地域の専門家として企業を支えたい

ストライク 高松営業所長 吉本和巨さん

Interview

2020.02.20

「ストライク」は全国有数の実績を誇るM&A仲介専門の企業。高松営業所長を務める吉本さんが現在の道に進む転機となったのは、就職した銀行で事業再生の専門部署に異動したことだった。

業務は、業績が悪化している企業を支援して収益改善を目指すというもの。担当する企業は、資金繰りが厳しい、離職が相次ぐ……など、さまざまな問題を抱えていた。訪問すると「融資を回収にきた」と身構えられた。そこで何度も訪ねて話を聞き、改善策を考え時間をかけて説明した。「大変でしたが、やっていくうちに『この仕事、嫌いじゃないな』と思ったんです」

ある会社を担当したとき、銀行には言いづらい決算の状況を正直に打ち明けてくれた人がいた。支援を断ってもおかしくないケースだったが、勇気を出して話をしてくれる人がいるなら再生できると確信。改善策を銀行の上司に一つずつ説明し、自分だけで解決できない問題は専門家を探して意見を聞いた。今では順調に業績を伸ばしているという。

「1人の従業員が3人家族だとしたら、従業員100人の会社が倒産すれば300人、取引先を入れたらもっと多くの人が不幸になる。少しでも可能性があるなら再生してほしい」。自身が小学生の時、父の事業がうまくいかず大変だった経験がある。「今考えると、自分のような家族を増やしたくなかったのかもしれません」

変わる姿をみると嬉しい

ストライク上場時

ストライク上場時

仕事を続ける中で、銀行という立場を離れて事業再生に取り組みたいと、2009年に独立した。当時、地元には事業再生の専門家が少なく企業は高い報酬を払って東京や大阪から専門家を招くことが多かった。地域に専門家がいればその負担を少しでも減らせるのでは、という思いもあった。

真剣に向き合うからこそ、経営者とぶつかることもある。「小さくても一つの成功があると、もう少し頑張ろうかと意欲が出てくる。関わった人たちが少しずつ変わっていく姿を見るのは嬉しいですね」

独立して数年後、縁あってストライクの社長から四国エリアの責任者を任され、これまでの企業再生の仕事に加え、M&Aにも携わることになった。M&Aは企業を発展させるために合併や買収などを進める。最近は、「後継者不在」でM&Aに踏み切る案件が半数以上を占める。

大切にしているのは人の思い。「長年培ってきた会社を手放すのだから、そこには思いがある。単純に高く売れたらいいという話ではなく、背景をしっかり聞いて、お互いにとっていい相手を見つけないといけない」

ずっとキャッチャー

グラウンド整備用のトンボを寄贈

グラウンド整備用のトンボを寄贈

小学校から大学まで野球部で、ずっとキャッチャーだった。「裏方に徹してチームを支える、物事を冷静に見て状況の変化に一喜一憂しないという部分は、事業再生やM&Aの仕事にも通じるものがあります」

野球を通じて知り合った仲間たちと、「野球王国かがわ復活Project」を立ち上げた。メンバーは仕事のかたわら、子どもたちを集めて夏は野球大会、冬は野球イベントを開催している。「一生の友達もできたし、人脈も広がった。野球で地元に恩返しできれば」

人手不足、経営者の高齢化などさまざまな課題がある今、事業再生はますます難しい時代になると考えている。しかし、「銀行での異動もストライクに出合ったのも『お前はこの仕事をしなさい』と誰かに言われているような気がしています。厳しい状況にいる経営者やその家族が、私が関わることで少しでもよくなるように。大切な会社を託したいと思える存在でありたいですね」

石川恭子

吉本 和巨さん | よしもと かずお

略歴
1969年 坂出市生まれ
1988年 坂出高校 卒業
1992年 四国学院大学文学部社会学科 卒業
     香川銀行入行
2003年 経営改善・事業再生の専門部署に異動
2009年 経営改善・事業再生の専門家として独立
     株式会社ウイニングパートナーズ設立
2010年 中小企業基盤整備機構四国本部で
     事業承継コーディネーターとして活動(~16年)
2012年 株式会社ストライク高松営業所長

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