前向きな気持ちと柔軟性が未来を拓く

新春スペシャル企画・学生座談会

Interview

2021.01.07

学ぶこと、働くこと、生きること…学生はどんなふうに考え、どう行動しているのか。香川の企業や行政に対して思うこと、コロナ禍で感じたことは―。県内の大学に通う5人の学生に話を聞いた。

香川の魅力は何?

香川大学医学部看護学科2年 小谷茂々笑(ももえ)さん 看護師、養護教諭、保健師、起業…進路は考え中。 「マイノリティ」に関心があり、看護学科では珍しいと思って金髪に。

香川大学医学部看護学科2年 小谷茂々笑(ももえ)さん
看護師、養護教諭、保健師、起業…進路は考え中。
「マイノリティ」に関心があり、看護学科では珍しいと思って金髪に。

【小谷】 親しみやすくて温かい県民性。災害が少なく、住みやすい気候。

【藤澤】 個人的には「うどん脳」が好き。自然豊かで「モンバス」もあるし、うどんもそうめんもおいしい。道路が整備されていて、自転車での移動が簡単です。

【亀井】 人との心の距離が近い。バス通学なのですが、運転士さんが毎朝「いってらっしゃい」、帰りは「今日は学校どうだった?」と言ってくれます。緑も海もきれいで、癒やされる場所が多いですね。

【保科】 親が転勤族のため、大阪、名古屋、長野で暮らしてきました。香川は「ちょうど良い田舎」だと感じています。岡山・兵庫が近く、都会にもすぐに行けます。

【岡部】 災害が少ないところ。子どもの頃は水不足の印象が強かったけれど、それも香川用水で解消されました。小さな県なので、行き来しやすいですね。

うどん脳…香川のご当地キャラクター
モンバス…中四国最大級の野外ロックフェス「モンスターバッシュ」
居場所…高齢者が介護予防やボランティア、世代間交流などを行う地域活動の場

では課題とその解決方法は?

香川大学教育学部1年 藤澤暉(ひかる)さん 学祭運営サークルと起業部に所属。 大学の食堂に「ウーバーイーツ」のような 配達システムを導入するべく奔走中。

香川大学教育学部1年 藤澤暉(ひかる)さん
学祭運営サークルと起業部に所属。
大学の食堂に「ウーバーイーツ」のような
配達システムを導入するべく奔走中。

【小谷】 シニア世代の方々の生活の充実があってこそ、持続可能な社会が成立するのかなと思う。私たちもいずれ年を取ります。年を取っても利用しやすい施設は何かを考えていかなければ。高松市が力を入れている高齢者の「居場所づくり」は、とても素晴らしい取り組みだと思うので、私もPRしていきたい。シニア世代の方と接すると「年を取るとはこういうことか。いいな」と思えるので、大好きです。

【藤澤】 いろんな体験をする機会が少ない。行きたいと思うワークショップはだいたい大阪や名古屋、東京で開催される。香川にいても新しい刺激を感じたり、親や先生以外の大人と関わったりする機会がほしい。大学1・2年生が参加できる県内企業のインターンシップも少ないです。企業には10代の時間をもっと大切に考えてほしいと思います。ですが、香川は課題が多い分、可能性も多いと思います。例えば、空き家がたくさんあるのは改築するチャンス。人口が少ないということは、人を呼び込む余地があるのでは。

【亀井】 交通機関の便数がもっと多ければいいなと思います。通学時間だけでも便数を増やすなどしてもらえたらうれしい。

【保科】 車があればどこにでも行けるけれど、反対に車がないと不便。道路がすごく整備されているからこそ、スピードが出やすく、事故も多いと思う。あとは、「モンバス」のような地域に根付いたイベントがほかにもあったら。

【岡部】 香川漆器や香川大学発の希少糖など素晴らしい素材があるので、もっとPRしたらいいのにと思っています。例えば桜並木やお花畑など50年後、100年後を見据えた観光名所づくりは行政にしかできないこと。県外の友達をどこに連れていったらいいんだろうといつも悩んでしまうので、自信を持って案内できる場所があったら。

コロナ禍で何を感じた?

四国学院大学文学部人文学科3年 亀井優和(ゆうか)さん 新入生のオリエンテーションを実施する委員会と 学祭実行委員会に所属。高松空港で働くことが目標。

四国学院大学文学部人文学科3年 亀井優和(ゆうか)さん
新入生のオリエンテーションを実施する委員会と
学祭実行委員会に所属。高松空港で働くことが目標。

【小谷】 オンライン授業で、与えられた課題をひたすらこなして…を経験したことで、受動的でいるのを止めたいと思いました。人のやり方を批判するのではなく、自分だったらどうできるかという視点を持てるようになりましたね。

【藤澤】 香川にいたら会えないような人とも、オンラインでつながれた。コロナ禍だからこそできたことが多いと思います。

【亀井】 できなくなったことがあって悔しいけれど、成長したとも思います。学祭が過去のやり方では開催できなくなり、新しい方法を考えたことで視野が広がりました。

【保科】 自分のやり方を見直したり、常識を疑ったりする良い機会になりました。

【岡部】 祖父母の家に気軽に行けないなど会いたい人に会えなくなったことで、落ち込むこともあったけれど、人とのつながりって大切なんだと分かりました。

卒業後の進路はどう考える?

