坂東さんは夫の肌荒れを直したい一心で、石けんを手作りしていた。たまたま目にした薬草図鑑に藍が虫刺されや傷に効く薬草として紹介されていたこと、徳島にある実家が藍農家だったことが、「藍染め石けん」開発のきっかけになった。
タデアイの葉から抽出したエキスを練りこんだ藍染め石けんは、夫だけでなく知人にも喜ばれた。2005年に藍色工房を設立し、商品として販売を開始した。
「藍が抗菌成分の『トリプタントリン』を含有していることは実証されていますが、解毒や解熱、消炎などの効能は民間伝承の域を出ていません。現在、研究機関と一つ一つ検証しているところです」
藍色工房ではタデアイを2種類の粉末にも加工している。一つは、摘み取ってすぐに専用の機械で乾燥させた葉の粉末。葉の粉末はヘアーコンディショナーの原料として使う。
もう一つは、摘み取ったタデアイを水につけ込んで、上澄みを捨てながら色素を濃縮した「藍粉末」だ。米国の化粧品ブランドTATCHA(タッチャ)社からオファーがあり、14年に同社から藍粉末配合のハンドクリームなどが販売された。
藍粉末の用途は美容分野だけにとどまらない。墨職人の協力で、江戸時代に浮世絵の顔料として使われていたという「藍墨」を復刻。藍墨を使えば、藍色の書や水墨画をしたためることができる。
タデアイは1年生植物のため、毎年種まきをして栽培する。収穫できるのは夏だけで、藍色工房が使う1年分の商品の原料は夏場に作ってしまう。天候の影響を受けて十分な収穫量を確保できない恐れもあるため、安定生産を目指して水耕栽培にも挑戦している。
2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムが藍色の市松模様に決まってから、問い合わせが一段と増えた。「藍色が注目されている今、効能が実証できれば藍の用途はさらに広がります。世界に打って出られる素材ではと期待しています」
お問い合わせ:TEL.0120・116・516
HP:http://aiironet.com/
おすすめ記事
-
2019.09.05
「自然免疫」の力を健康や美容に生かす
糖脂質「LPS」の研究、応用 自然免疫制御技術研究組合
-
2024.10.17
なぜ働いていると本が読めなくなるのか
著:三宅 香帆/集英社
-
2021.06.03
コロナ禍を、健康生活を見直す機会に
香川大学四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構 長谷川修一
-
2021.04.15
「未病先防」で目指す 日本一の漢方薬局
鷺岡漢方堂薬局 社長 鷺岡 志保さん
-
2021.04.01
美容業界の“異端児” 故郷で新たな夢を追う
アサクラインターナショナル 社長 朝倉 博美さん
-
2020.12.17
ブランド磨き お米の力を世界発信
アイム 社長 沼田 憲孝さん
-
2019.09.06
「大豆ファースト」プロジェクト始動
フジッコ
-
2019.05.16
創業70年。おいしいお茶を作り続けたい
柿茶本舗 代表取締役社長 井上 信忠さん
-
2019.04.04
「香川の希少糖」の可能性を広げ、世界に発信したい
レアスウィート 社長 山田 晃士さん
-
2018.06.21
高齢者の憩いと 健康・仲間づくりのスペース「紡」(つむぎ)
マルナカ
-
2015.04.02
笑顔のしわを刻みたい
エミーライフ 代表取締役 山本 美枝さん