿革
- 2005年 2月 小豆郡小豆島町馬木甲842-3に会社設立
代表取締役社長 森國幸広
2005年 9月 清酒製造免許取得
2006年11月 小豆郡小豆島町馬木甲1010-1に会社移転
2007年 カフェ設立
2009年 3月 代表取締役社長に池田亜紀就任 - 資本金
- 7000万円
- 地図
- URL
- http://morikuni.jp
- 確認日
- 2009.07.16
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