
その年、私は成人式を終え16日に下宿先である徳島に帰っていました。翌朝、ゴーっという地響きで目が覚め、鉄塔がカラカラと音をたてました。小刻みな揺れの直後に大きな揺れを感じました。夜が明け、テレビで神戸の様子を見た時には、信じられない光景が映し出されていました。
当時は防災や災害に関わることなど全くない学生で、揺れの前に聞こえてきた地響きのこと以外、あまり覚えていません。「災害」や「防災」という言葉は自分からかけ離れた存在でした。災害に備えなければいけないのは分かっていても、自分が被害に遭ったり身近で災害が発生しない限り「自分には関係ない」生活をしていました。
自身のことを振り返ると、備えの第一歩は“考える”ことではないかと思います。それもできるだけ具体的に。
例えば災害が発生したとき、いま自宅にある食料だけで何日おなかを満たすことができるのか、その食材を煮炊きする道具はあるのか。子育て中のご家庭なら、小さな子どもの手を引いた上で食料・飲料・着替え・衛生材…を持って避難することができるのか。その道は、いつも通っているきれいに舗装された道路ではなく、ベビーカーを押して通ることが困難な道になっているとしたら?
そもそも、大きな揺れの後、自分は無事でいられますか?家具が倒れて身動きが取れなくなっていたり、ガラスや陶器の食器が散乱して避難行動の妨げになる可能性はありませんか?
「自宅は大丈夫だろう」「自分は助かるだろう」と思っている人も多いですし、それ以前に「自分が被害に遭うイメージを持つ」ことが難しいと思います。けれど、家族やご近所の人と、お互いが考える危険について話し合うことから始めてください。近くの防災士に「誰にでも起こること」と「そのための備え」について相談してみてください。
高橋 真里 | たかはし まり
- 1975年 さぬき市生まれ
1993年 津田高校 卒業
1997年 徳島文理大学音楽学部 卒業
2004年 台風16号高潮水害 高松水害ボランティアセンター運営
2006年 防災士養成講座受講
2011年 東日本大震災支援の日本赤十字社本社ボランティアセンター運営に関わる
2016年 香川大学学生を引率し、熊本地震ボランティア活動に参加
2017年 香川県多度津町水害 災害ボランティアセンター運営支援
2018年 西予市災害救援ボランティアセンター運営支援
西予市・宇和島市支援活動
2019年 台風19号被災地支援(長野県長野市)
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