四国学院大学社会学部社会学専攻3年 保科太志さん 子どものころからパソコンが身近で、 ITに関する仕事に就きたい。DXに興味あり。 みんなが就活をどう考えているかが気になる。

四国学院大学社会学部社会学専攻3年 保科太志さん
子どものころからパソコンが身近で、
ITに関する仕事に就きたい。DXに興味あり。
みんなが就活をどう考えているかが気になる。

【小谷】 香川で高齢者の「居場所」と在宅介護を受けている高齢者の方をつなげるような事業がしてみたい。地元の役に立っていないのに、県外に出る意味があるのだろうか…と考えて。地元貢献に対する使命感のようなものを感じています。働く意義は「人間づくり」にあると思います。私は誰にとっても味方でありたい。「ああいう人になりたい」でもいいし「ああなりたくない」と思ってくれてもいい。何かを考えるきっかけになる存在でいられたら。

【藤澤】 自分の興味・関心で稼げる人材を香川で育成したい。幸せの定義の一つが、自分の好きな仕事でお金を稼ぐことだと思います。僕は教育関係の仕事がしたいのと、香川が首都になったら日本はもっと良くなるのではと思うくらい香川が好きです。なので、香川県で人材を育成することが使命だと考えています。

【亀井】 コロナで倍率は高いけれど、航空関係の仕事に就きたいです。小学生のころ家族で飛行機に乗った時、高松空港のグランドスタッフの方が笑顔で対応してくださったのがうれしくて。「私が将来働くのはここだ」と思いました。大変なことがあっても、達成感・やりがいを感じられる仕事がしたい。

【保科】 企業のデジタル化を推進するデジタルコンサルティングのような仕事がしたい。親が転勤族なので、自分にとっての地元は「日本」。日本の景気が良くなることに貢献できたらうれしい。若いうちに大阪や東京などで経験を積みたいとも思っています。そこから香川に戻ってくるのかどうか、考えたい。

【岡部】 公務員志望です。福利厚生がしっかりしていて、結婚しても働き続けられると思うからですね。香川も好きだし、ずっと住んでいたいので。カナダでホームステイした時、ホストファザーに「働くために生きているんじゃなくて、生きるために働くんだよ」と言われたことが印象的でした。働くことをないがしろにするのではなくて、楽しみがあって「これをしたいから働こう」とか、そういう生き方がいいなと思います。

2021年に挑戦したいことは?

高松大学経営学部経営学科3年 岡部真由さん カナダでのホームステイを経験。 新型コロナが終息したら、また海外留学したい。 公務員志望。

高松大学経営学部経営学科3年 岡部真由さん
カナダでのホームステイを経験。
新型コロナが終息したら、また海外留学したい。
公務員志望。

【小谷】 特集誌(自作の「居場所」PR冊子)を、いろんなところを訪ねて届けたい。それと勉強も頑張って、香川大学の看護学科で唯一無二の存在になりたい!

【藤澤】 「やってる感」をなくしたい。今はただ「やっていること」に浸っているだけ。学食への配達サービス導入や、女木島への移住促進プロジェクトを実現させて、結果を出す!

【亀井】 コロナが終息したら日本のいろんなところに行ってみたい。香川県との違いを感じて、自分の世界を広げたい。

【保科】 中小企業診断士の資格を取得したい。実践して初めて分かることが多いと思うので、「机上の空論」にならないよう行動的でいたい。

【岡部】 残りの大学生活を楽しみたい。できれば、もう一度短期留学。あとは、富士登山のリベンジ!

若者って希望だ

5人の学生は「コロナ禍」をとても前向きに捉えていた。未知の出来事への対応に必要なのは、経験でも技術でもなく前向きな気持ちと柔軟性なのだと、彼らは教えてくれた。香川は田舎で人口が少ないから、自分はもう年だから…と諦めていることはないか。前例にとらわれ過ぎてはいないか。香川が好きだという彼らの気持ちと期待を裏切らないために、できることはたくさんある。
学生たちに香川の「いいところ」と「課題」を書き出してもらった。 災害が少なく、自然豊かで暮らしやすいところを魅力と感じているようだ。 交通マナーが悪い、交通機関が不便などが、課題としてあがった。

学生たちに香川の「いいところ」と「課題」を書き出してもらった。
災害が少なく、自然豊かで暮らしやすいところを魅力と感じているようだ。
交通マナーが悪い、交通機関が不便などが、課題としてあがった。

聞き手・構成/鎌田佳子 撮影/石川恭子

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