
綾菊とグリーンフィールドが育てるオオセト
同地区にある綾菊酒造は、昔から香川県産米での酒造りを続けてきた。14年に代表取締役に就任した岸本健治さんは、綾川町でのオオセト栽培をぜひ復活させたいと考えた。同社の名誉杜氏である国重弘明さんが、地元産オオセトでの酒造りにこだわってきたからだ。1970年に綾菊の杜氏に就任した国重さんは研究を重ね、約10年かけてオオセトを使った酒造りを完成させた。
岸本さんは「主基斎田(すきさいでん)のあるこの土地だからこそ、復活を実現させたかった」とも話す。天皇即位の後、五穀豊穣などを祈念して行われる大嘗祭(だいじょうさい)。大嘗祭で使う新米を栽培する田を「斎田」といい、東日本と西日本から1カ所ずつ選ばれ、それぞれ「悠紀(ゆき)」、「主基」という。大正天皇即位の際、主基斎田に選ばれたのが、綾川町山田地区だった。同町では毎年6月、大正時代の田植えを再現する「主基斎田お田植えまつり」を開催している。
岸本さんは2015年に、清酒「国重」を特約販売するグループ「国重会」のメンバーでオオセトの栽培を始めた。最初は綾菊の従業員が所有する3反(約3,000㎡)の田を使った。30人ほどで田植え、稲刈りを行い、そこで収穫したオオセトだけを使った日本酒を醸造した。
17年から本格的な栽培に乗り出し、農業法人グリーンフィールド(綾川町)との連携でオオセト作りを始めた。できるだけ粒が大きく、割れにくい酒造りに適したお米を作るため、「グリーンフィールド様には種子の下準備や収穫後の乾燥の工程に手間をかけていただき、水田の温度や湿度、降雨量などのデータを蓄積するICTも導入しました。ワインは、ブドウを栽培する土地の気温や土質、天候などに左右され、味わいも変わってきます。日本酒も米と水と風土が育むものなので、テロワール(栽培する環境や生産地のこと)が影響するのは共通する点だと思います」
今年は5町(約50,000㎡)までオオセトの栽培面積が広がった。毎年お米の成分分析を行い、さらなる品質向上を目指す。
綾川町産オオセト100%で造ったお酒は、季節ごとに数量限定で販売。次回は10月と11月に予定しており、「国重」の取り扱いがある酒販店で購入できる。岸本さんは「きれいで雑味がなく、まろやかなオオセトのお酒を味わってほしい」と話す。

10月発売の「国重 純米大吟醸 火入原酒」(左)と「国重 大吟醸 火入原酒」(中央)、11月発売の「国重 特別純米別囲い」(右)
綾菊酒造株式会社
- 住所
- 綾歌郡綾川町山田下3393番地1
TEL:087-878-2222
FAX:087-878-1655 - 創業
- 1790年
- 設立
- 1945年
- 資本金
- 4706万円
- 従業員数
- 19人
- 主要商品
- <清酒>
綾菊製品各種
主要銘柄「国重」「大吟醸」「純米吟醸」他
<焼酎>
「樫樽貯蔵空海の道」「MAO(まお)」
「青い風」他
<リキュール>
「うめ酒」「ゆず酒」「かりん酒」 - 製造内容
- ・原料米 香川県産「オオセト」「さぬきよいまい」他
・醸造用水 綾川伏流水 - 確認日
- 2018.01.04
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