勉強の価値

著:森 博嗣/幻冬舎

column

2021.01.07

新型コロナの終息も全く見通せないまま、2021年の正月を迎えました。外へ出掛けるのもままならず、家の中で過ごすしかない毎日ですが、家呑みばかりしないでこんな時は大人こそが勉強に取り組むチャンスではないでしょうか。もっとも著者が言うように勉強というものは、楽しいはずがないのが正直なところです。勉強の価値はどこにあるのか、それは人に勝つためや、社会的な成功者になるためではもちろんなく、著者は個人個人がそれぞれに楽しみを見つけることから始めるべきだと言います。そしてその理由を本書で開陳していきます。

大人になってからの勉強は教えてもらうものではありません。それは極めて個人的なものです。研究も勉強も最初が最も大変で、しかし初めて向き合うものはなぜか楽しく、著者は絶対に最初はたった一人でそれも秘密裡に行うのが良いと言います。

「ウィルス騒動で全国の小中学校が休校になったとき、中国では端末による在宅授業が行われたそうだ。日本は酷く遅れているなと僕は思った。なんという体たらくだろうか。教育とは何か、ということが、感動や友情や仲良しというキーワードで曇ってしまい、本質を見失ったのだろうか。学ぶ目的、勉強というものの本質は何か、と今一度考えてもらいたい」と、著者は今の教育に一言いうのも忘れません。子どもが好きだ、一緒に感動したい、という人ばかりが先生になっているとも言います。

著者は工学博士で作家でもあり「すべてはFになる」などでご存知の方も多いと思います。本当のところエッセイではなく腰を据えて小説を書いて欲しいのですが。

山下 郁夫

宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

坂出市出身。約40年書籍の販売に携わってきた、
宮脇書店グループの中で誰よりも本を知るカリスマ店長が
珠玉の一冊をご紹介します。
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宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

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