“あとちょっと”を叶え、微笑(ほほえみ)を届ける

シコク 社長 古瀬 圭一朗さん

Interview

2020.02.20

「『使うこと』を考え、疑問があれば立ち止まる」

「『使うこと』を考え、疑問があれば立ち止まる」

「次の一歩」のために

高齢者の転倒を防ぐ手すりや車いす用スロープなど、介護・福祉関連用具を製造販売する株式会社シコク。古瀬圭一朗さん(46)のモットーは、利用者の“あとちょっと”を叶えることだ。「こんなことができれば生活の幅がもっと広がる。これがあればあそこへ行ける……『それが無いために何かをあきらめる』というのを少しでもなくしたいと思っています」

シコクは1975年に古瀬さんの父が創業した。住宅の階段やトイレの手すりなど、建築用金物メーカーとしてスタートを切ったが、「“バリアフリー”という言葉が叫ばれるようになった2000年頃から、徐々に福祉関連用具にシフトしていきました」

卸業者から受注し、OEMで汎用品をつくっていたが、「業者が望むものと、私たちがつくりたいものが合致しない。提案しても形にならず、世に出せなかったものも多い。じゃあ、自分たちでつくろうと」。13年に自社ブランド「微笑(ほほえみ)」を立ち上げ、同業者やバイヤーが集まる展示会などでコツコツPR。今では取引先は全国100社以上に広がり、「少しずつ浸透してきた」と古瀬さんは手ごたえを口にする。

「微笑」シリーズには、“あとちょっと”を叶える様々なアイデアが詰まっている。

ベッドやソファから立ち上がる際に使う手すり。一般的な高さは膝上程度だが、「U-ケア」は最高100cm、腰の辺りまで高さを変えられる。「座った姿勢を維持することや、立つのをサポートするだけが手すりの役目ではありません。大切なのは“立った後”。高くすることで、目線を高い位置で安定させられ、次の一歩が出やすくなります」。低い手すりだと体を十分にあずけられず、立ち上がった後に転倒するケースも多いという。

段差を解消するスロープは長方形が一般的。だが、「真っすぐ正面から入っていける家ばかりではありませんから」。左右どちらにでもカーブを描ける「LスロープFK」は30°・60°・90°の3パターン、設置場所に合わせて角度を調整できる。「車いすに合わせて出入口の向きを変えるなど、住宅を改修するのも大変です。必要なときに必要なものを、住宅の状況に応じて提供していく。介護される人の不便さや、介護する人の負担を少しでも減らすために、“あとちょっと”の隙間を埋めていければと思っています」

考え抜いて活路

設置場所に合わせて角度を変えられる「Lスロープ」

設置場所に合わせて角度を変えられる「Lスロープ」

「学生時代はハチャメチャな夢を追いかけていました」。将来は家業を継ぐつもりだったものの、語学も好きで、アメリカの大学に進学した。卒業後は「髪を真っ赤に染め、ひげは伸ばし放題で、1年くらいアメリカを放浪していた。カジノの華やかさに憧れ、本気でディーラーかエンターテイナーになりたいと思っていました」と苦笑しながら振り返る。

5年のアメリカ暮らしののち帰国。3年間の商社勤務を経て1999年、26歳でシコクに入った。「元々ものづくりには興味があった。でも、技術は一切学んでいないので、図面を引くのも一苦労でした」

創業者の父は厳しかった。「いつも怒られてばかり。ほめられることはなかったですね」。父の口癖は“考えろ”。「これをこうやれ」という明確な指示はない。考えに考え抜いて自分なりに答えを出し、活路を見出してきた。

2016年に社長に就任。定期的に開催される展示会では、毎回新しい商品の出展を社員に求める。「『これが売れているから』と、ブームに便乗したような商品は出さない。今までにない提案ができないのなら出展を辞退する」と話し、こう加える。「自分たちで考え、新しいものを生み出すのがメーカーの姿。他社の真似をする会社にはしたくありません」

自社ブランドをつくり、「微笑」と名付けるのは父の夢だった。「使う人、つくる人、売る人……商品に関わる全ての人をにこやかにしたい。父の思いと一緒に、このブランドをしっかり受け継いでいきます」

「新しいものがある」会社へ

本社工場の製造ライン

本社工場の製造ライン

思い描く新商品がある。「スロープの概念を変えたいと思っています」。車いす用のスロープと言えば、玄関先など家の周りで使う場合がほとんど。だが、「いろんな場所に行ける“道”のようなものができないかと構想を練っています」

待ったなしで進む高齢化。「やりがいも大きいが、責任も大きい」と口元を引き締める。社員たちに繰り返すのは「使うことを想定する」こと。「仕事というのは早さや正確さを求めてしまうもの。でも大切なのは、つくることではなく、『使ってもらう』こと。疑問が生じたら勇気を持って立ち止まり、改良する。つくり手の一方通行では絶対にダメです」

介護する手は足りなくなり、介護の度合いや形も際限なく広がっていくだろう、と将来を見つめる。汎用性のある商品を大量生産すれば、儲けは出るかもしれない。だが、古瀬さんはこう断言する。「少数意見にも耳を傾け、例えそれがニッチな商品でも、私たちにできることを突き詰めていく。『シコクに行けば、何か新しいものがある』と言われる会社にしていきたいですね」
手すりの位置を高くした「U-ケア」に体をあずける古瀬さん  =さぬき市津田町のシコク本社展示ルーム

手すりの位置を高くした「U-ケア」に体をあずける古瀬さん

=さぬき市津田町のシコク本社展示ルーム

篠原 正樹

古瀬 圭一朗|ふるせ けいいちろう

略歴
1973年 さぬき市生まれ
1992年 高松北高校 卒業
1996年 カリフォルニア州立大学ヘイワード校
   (現イーストベイ校)経済学部 卒業
商社勤務を経て
1999年 株式会社シコク 入社
2016年 代表取締役社長

株式会社シコク

住所
香川県さぬき市津田町鶴羽1118-15
代表電話番号
0879-42-1111
社員数
80人
事業内容
金属・樹脂・木材による手すり及び介護・福祉関連機器、
防災関連機器の製造販売、建築用金物製造販売 他
支店・工場
東京支店、中部営業所、九州支店、沖縄出張所
地図
URL
https://www.sk-shikoku.co.jp/
確認日
2020.02.17

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