創業70年。おいしいお茶を作り続けたい

柿茶本舗 代表取締役社長 井上 信忠さん

Interview

2019.05.16

耕作放棄地を活用した坂出市の柿畑で

耕作放棄地を活用した坂出市の柿畑で

5月15日、創業70周年を機に「㈲生化学研究所」は「柿茶本舗」に社名を変更した。柿の葉で作る「柿茶」の製造で創業。柿の木の栽培で、農薬と化学肥料を使わないことにこだわってきた。

社長の井上信忠さん(44)は、社名変更とともに記念誌を発行。「農家の皆さんが汗を流して柿の葉を育ててくれています。その苦労を皆さんに知ってほしいという気持ち。問屋や小売店などのお客様に配る予定です」

工場は創業時から香川県坂出市にあったが、営業の拠点と本社は東京に置いていた。井上さんは2017年に本社を香川に移転。「市場は関東圏中心でしたが、これからは地元・香川の皆さんに、おいしくて体にいい柿茶を飲んでいただきたい」
柿の葉の収穫作業

柿の葉の収穫作業

戦後、井上さんの祖父が「お茶で手軽に栄養補給できるように」と柿茶を作り始めた。「柿の葉にはビタミンやポリフェノール、ミネラルが含まれています。柿茶は渋みが少なく、ノンカフェイン。クセがなくておいしいんですよ」

創業時、祖父は農家探しに苦労した。葉を採ってしまうと、柿の実はならなくなる。実を出荷したい農家には当然嫌がられた。農薬と化学肥料を使わないことも条件だったため、協力農家は簡単に見つからない。たどり着いたのが、徳島県つるぎ町だった。葉の収穫は7~8月に行う。枝ごと落とし、葉を一枚一枚手で摘む。鮮度を保つために徳島から香川の工場まで冷蔵車で運ぶ。蒸した後、乾燥させて茶葉が完成。

16年から香川県内でも栽培を始めた。坂出市周辺の耕作が放棄された柿畑を借り受けている。現在、徳島・香川で年間10㌧の柿の葉を収穫しており、そのうち香川産は1㌧。市内の耕作放棄地の活用を進めて、今後5年で収穫量5㌧を目指す。「香川では柿畑の持ち主や近隣の方にも収穫を手伝ってもらっています。徳島の契約農家は若い人で70歳。地域を巻き込むやり方を徳島でもできたら」

昨年末には坂出市府中町の柿畑が、日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会から「オーガニック認証(有機JAS認証)」を受けた。有機JASマークは、化学物質に頼らず生産された農産物や加工食品などに表示できる。認証を受けずに「有機」「オーガニック」という名称を使うことはできない。「余計なことをしないのがオーガニックだと思っています」。柿茶本舗では、畑で刈り取った下草をそのまま肥料として使う。
直営店「かきのは」

直営店「かきのは」

柿茶本舗の商品ラインナップは、ティーバッグタイプの茶葉、茶葉を粉末にした粉茶、ペットボトルタイプなど。直営店「かきのは」とオンラインストア、栗林庵、春日水神市場で購入できる。東京都内の香川・愛媛せとうち旬彩館、オーガニック食品を扱うスーパーでも販売されている。

「かきのは」は、坂出市江尻町の遍路道沿いにある。お遍路さんを接待したいという先代の思いを受け継ぎ、井上さんがオープンした。店の外にお遍路さん用の柿茶を備え付けている。社長に就任して4年。井上さんは「70年続く柿茶ブランドをこれからも守る。おいしいお茶を作り続け、地域での雇用も増やしたい」と目標を語る。

鎌田 佳子

井上 信忠|いのうえ のぶただ

略歴
1975年 坂出市生まれ
1993年 藤井高校 卒業
飲食店での勤務を経て
2001年 生化学研究所 入社
2015年 代表取締役社長 就任

柿茶本舗有限会社

住所
香川県坂出市江尻町1220
代表電話番号
0877-46-2436
設立
創業1949年
社員数
10人(パート含む)
事業内容
柿の葉茶・柿の葉粉末・柿の葉濃縮エキスの製造販売、直営店「かきのは」の運営

柿茶のお店「かきのは」
住  所:坂出市江尻町1224
営業時間:10~17時
電  話:0877-35-7787
地図
URL
https://www.kaki-cha.co.jp/
確認日
2019.05.09

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