
「レアシュガースウィート」を製造する「松谷化学工業」番の州工場で(綾歌郡宇多津町)
「これはいける」という直感
希少糖は自然界にごくわずかの量しか存在しない単糖(それ以上分解できない糖)。1991年に香川大学の何森(いずもり)健教授(当時)が、自然界に多くある果糖から希少糖の一つ「D-プシコース」を生産できる酵素を発見したことから研究が始まった。その後、香川県、香川大学、企業の産学官連携で研究・商品化・産業化が進められ、希少糖という言葉が広く知られるまでになった。

現在、レアシュガースウィートを使った商品を作っているのは700社あまり
当時、松谷化学工業では天然のでんぷんを原料とした食物繊維(難消化性デキストリン)の商品を開発し、軌道にのり始めた頃だった。すでにアメリカではダイエットへの関心が高く、食後血糖の上昇を穏やかにするなどの機能をもつその商品の市場は大きかった。「ただユーザーからは、食物繊維はカロリーゼロだけど砂糖の代わりにはならない。甘くてカロリーゼロの食品があったら―という声がありました」。
そんな時に出合ったのが希少糖だ。「カロリーゼロの甘味料。しかも、トウモロコシのでんぷんを分解してつくった果糖をもとに生産する。人工合成ではなく天然由来というところも健康を気にする人には受け入れやすい。食物繊維の時の経験があったから直感的に『これはいける』と思いました」
天啓だからやめられない

夢は、希少糖の産業が香川で発展していくこと
当初、プシコースは1gが約5万円とかなり高額。商品化するためには、酵素をもっと活性化させて大量のプシコースをつくり出せるような力の強い酵素にしなければならない。そこで、農作物を改良する時のように酵素を自然交配したが、この方法は時間がかかった。「酵素はいつできるかわからない。完成しても食品原料として使えるという許可がすぐ出るとは限らない。ずっと待っていたら事業として成り立たないから、並行して別の方法も試すことにしました」
社内外からは時間もお金も費やしているのに全然結果が出ていない、やめた方がいいという声も聞こえてきたという。それでも「新しいものを生み出すのは簡単にできることじゃない。希少糖は世の中の人の健康にきっと役立つ。そんな素晴らしいものに出合ったことは、天の啓示だと思いました。だから、途中でやめるわけにはいかない」
光明が見えたのは、試した別の方法がうまくいき大量生産のめどがたったころ。10年に松谷化学工業、希少糖生産技術研究所などが出資して「レアスウィート」を設立。11年、ついに希少糖約15%を含んだシロップ「レアシュガースウィート」が発売された。13年には、商品を製造する番の州工場が完成した。

番の州工場
商品発売以降も続けてきた研究の成果が実り、来年には希少糖100%の商品も発売される予定だ。
香川に恩返し
今後、産学官連携で50種類の希少糖研究を進めていく過程で、さまざまな研究データや技術などの知的財産が生まれる。その知的財産のプラットフォームとしての役割も、事業の一つとしてレアスウィートが担っていきたいと考えている。
「香川には昔から和三盆もあるし、次世代の希少糖もきっとここで生まれる。香川は甘味料のふるさとだと思っています」。夢は、番の州工場を中心として研究機関や企業が集まり、希少糖をベースにした産業が発展していくこと。「人が集まり知財も蓄積されて、香川の財産として将来に受け継がれていく。それに力を尽くすことが、香川に対する恩返しだと思っています」
石川恭子
山田 晃士 | やまだ こうじ
- 略歴
- 1953年 兵庫県生まれ
1976年 大阪大学基礎工学部化学工学科 卒業
1988年 松谷化学工業株式会社 入社
生産企画課 配属
2009年 執行役員 生産本部長
2013年 上級執行役員 生産本部長
2016年 取締役 生産本部長
2017年 取締役 研究所所長
2018年 株式会社レアスウィート 代表取締役社長
2019年 松谷化学工業株式会社取締役 退任
株式会社 レアスウィート
- 住所
- 香川県高松市番町1-1-5ニッセイビル7階
- 代表電話番号
- 087-823-1689
- 設立
- 2010年3月
- 社員数
- 5人
- 事業内容
- 希少糖D-プシコース等を使った商品の販売、希少糖関連商品の企画・研究・開発、その他糖を使った商品の企画・開発及び販売
- 資本金
- 1000万円
- 本社
- 木田郡三木町小蓑1351番地2
- URL
- http://www.raresweet.co.jp/raresweet/htm/
- 確認日
- 2019.04.04
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