ブランド磨き お米の力を世界発信

アイム 社長 沼田 憲孝さん

Interview

2020.12.17

高松市香南町横井のアイム本社

高松市香南町横井のアイム本社

51カ国367万人が愛用

ブランド誕生20周年を迎えた「ライスフォース」シリーズ

ブランド誕生20周年を迎えた「ライスフォース」シリーズ

「何年も使っています」「私の肌にぴったりです」……お米を原料とする化粧品などを製造・通信販売するアイムのオフィスには、女優、俳優、モデルやアーティストなど錚々たる顔ぶれの直筆メッセージがずらりと並ぶ。社長の沼田憲孝さん(53)は看板商品「ライスフォース」を手に力強く話す。

「常に心がけてきたのは『ブランドをつくる大切さ』。ブランドが育てば、商品に携わる人や会社を守ることができる。そして、それが『生きていく力』になります」

謳い文句は“肌を育む”。「ライスフォース」ブランドの特徴は文字通り“お米”にある。綾川町の酒造会社・勇心酒造と共同開発した、国産米を麹菌や乳酸菌で発酵熟成させた「ライスパワーエキス」を使用し、アイムのオリジナル商品「ライスフォース」を発売。テクスチャ(質感)やつけ心地が良いと評判で、現在世界51カ国、367万人に愛用されている。「お米のエキスはアミノ酸の化合物で、肌を改善する作用があるとされています。動物性の原料を一切使っていないことも、他社製品と差別化できた要因の一つだと思っています」。ライスフォースの主要顧客は肌に何らかの悩みを抱えている人たち。沼田さんは今後の高齢化社会も見据え、「今のさらっとした質感をもう少ししっとりさせた、年配層向けの商品も考えていきたい」と目を輝かせる。

ライスフォースが誕生して今年で20年。「つらいことはたくさんあった。でも何とか『成人』を迎えることができました」。沼田さんはしみじみと語る。

天狗の鼻をへし折られ……

元々は教員志望だった。だが、「子どもたちを教えるなら、親御さんが働く民間企業を少し見ておこう」と軽い気持ちで就職活動を行い、アイムの前身・アパレル通販会社シムリーの会社説明会へ。そこで創業者である当時のオーナーと出会い、心変わりした。「社員を思う気持ちや、先進的な考え方に魅了されました。縁があったんでしょうね」

思いもよらず飛び込んだアパレル業界。「とにかくがむしゃらに突っ走りました」。企画商品の売上成績は社内トップ、新たにカタログ通販事業を手掛ければ大成功。入社10年ほどで、まさに“無双状態”になり「やり切った感が強く、『燃え尽き症候群』に陥っていました」

2000年、シムリーでは「アパレル事業だけだと将来厳しくなる」と、アパレルで培ったノウハウをもとに女性顧客向けに化粧品事業を始めることになった。沼田さんは迷わず手をあげた。「新しいことにチャレンジしたかった。成功させる自信もあった。その頃は『自分は何でもできる』と思っていましたから」。そこで生まれたのが「ライスフォース」だった。

しかし、現実は甘くはなく、ライスフォースは売れなかった。「モノは良くても、顧客を惹きつけるだけのブランド力が全くなかった。天狗になっていた鼻をへし折られました」。事業のスタート時に「3年でメドをつけろ」と言われていたが、3年経っても大赤字のまま。「首になるかも……と本気で心配しました」

やがて、少しずつライスフォースが認知され始めた。人気モデルや女優が愛用していることが、たまたまテレビや雑誌で紹介されたこともあり、徐々に注目されるようになった。広告やマーケティングにも力を注ぎ、売上が伸びてきた2005年、親会社シムリーの一事業から、株式会社アイムとして独立。事業の責任者だった沼田さんが初代社長に就いた。

「続けるため」どうするか

ライスフォースの原料となる「おいでまい」の田植えの様子=綾川町

ライスフォースの原料となる「おいでまい」の田植えの様子=綾川町

「スタッフや得意先、いろんな人に助けられた。結局、自分一人じゃ何もできない」。そう気づかされた沼田さんが、会社を立ち上げて最初にやったのが、企業理念「アイム六構」の制定。「公」「幸」「恒」「考」「行」「交」の6つの「こう」で社員に示した。社会の役に立ち、幸せを目指し、存続するよう努め、考える。先を見て行動し、商品を通して世界と交わる。
「『自分の力だけでやってきた』と過信していた若い頃と、ずいぶん考え方が変わりました」

ライスフォースとともに歩み、気づいたことがもう一つある。「米づくりの奥深さ」だ。沼田さんは昨年、香川県のオリジナル米「おいでまい」の自社栽培をスタートさせた。「地域で水を分け合ったり稲刈りを一緒にやったり、米づくりには日本の文化や日本人の精神が詰まっている。お米の魅力も世界に向けて発信したいと思っています」

正直、何度もライスフォースをあきらめようと思った。でも、「ブランドを育てるのが自分の使命」と歯を食いしばった。「続けてきたから今がある」と沼田さんは繰り返す。「一瞬だけ頑張って一瞬で終わらせるのは簡単です。でも、物事というのはそうじゃない。続けるために今日や明日をどうしていくか。しっかり考えながら、次の世代へライスフォースブランドを繋い でいきたいと思っています」

篠原 正樹

沼田 憲孝|ぬまた のりたか

略歴
1967年 多度津町出身
1985年 香川県藤井高校 卒業
1990年 香川大学教育学部 卒業
     株式会社シムリー 入社
2005年 株式会社アイム 設立
     代表取締役社長

株式会社アイム

住所
香川県高松市香南町横井460-1
代表電話番号
087・879・0033
設立
2005年(平成17年)7月1日
社員数
143人
事業内容
化粧品、健康食品等の通信販売業
資本金
1億円(第一三共ヘルスケア株式会社100%)
地図
URL
https://www.riceforce.com/
確認日
2020.12.17

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